神奈川県横須賀市の佐島漁港でテーブル状サンゴが発見され、立教大学などの調査で日本国内の生息地の北限記録を約30キロメートル更新したことが分かった。これまでこの種類は、太平洋側では房総半島の先端(千葉県)、日本海側では対馬(長崎県)が北限だった。テーブル状サンゴは通常、台湾や沖縄の海域に生息しており、研究者は「ストレスに強い個体が北上しているのではないか。サンゴに共生する植物プランクトンの褐虫藻が強いのか、サンゴ自体が強いのか調べたい」と話している。
立教大学環境学部開設準備室の大久保奈弥教授(サンゴの生物学)は、藤沢市にある行きつけの寿司屋で、「漁師がサンゴらしきものを発見した」と聞き、調査を始めることにした。漁師らは「4、5年前からサンゴが増えてきた」と話しているという。
佐島漁港から採取された3群体を大久保教授が確認したところ、大きさは1片が15~35センチメートルほどで、水深3~5メートルで採れたテーブルのような形をしたミドリイシの一種だった。サンゴには通常、褐虫藻が共生しており、光合成によって栄養分をサンゴに供給する。この褐虫藻がいなくなると白化し、サンゴは死に至るが、今回の個体は3つとも白化しておらず、健康な状態で見つかった。
現在、サンゴの分類は「研究者によって記載している種類が異なる」という混乱が生じていることから、世界中の研究者により、形態に加えてDNA解析などを基に再度、記載がなされている最中だ。今回見つかったミドリイシはAcropora cf. solitaryensis(エンタクミドリイシ)とAcropora aff. divaricata(ミドリイシ)という種で、台湾や沖縄など、暖かい南方の海に生息する種類であることは間違いないという。
佐島漁港の2025年の海水温は、13.4~28.3度。沖縄の海水温は20度を下回ることがほとんどないため、今回のミドリイシは「低水温に耐性のある個体」である可能性が高いという。大久保教授によると、本来、ミドリイシは「弱い」サンゴで、水槽で飼うのは向かないとされるが、今回の個体は藤沢市の新江ノ島水族館内や大久保教授の水槽で「元気」に成長していることからも、ストレスに強いと推察されるという。
これまでこの種のミドリイシは、日本海側では長崎県対馬市沖、太平洋側では千葉県館山市波左間が北限で、これらの緯度よりさらに高い場所で見つかったことになる。館山市波左間の2025年の海水温は14.7~27.7度で、冬場は約30キロメートル北にある佐島漁港より約1度高い。
また、1年で3~4センチメートルの成長速度と見積もると、ミドリイシは10年以上この地域に生息していた計算になり、「黒潮大蛇行が近年ニュースで流れていたが、それより前に入ってきて定着した可能性がある。東京湾の奥は水質が悪く、今回のミドリイシは育たないだろう。佐島漁港は水質もきれいで地形的にも入り込みやすいので、住み着いたのではないか」としている。
今後は、現在開発中の実験用モデルサンゴとの比較解析などをおこなって、ストレスに強い原因を探りたいという。研究は大隅基礎科学創成財団の助成を受けて行われた。成果は、日本サンゴ礁学会の「ガラクシア ジャーナル オブ コーラル リーフ スタディズ」に2025年11月21日に掲載され、立教大学などが同12月23日に発表した。
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