小誌でもお伝えした通り、パナソニック コネクトは2月19日、図面・設計仕様の照合業務に、独自開発のAIエージェントを導入し、作業時間を最大97%削減するなどの成果を発表した。

同社はSnowflakeのデータクラウドプラットフォーム上でAI機能「Cortex AI」を活用して、業務AIの「Manufacturing AIエージェント」を開発した。

説明会の冒頭で、Snowflake 製造営業本部 営業本部長 武市憲司氏は、製造業におけるデータ基盤の必要性を訴えた。

「製造業はさまざまなデータソースを持っているが、構造化データと非構造化データがバラバラになっている。また、IT・OTの分断、SoR・SoI・SoE間の分断が起きており、一気通貫のデータ活用ができていない。これらの壁を越えてデータを使えるようにする必要があり、この課題を解決するのがSnowflake。Snowflakeはデータを記録から価値を生む資産に変えられる」(武市氏)

  • Snowflake 製造営業本部 営業本部長 武市憲司氏

    Snowflake 製造営業本部 営業本部長 武市憲司氏

AI活用はカルチャー&マインド改革の一環

続いて、パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 データアーキテクトマネージャー 渡邉勇太氏が、AIエージェントの導入・活用について説明を行った。

  • パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 データアーキテクトマネージャー 渡邉勇太氏

    パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 データアーキテクトマネージャー 渡邉勇太氏

渡邉氏は、同社におけるAIやデータ活用がカルチャー&マインド改革の一環であるとして、その概要を説明した。2017年4月に就任した樋口泰行社長の下、1層「カルチャー&マインド改革、組織と個人のパフォーマンス最大化」、2層「ビジネス変革、専鋭化・オペレーション改革」、3層「事業立地改革、選択と集中の実践」という3階層のトランスフォーメーションが推進されてきた。

カルチャー&マインド改革では、縦割りで重たいカルチャーから、フラットで俊敏なカルチャーへシフトし、全員がワクワク仕事をし、個人も成長できる会社を目指すという。同氏は、「会社として1層であるカルチャー&マインド改革を大事にしている。これができていないと、2層、3層がうまくいかない」と述べた。

データ活用のビジョンと戦略

次に、渡邉氏はデータ活用のビジョンと戦略について説明した。同社は、AIとデータの活用で仕事を最適化し事業の競争力を強化することを目指している。具体的には、AIとデータを活用して業務を最適化し、事業競争力を強化するためのIT戦略の柱の一つとしてAI/Data基盤(コネクトコーパス)の構築を進めている。コネクトコーパスとは、社内のあらゆるデータを一元的に集約・活用するためのAI/Data基盤を指し、構造化データに加え、AIによる活用が困難な非構造化データも対象としている。

データ活用のビジョンとしては、「さまざまな分析軸で、必要とされる指標(事業活動データ)を分析可能にし、AIを利用可能にすることで、企業経営に貢献する」を掲げている。

このビジョンでは、データをキューブで捉えており、各事業部でバリューチェーンを持っている。2021年からキューブのデータを順番に集めており、それらを収める箱がSnowflakeとなる。顧客データの収集を最初に開始、その後、MA、経理、SFA、ERPと対象を広げている。

そして、データ戦略としては、「分散されたデータを統合し企業視点で可視化、活用できるようにする」「集約・可視化・活用はできる業務領域から並行して実施する」ことを進めている。データ戦略の進捗として、連携システムが46、テーブル数が4574、BIユーザー数が1414であることが紹介された。

データ戦略を支えるアーキテクチャのコアにSnowflakeが据えられており、BIツールはTableau CloudやPower BIが使われている。

  • パナソニック コネクトのデータ戦略を支えるアーキテクチャ

    パナソニック コネクトのデータ戦略を支えるアーキテクチャ

業務用AIエージェントの2つの活用例

同社は、自社向けAIアシスタントサービス「ConnectAI」について、社員も組織も業務に最適化されたAIエージェントを活用できる基盤として整備することを計画している。

全社員に対し、個々の業務に特化したAIエージェントと特定の業務プロセスに特化したAIエージェントを提供。加えて、課・部レベルで、Snowflakeのデータを活用したカスタマー分析エージェント、Manufacturing AIエージェントを提供する。

  • パナソニック コネクトのAIエージェント・プラットフォーム計画

    パナソニック コネクトのAIエージェント・プラットフォーム計画

顧客様満足度調査の分析にかかる時間を90%削減

同社には、顧客様満足度調査において自由記述が非常に重要ながら、分析が非常に困難という課題があった。データの分析に約200時間かかっていたという。そこで、Cortex AIとStreamlitを活用することで、以前は手作業でやっていたテキストデータ(非構造化データ)の分析も自動化、客観的に行うことが実現した。

渡邉氏によると、作業時間が200時間から20時間に減り、客観的に分析が行われるのでレビューの回数も減ったそうだ。

  • 顧客様満足度調査の分析にかかる時間を90%削減

    顧客様満足度調査の分析にかかる時間を90%削減

図面/設計仕様の照合にかかる時間を最大97%削減

製品図面、部品図面、技術仕様書など、複数のドキュメントに記載された仕様が一致しているかを確認する照合に工数がかかっているのも同社の課題だった。照合業務は担当者による手作業と目視確認に依存しており、膨大な工数がかかるだけでなく、確認漏れといった人為的ミスが発生するリスクも抱えていた。

この課題の解決においては壁があった。照合対象の図面がPDF形式でしか保存されていなかったのだ。PDF形式はAIによる自動化には適していない非構造化データであり、そのため、既存のソリューションでは課題を解決できない状況だった。

そこで、同社はSnowflakeのデータクラウドプラットフォーム上で、照合業務を支援する「Manufacturing AIエージェント」を開発した。同AIエージェントは、SnowflakeのAI機能「Cortex AI」を活用し、複数のPDF図面からテキスト情報を自動で抽出することで、AIが製品図面と部品図面、あるいは技術仕様書との間で材質や仕上げなどの項目を自動で照合し、結果を一覧で表示する。

具体的には、Streamlitにファイルをドラッグ&ドロップすると、Cortex AIが半構造化データの照合を行ってレポートが自動で生成され、人はそれをチェックするのみでよい。そのため、担当者は複数のドキュメントを見比べる必要がなくなる。

AIエージェントを導入したことで、目視確認で50分~340分かかっていた照合業務が10分に短縮された(80%~97%削減)。

  • 図面/設計仕様の照合にかかる時間を10分に削減

    図面/設計仕様の照合にかかる時間を10分に削減

AI活用の成果を持続させる4つのカギ

こうしたAI活用を成功させ、成果を持続させるカギとして、渡邉氏はデータドリブンな文化の醸成と人材育成を挙げ、そのポイントを4つ紹介した。

1つ目は、魚を与えることから、魚の釣り方を教えることにシフトすること。これは、「ダッシュボードを作ってあげる」から「自走できるように伴走すること」、つまり能動的な状態にシフトさせることを意味する。

これにより、ユーザーは、データや結果をもらう受動的な状態から、自らデータを集めて分析を行い、意思決定をする能動的な状態に変わる。

2つ目は、IT組織の役割を御用聞きから、共通のゴールを持つパートナーに変えること。

3つ目は「社内コミュニティの活性化」だ。対面の機会を重視しているという。

4つ目は「外に出ること」だ。Snowflake 製造&自動車ユーザー会を発足し、参加したそうだ。ユーザー会に参加すると、他の企業と情報を交換し、悩みを共有することができる。

渡邉氏は「現場にどっぷり入って、AI活用を進めている。とにかく、現場に入り込むことが大事、そこで人材育成も行う。現場の業務も実務レベルで変わり始めている」と語っていた。