日本IBMは2月6日、製造業の生産性向上とサプライチェーンのレジリエンス強化を目指し、製造現場の作業計画の高度化を支援するAIソリューション「IBM Global Integrated View Manufacturing Orchestrator」と、自動搬送AIソリューション「Orchestrated Robotic Intelligence ON-demand(ORION)」を開発したと発表した。両ソリューションともに、同日から日本国内の製造業の顧客向けに提供を開始した。
ソリューション開発の背景
昨今、日本の製造業は、地政学リスク、サプライチェーンの分断、需要変動など、複合的な環境変化にさらされていることに加え、労働人口の減少による人手不足や、熟練者の知見やノウハウなどの技能伝承の難しさなどの課題に直面している。こうした中、安定したサプライチェーンを実現し、企業競争力を高めるために、供給を止めることなく計画に遵守した生産力の強化が求められていたという。
このような背景を受け、日本IBMはこれまでの製造業界への支援実績にもとづく知見やノウハウを集約し、製造現場の計画担当者、工場長、班長などの業務最適化を促進することで、製造業の生産性向上とサプライチェーンのレジリエンス強化を支援する2つのAIソリューションを開発した。
「IBM Global Integrated View Manufacturing Orchestrator」の概要
IBM Global Integrated View Manufacturing Orchestratorは、AIで製造現場の複雑なスケジューリングを最適化し、生産性向上に貢献するソリューション。
人手では部分最適にとどまりがちな作業計画を、AIを活用することで工程間の流れも考慮した全体最適の計画立案を可能としている。納期・生産効率・設備稼働率・段取り回数など多様な制約を考慮し、数万タスク規模のスケジューリングを自動化する。
また、自然言語の指示だけでパラメーターの自動調整、計画立案ができ、変更の影響を分析・要約して提示し、専門知識がなくても迅速な意思決定が可能。さらに、工程シミュレーションと組み合わせることで、スケジューラーだけでは見えにくいボトルネックや滞留を事前に評価し、より現実に近い計画立案を支援することができるという。
「Orchestrated Robotic Intelligence ON-demand」の概要
一方、ORIONはレクサー・リサーチ、たけびし、Cuebus、レッドハットが共創パートナーとして参画し、開発。IBM Global Integrated View Manufacturing Orchestratorを中核に構築したITとOT、AIを融合したワンストップの自動搬送ソリューション。
製造現場での計画立案、現場実行、自動搬送、実績フィードバックを一体のアーキテクチャでまとめ、現場に集中しがちな情報収集・判断・指示の負荷を軽減しつつ、計画から実行までを包括的に支援する。
現場での工程間の仕掛搬送、部材の供給搬送、完成品の搬出から倉庫入出庫などを対象に、AGV(Automated Guided Vehicle:無人配送者)への指示から実績回収や異常時の差し替えまでを一気通貫で自動化することで、生産プロセスにおけるサプライチェーンのレジリエンス強化を図る。
具体的には設備能力や段取り時間、制約条件、優先順位ルールなどを制約モデルとして明示的に取り込み、個別最適のみならず全体最適な作業計画を立案。
また、標準化データモデルやインタフェースで、ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)やMES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)、スケジューラーなどのITと、ロボットやAGV、倉庫、PLC(Programmable Logic Controller:プログラマブル論理コントローラ)といったOTを接続し、計画変更の現場反映と実績フィードバックによる最適化ループを実現するとのこと。
さらに、AIエージェントで設備故障、欠勤、部材遅延、特急オーダーなどを捉えて自動で再スケジューリングを行い、自然言語の指示で判断ロジックも取り込むことで、高頻度かつ高速な再計画を可能にする。自動化により、計画担当者、工場長、班長などの日々の調整負荷の削減が期待できるという。
今後、日本IBMは両ソリューションを活用し、計画から現場実行までをIT、OT、AIで連携しつつ、データにもとづく継続的な改善と作業指示・搬送の自動化を推進する。これにより、計画を遵守した生産力を構造的に高め、レジリエンスの強化を図る。
また、品質に関わる兆候の検知など対象領域の拡大を進めるとともに、対象業種や工程での適用実績を積み上げながら、パートナーとの共創エコシステムの構築・運用を進めていく。加えて、法規制やサポート体制など各国の要件を整備つつ、国外への提供拡大も目指すとともに、さらなる製造領域へのビジネス提供価値の最大化に向け、ORIONを活用したフィジカルAIとの連携も検討していく考えだ。
