MicrosoftのCopilotチャットボットは、OpenAIとの緊密なパートナーシップが薄れつつある中で、同社のAI戦略における中心的存在となっている。しかし、これをChatGPTの代替として構築しようとする取り組みは難航しているという。

Copilot普及の現状と競合サービスとの比較

Microsoftのエンタープライズスイートユーザーのうち、実際にCopilotを使う割合はわずかであり、さらにCopilotをGoogleのGeminiなど競合ツールより優先的に選ぶユーザーの割合も最近数カ月で減少している。

Copilotは、Microsoft CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏がMicrosoftをAIファースト企業へと転換させるための中心的なソリューションと位置付けており、10年前にクラウドファースト企業へと変革した時と同様だ。関係者によれば、Copilotはナデラ氏の最優先事項の1つとされている。

2026年1月末に決算を発表したMicrosoftは、その後に株価が急落。投資家は同社で最も重要な部門であるAzure事業の成長鈍化、そしてAI事業が依然としてOpenAIに依存し、Copilotが未検証のままである状況を懸念したからだという。

また、AIツールが企業向けサブスクリプションの必要性を低下させるのではないかという懸念から、ソフトウェア株全体が下落し、Microsoft株は約3%落ち込んだ。

ナデラ氏は2025年12月のブログ投稿で「AIの初期的な“試す”フェーズは過ぎた。業界は“目新しさ”と“本質”の違いを見極める段階に入っている」と指摘した。同社はチャットボット競争では遅れを取っているものの、AIドリブンのクラウド需要により、依然として数十億ドル規模の利益を得ており、世界有数の企業価値を維持している。

  • Microsoft CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏

    Microsoft CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏

さらに、Microsoft 365は数億人規模の企業ユーザーに利用されており、新しいAI製品を容易に普及させられる「囲い込まれた受け皿」を持つことから、アナリストはMicrosoftが差を埋める好位置にあると見ている。

Microsoftの投資家であるWashington Crossing Advisors シニアポートフォリオマネージャーのChad A. Morganlander氏は、Copilotが苦戦している現状について「われわれは、Microsoftには巨大な顧客基盤が埋め込まれており、間違い続けても最後には正しくやる余力があると見ている。彼らにはマラソンを走り抜くための資金がある」と述べた。

複数バージョンに分かれるCopilotの構造と課題

Microsoftには複数バージョンのCopilotが存在し、Microsoft 365に加え、GitHubのプラットフォームにも統合されているほか、ブラウザやアプリから利用できる一般消費者向けバージョンもある。

Copilotは大きく3つに分類される。企業や専門職向けに販売されるエンタープライズ向け、開発者・IT担当者向け、一般消費者向けだ。

消費者向けCopilotを統括するMicrosoft AI CEOのMustafa Suleyman(ムスタファ・スレイマン)氏は、2024年にMicrosoftに参画し、OpenAIやその他の競合と戦えるAIモデルを構築。現時点でMicrosoftは、各種CopilotをOpenAIおよび競合のAnthropicのモデルに依存させており、同社は「最良のモデルを使う」と公言している。

Microsoftは、1月にMicrosoft 365 Copilotの契約が1500万件に達した。Microsoft 365全体の有料契約数は4億5000万件以上である。また、昨年末時点でMicrosoftはCopilotユーザーが月間1億5000万人以上いるとした。これに対し、2月5日のGoogleのGeminiが同7億5000万人以上と2月5日の決算で発表しており、ChatGPTは週あたり9億人(昨年末時点)のアクティブユーザーを持つ。

未公開データによれば、Copilot契約者(企業ユーザーを含む)の間で、競合サービスを選ぶ割合が増えている。2024年7月から2025年1月下旬にかけて、米調査会社のRecon Analyticsが15万人以上を対象に行った調査では「Copilotを主に使う」と回答した割合が18.8%から11.5%に低下した一方で、Google Geminiを第一選択とする割合は12.8%から15.7%に上昇した。

Copilotから他サービスに乗り換えた理由として、ユーザーは品質の高さや、Copilotの使いにくさ、使用制限の強さを挙げている。

Copilot、Gemini、ChatGPTを利用できる環境にある従業員は、CopilotよりもGeminiやChatGPTを選ぶ傾向が強い。Citi Researchによれば、企業の中には購入したCopilot契約のうち約10%しか使われていない例もあり、データのサイロ化が問題になっているという。

Microsoftの顧客調査では、複数のCopilotの違いにユーザーが混乱していることが示され、Copilotがドキュメントやブラウザなどあらゆるところに現れることに対する不満も以前から多い。

Copilot間で体験が統一されていない点は問題であり、ナデラ氏も以前からこの問題を認識していた。昨年、同氏はエンタープライズ版CopilotがEdgeブラウザ上のWebページで期待通り動作しなかった件を幹部にメールで指摘したとのことだ。

この問題は解消されたが、同様の相互運用性の問題は依然として残っている。最近では、Anthropicの「Claude Cowork」が、Microsoft 365アプリケーションの横断的な操作性で高評価を得ており、Copilotの弱点を突く存在となっている。Coworkの登場は、ソフトウェア株の下落要因にもなった。Microsoftは内部で類似機能の開発を進めているとされる。

MicrosoftのAI開発と計算資源を巡る課題

さらに、独自AIモデルの育成も計算資源不足が障害となっている。MicrosoftはAzureでOpenAIなどの顧客に計算リソースを割り当てる必要があるため、自社のモデル開発に使える計算時間を制限してきた。ベンチマークでは同社の独自モデルが競合よりも低い評価にとどまるケースもある。

最近の決算でMicrosoftは、Copilot改善のために追加の計算資源を割り当てるとしたが、投資家はその判断をまだ評価していないという。同社がCopilot利用を拡大できている領域の1つは、自社の従業員向けだ。

ナデラ氏はMicrosoftを「フロンティア企業」に変革するために、社員にAI活用を強く促しており、管理職は評価面談でAI利用に関する質問を含めるように、社員はCopilotなどAIツールの利用状況を数値で示すように、それぞれ求められている。

また、同社は1万5000人以上の人員削減を実施した一方で、エンジニアやデザイナー向けにAIブートキャンプを開き、AI活用スキルを高める取り組みを進めている。社員の利用増加が製品改善につながる可能性はあるとしても、Microsoftには依然としてより多くの消費者・企業ユーザーにCopilotを選んでもらう必要がある。

そのためMicrosoftは広告投資を拡大しており、広告調査会社のiSpotによれば2025年に約6000万ドルをCopilotのテレビ広告に投入している。2月3日付のThe Wall Street Journalが報じている。