AIの導入は、もはや先進企業に限られた取り組みではありません。日本のマーケティング現場においても、AIツールはアイデア構築や業務効率化、パーソナライゼーションの高度化を支える存在として、日常的に活用されるようになっています。競争が激化し、顧客体験の質が重要な課題のなかで、AIはマーケターにとって成長を促進させる推進力となっています。
昨年、Amplitudeが実施した日本市場向けの調査においても、その傾向は明確に表れています。AIをすでに業務で活用しているマーケターは、そうではない層と比較して、具体的な成果を実感していることが明らかになりました。
例えば、1年前と比べた業務時間の変化について尋ねたところ、「時間が短縮された」と答えたマーケターの割合は、AI活用者と非活用者の間で2倍の差が見られました。また、業務に対する満足度においても変化が表れており、AIツールを利用している層では半数が「成果に満足している」と回答した一方、非活用者では2割にとどまりました。AIを適切に活用することは、効率化だけでなく、働き方や達成感にもポジティブな変化を与えています。
一方で、AIの活用が進むほど、データセキュリティや倫理、プライバシーに対する懸念も強まっています。特に日本では、企業による責任が重視されるため、AIに対して慎重な姿勢を取っている所が依然として多く見られます。こうした背景があるからこそ、Amplitudeは、AIをすべてを任せる自動化エンジンではなく、信頼できる戦略的パートナーとして位置づけることが重要だと考えています。
AIは人の代替ではない、協働できるビジネスパートナー
Amplitudeは、AIが、意思決定の高速化とビジネスの成長を後押しする存在でありつつも、常に透明性と利用者の責任が伴うべきだという考え方を推奨しています。
AIの真の価値は、単なる自動化ツールとして作業を代わりに行うのではなく、人の判断を補完し、より良い意思決定へと導く「戦略的パートナー」になることで、初めて発揮されます。
精度や安全性、信頼性を重視する日本のマーケターにとって、責任あるAI導入の鍵となるのは、情報の透明性と明確な利用目的です。AIツールを使うことでどのようなゴールを目指しているのか、その背景や定義が十分に整理されていなければ、マーケターはAIを活用したアクションを起こすことができません。
そのためにはまず、AIは既存の人材を置き換える存在ではなく、マーケティングの可能性を拡張するパートナーであると示す必要があります。
現場は今、AIに何を求めているのか
日々の顧客との対話から、AI導入に対する認識において、役職ごとのギャップが存在していることが見えてきました。日本の経営者層には、プライバシーやデータ、著作権の取り扱いに対して不安を抱いている方が多く見られます。
一方で、現場をまとめるマネージャー層は、AIが生成するアウトプットの正確性と妥当性に対する懸念が強い傾向にあります。そして要となる存在のマーケターにおいては、自分たちの仕事が奪われるのではないかと危惧する声も挙がっています。
それぞれが持つ不安は、運用ルールの策定と共通認識を改めることで大きく緩和することができます。AIツールはどのようなもので何を目的としているのか、詳細をブラックボックス化せずに明確に伝えることが肝要です。導入する上で、知っておくべき実践的ガイドラインを以下にまとめました。
AI導入のプレイブック
第一に、強固なデータ基盤を構築することです。AIが意思決定を行う際、またはマーケターの意思決定を支援する際は、透明性が高く信頼できるデータに基づくべきです。社内のどのデータを使うのかを定義したうえで、正しいデータをインプットすることが大切です。機密データも同様に、どのようなフローで活用されているか詳細を明記する必要があります。細かく決めることで、AIツールが起こすハルシネーションや、生成される内容のバイアスを可能な限り抑えることができます。
第二に、チームの能力を最大限に引き出すことです。マーケターが安全に実験できるツールや環境を提供することで、知識を身に着ける機会が生まれます。一方的に指導するのではなく、現場のマーケターにどのような利用方法があるのか提示し、自由に学習できるようサポート体制を準備することをおすすめします。体制を整えることで、現場主導のイノベーションやアイデアが生まれやすくなり、ビジネスパートナーとしてのAIツールの価値が引き出され、マーケターの能力向上につながります。
第三に、チームを横断した信頼を構築することです。マーケティングチームやプロダクトチーム、データチームなど、AIツールを活用するチームすべてを横断した可視性を確保しましょう。メンバー全員で共通の指標や考え方を持つことで、社内での利用定義をクリアに保つことができます。また活用するデータに関して、事前にチームの合意を得ることも大切です。何がどう使われるのか、不明瞭な点をできるだけなくしてから、チーム共通の利用ポリシーを定めることを推奨します。
責任あるAIの利用が日本のマーケティングを形作る
Amplitudeは、AIは人々の創造性を置き換えるものではなく、拡大する存在であると考えています。明確なデータガイドラインと、信頼性の高い自動システムを通じて、人はより思考力を必要とするタスクに専念することができます。 これからのマーケティング市場は、テクノロジーの進歩に伴って、信頼と透明性をいかに担保するかが発展の鍵となります。Amplitudeは信頼と明確なガバナンスに基づいたAIの導入を支援し、企業が責任をもってAIをスケールアップできる方法を共に考えていきます。

著者プロフィール
Matt Bennett(マット・ベネット)
Amplitude Asia Pacific and Japan Vice President
Matt Bennett(マット・ベネット)は、Amplitudeでアジア太平洋および日本(APJ)地域のセールス組織を統括しています。VMware、Carbon Black、MobileIron、Zscalerといった高成長企業において、約20年にわたりAPJ地域での事業拡大と需要創出をリードしてきました。スタートアップから市場を牽引する企業まで、効率的な成長と高い成果を重視したセールスチームの立ち上げとスケールを手がけてきました。