パナソニック くらしアプライアンス社(以下、パナソニック)は2月12日、福井大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学の藤枝重治教授との共同研究により、ナノイー(帯電微粒子水)技術が花粉による全般的症状(以下、花粉症)を有意に改善することを、ヒト臨床試験において初めて実証したことを明らかにした。

  • ナノイーがヒトの花粉症を有意に改善することを確認

    ナノイーがヒトの花粉症を有意に改善することが実証された(出所:パナソニック くらしアプライアンス社)

この発表に際し同社は記者説明会を実施。福井大の藤枝教授も登壇し、今回行われた検証の概要やその効果、そして今後の研究の展望について説明された。

“室内”でも花粉対策が重要、その理由は?

花粉症は、年々有病率が増加し今や日本人のうち約4割が苦しんでいるとされており、もはや社会問題ともいえるアレルギー性鼻炎だ。特にスギ花粉の飛散量はこれからの時期にピークを迎え、2026年の飛散量予測は例年並みかそれ以上との情報も。鼻水・鼻づまりやくしゃみだけでなく、目や肌のかゆみ、そしてそれらに起因する集中力の低下など、この春も多くの人に影響を与えると予想されており、その対策が急務となっている。

そうした中、パナソニックが着目したのは“室内”での花粉対策。花粉は屋外で飛散する一方で、換気による流入や衣服・洗濯物への付着によって室内へと侵入したのち、ソファーやカーテン、カーペットなどさまざまな布製品に付着してしまう。なんとそうした花粉は、花粉症シーズンを過ぎても一定期間残存するといい、春にピークを迎えるスギ花粉も、10月ごろになっても一定の割合で症状を引き起こしているという。また室内に残された花粉は、踏むことなどでより細かい「粉砕花粉」へと形を変え、生活中の動きによって簡単に舞い上がってしまうとのことで、自律神経のバランスが崩れやすい起床時に重い症状が引き起こされる“モーニングアタック”にもつながるなど、室内での花粉問題を抑制する必要性は非常に高いとする。

  • 花粉の室内への侵入経路

    花粉の室内への侵入経路(出所:パナソニック くらしアプライアンス社)

その方策として最も効果が高いと考えられるのは、花粉を室内に“侵入させない”こと。しかしそれを実行するには、換気や洗濯物の天日干しをせず、外出も極力減らす必要が生じ、日常生活に大きな不便が発生する。そこでパナソニックは、不便さを伴わない新たな対策手段として、同社が強みを持つナノイー技術の活用を検討しているという。

ナノイーが花粉症改善に与える影響を検証

ナノイーとは、有害物質を科学的に変性させることでその働きを抑制する「OHラジカル」を大量に含有するナノサイズの清潔イオンで、花粉が付着しやすい布製品の繊維の奥まで浸透できるサイズでありながら、水に含有されることで長い寿命を有するという特徴を持つ。またナノイー生成技術は、空気中から収集した水分を電極として放電するため、薬剤の供給やデバイスの交換などといった細かな運用負荷が不要である点も、長期的な社会普及における強みだ。

  • ナノイー技術の概要

    ナノイー技術の概要。有害物質を抑制するOHラジカルが花粉の抑制にも効果を発揮する(出所:パナソニック くらしアプライアンス社)

そんなナノイー技術については、これまでの研究で、国内主要17種の花粉に対するアレルゲン抑制効果が確認されており、2024年2月には、炎症性物質産生の抑制による細胞レベルでのアレルギー反応抑制効果も実証されていた。そして今回パナソニックは、ナノイーを照射した自然由来の花粉がヒトの症状に与える影響を調べ、花粉症の抑制効果について検討したとする。

  • ナノイー技術の花粉抑制効果に関する研究ステップ

    ナノイー技術の花粉抑制効果に関する研究ステップ。今回は花粉症の改善効果が検証された(出所:パナソニック くらしアプライアンス社)

福井大医学部の藤枝重治教授も参画した中で行われた実際の検証では、実使用に近い環境として、30分間の換気によって自然飛散の花粉を取り込んだ約75m2の大空間に対して、試験機によるナノイー散布を行った後、被験者を配置。プラセボ効果を排除した状態でナノイー技術の有無による症状の変化の評価が行われた。なお症状の変化については、臨床研究や医療分野で広く活用されている「VAS(Visual Analogue Scale)評価」によって検証したとのこと。その結果、プラセボ効果や評価者バイアスの影響を排除した条件下において、ナノイー技術搭載試験機を使用した環境では、花粉症の症状が有意に改善されることが実証されたとした。

  • 臨床試験の概要

    今回行われた臨床試験の概要(出所:パナソニック くらしアプライアンス社)

  • 臨床試験の結果

    臨床試験の結果。ヒトの花粉症を有意に抑制する効果が実証された(出所:パナソニック くらしアプライアンス社)

この結果を受け藤枝教授は、“国民病”とも呼ばれる花粉症に対して、一般的な住居のリビングよりも広い空間での効果が確認されたナノイー技術について、「ヒトに不便さを感じさせずに、花粉症を有意に改善することが実証された。この結果から、ナノイー技術が花粉症対策の新たな選択肢として期待できる技術だと考えている」とコメント。

なおパナソニックとしては、今回の成果が実使用空間での効果を直接的に保証するものではないとしているものの、ナノイーがもたらす効果の検証は新たな段階へと進んだとする。説明会に登壇したパナソニック くらしプロダクトイノベーション本部の九津見洋本部長は、「今回の成果により、これまで行ってきたナノイーの花粉に対する取り組みを大きく前進させることができた」とした上で、今後もさらなる検証を進めるといい、「ヒトが抑制されていない花粉を体内に取り込んでしまったとしても、ナノイーが免疫系に作用して良い影響を与えることで症状改善につながるなどの可能性も視野に入れ、検証を継続していく」としている。

今回の発表の概要(出所:YouTube「Channel Panasonic - Official」)