ソフトウェアエンジニアのVincent Driessen氏は2月18日(現地時間)、「15+ years later, Microsoft morged my diagram ≫ nvie.com」において、自身が2010年に発表したGitブランチモデルの図が、Microsoftの公式学習サイト「Microsoft Learn」にAI生成の改変版として無断利用されたことを明らかにした。

同氏はSNS上の利用者からの指摘を受けて状況を把握。図は出典を明示しない形で掲載され、さらに品質が「粗悪品」と呼べる程度にまで低下していたという。

  • 15+ years later、Microsoft morged my diagram ≫ nvie.com

    15+ years later, Microsoft morged my diagram ≫ nvie.com

AIがライセンスを無視して著作物を盗用

Driessen氏は2010年に「A successful Git branching model」と題する記事を公開し、ソフトウェア開発に有用なGitブランチ戦略とリリース管理を発表した。この記事は主にGitブランチモデルの構造と扱い方を解説したもので、同氏の仕事およびプライベートのプロジェクトに導入された実績が示されている。

記事ではGitブランチモデルの理解を容易にするために、全体像と分岐の流れを視覚的に示す図を掲載。Apple Keynoteを使用してデザインしたもので、色/曲線/レイアウトにこだわり、理解しやすい表現を目指したとされる。

この図は書籍、講演資料、ブログ記事、チームのWiki、YouTubeなどで広く引用されている。同氏は「知識を共有し、インターネットで広げることこそが、まさにプロジェクトの目的だった」と述べ、この流れに歓迎の意を示している。

今回、Microsoftの公式学習サイトにこの図の改変版が掲載されたわけだが、その行為自体は目的に一致しており問題として指摘されていない。問題は「Creative Commons BY-SA 4.0」ライセンスとして公開したにもかかわらず、その帰属が示されなかったこと、そして誤った改変がなされていたことにある。

Creative Commons BY-SA 4.0は条件付きで自由な再配布を認めるライセンス。適切なクレジットの表示、ライセンスへのリンク、変更の有無の明記、変更した場合はライセンスを維持するといった条件を満たせば再配布が認められる。

ところが、Microsoftは帰属を示さずに図を転載した。必要な矢印は欠落し、説明の一部は明らかに誤りとわかる「continvoucly morged」というテキストに差し替えられていた(原文は「continuously merged」)。転載された図を確認したDriessen氏は、AIで生成した図だとすぐに分かったと述べている。

明らかな誤りですらチェックしない企業風土に問題か

Driessen氏は、「誰かが丁寧に制作した作品を機械を通して指紋を消し、自社製品として出荷する。何かからインスピレーションを得て発展させたケースではなく、むしろその逆だ」と指摘し、Microsoftの欠如したプロセスと配慮のなさに失望を伝えている。

今回のケースは原作が広く知られていたために模倣がすぐに判明した。しかしながら、今後は認知度の低い改変された素材が増え、出典が曖昧なまま流通する可能性があると同氏は懸念を示している。

Microsoftに対しては、最低限の出典明記と、制作過程の説明を求めている。学習サイトという性質上、資料の正確性や品質管理が重要であるにもかかわらず、誤った図を校正もせずに公開した経緯に疑問を呈した。

問題を把握したMicrosoftは本稿執筆時点までに学習サイトを修正した。現在は図の完全なコピーと作者および出典へのリンクを掲載している(参考:「Components of the GitHub flow - Training | Microsoft Learn」)。

このことはAIが無断で著作物を使用するリスクを浮き彫りにしている。AIが生成物の出典情報を明示しない場合、利用者はその存在を把握できず本件と同じ轍を踏む危険がある。これは企業にとってAI利用の教訓となり得る出来事であり、今後の利用姿勢に影響を与える可能性がある。