1月下旬の東日本や北日本の記録的な大雪は、人為的な地球温暖化の影響によるものだった可能性がある――。そんな分析結果の速報を「極端気象アトリビューションセンター(WAC)」が発表した。全国的に強い寒気に覆われていた時期に、温暖化の影響で日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)に沿った広範な地域の降水量が増えたという。

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    救援活動をする自衛隊の関係車両(1月21日、防衛省提供、首相官邸ホームページから)

WACは渡部雅浩・東京大学大気海洋研究所教授ら異常気象の専門家が昨年5月に設立した。「イベント・アトリビューション」という分析手法を駆使し、各種の異常気象に温暖化がどのくらい影響しているのかを調べて発信している。

WACに参加する佐藤友徳・北海道大学大学院地球環境科学研究院教授らの研究グループは今回、1月21~23日の間に東北から北陸の日本海側の各地で記録した降雪量100センチを超える大雪と温暖化の関係を探った。

気象庁は1月21日、石川県で今季初の「顕著な大雪に関する気象情報」を発表し、その後も滋賀県や福井県で相次いで同情報を発表して短時間の記録的な降雪に警戒を呼びかけていた。WACによると、この時期は西高東低の典型的な冬型の気圧配置の下、大陸からの強い寒気が日本海で温められながら水蒸気を蓄えることで筋状の雲が発生。加えて、JPCZに沿って雪雲が発達したという。

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    1月22日の気象衛星「ひまわり」の画像。日本海を筋状の雲が覆い、日本海西部には風の収束により発達した雲が確認できる(WAC/気象庁提供)

佐藤教授らは、気候モデルシミュレーションのデータベースの中から、1月21~23日の日本周辺の気圧配置とよく似た事例のうち「人為的な温暖化影響を考慮した事例」と「自然変動だけを考慮した事例」をそれぞれ200ずつ抽出し、降水量の変化を比較・分析した。

研究グループが1月27日にWACのホームページで発表した分析結果によると、JPCZに沿った領域や北日本や東日本の日本海側で、温暖化によって降水が増強されて記録的な降雪量に影響した可能性が示されたという。新潟県の上越市川谷や十日市十日町では72時間の降水量が150ミリを超えた。これほどの降水量の発生確率は、温暖化要因を除いた場合は1.6%だが、温暖化要因があると4.8%となって3倍になるとの分析結果が出た。また、東日本の日本海側では、極端な降水量が温暖化により約9.5%増えていたことも分かった。

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    2026年1月21~23日と類似した事例の72時間降水量の分布。(a)温暖化を考慮したシミュレーション(b)自然変動のみを考慮したシミュレーション(c)温暖による降水量の変化 (WAC提供)

気象庁の検討会は昨年3月、昨冬の大雪について「偏西風が日本付近で南に蛇行して寒気を伴った大規模な低気圧が分裂、南下。温暖化による気温や海面水温の上昇により大気中の水蒸気量が増えて降雪量の増加につながった」との見解を発表している。

北海道大学の研究グループは「温暖化による気温上昇や海水温の長期的な上昇は、降水量に占める雪の割合を低下させる傾向があるものの、今回の分析の対象期間(1月下旬)は全国的に強い寒気に覆われていたため、雪の割合が低下しにくかったことも雪の影響が大きくなった要因の1つ」と説明している。

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    除雪・排雪活動をする国土交通省の関係車両(1月26日、国土交通省提供、首相官邸ホームページから)

イベント・アトリビューションは、人間活動が異常気象に与える影響を定量化する分析手法だ。従来の手法はスーパーコンピューターで大量のシミュレーションを繰り返すため1~2カ月かかっていたが、WACが採用している手法は、蓄積された過去のシミュレーションや観測のビッグデータをもとに分析するため、数日程度でより確度の高い結果を得られる。今回の北海道大の分析も、大雪の発生から1週間たたないうちに速報できた。

この手法は、複雑な統計関係式によって日本の気象・気候の特徴を加味して分析することができることから、イベント・アトリビューションの「日本版」ともいえる。渡部教授らは昨年8月、「7月下旬の全国的な記録的猛暑は人為的な温暖化影響がなければ起こり得ないレベルだった」と速報している。

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    極端気象アトリビューションセンター(WAC)の設立メンバーの1人である渡部雅浩・東京大学大気海洋研究所教授

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