アスカネットはこのほど、空中ディスプレイ技術「ASKA3D」を用いたディスプレイ筐体「浮空ライブステージ 匠」を発表し、発表会でデモンストレーションを行った。
同ディスプレイは、立体的な映像を空中に浮かび上がらせることができる点が大きな特徴。キャラクターや人物の映像を立体的に映し出し、AIを活用して顧客からのリクエストにリアルタイムに応答することで、商業施設での接客・案内などのコミュニケーション手段として活用可能だという。
XR(クロスリアリティ)技術とAIによるリアルタイムなコミュニケーションの組み合わせには、どのようなポテンシャルがあるのだろうか。アスカネット 空中ディスプレイ事業部の小口洋平氏に話を伺った。
大阪関西万博のセブン-イレブン店舗にも採用された「ASKA3D」とは
まずは、このディスプレイ筐体「浮空ライブステージ 匠」に組み込まれている同社の空中ディスプレイ技術「ASKA3D」を紹介しておこう。
ASKA3Dは、投影した物体の映像を空中に浮いているように見せる映像技術で、その形はガラスまたは樹脂でできた特殊光学プレートとなっている。この特殊光学プレートの中はアスカネットが開発した独自構造によりミラーが規則的に配列されており、このミラーが映像を反射することによって、空中で結像(映像の光線が集まり物体を視認できる状態)する仕組みになっている。
また、ASKA3Dプレートを通じて投影された映像は裸眼で視聴することができ、いわゆる3Dゴーグルなどの特殊な道具は必要ない。投影された映像に対してタッチ操作を行うことも可能で、商業施設にある案内パネルの操作に近いインタラクティブな体験も創出できるのが特徴だという。
小口氏によると、このASKA3Dプレートは地方自治体の観光案内所や商業施設の案内パネルやデジタルサイネージなどに採用されており、延べ採用件数は、試験採用も含めて200件ほど。最近では、セブン-イレブンが大阪関西万博に出店した店舗にも導入された実績があるという。
「セブン-イレブンでは、セルフレジの操作盤にASKA3Dプレートを採用し、画面操作を非接触でできる環境を構築していただいた。導入した背景にはコロナ禍によって非接触による接客のニーズが高まったことがある。2022年に試験導入していただき、現在では本部直営の主要店舗のセルフレジには導入されている」(小口氏)
これまでASKA3Dはさまざまな企業の製品に組み込まれる形で活用されてきたが、同社代表取締役社長の村上大吉朗氏は、この技術を活用した自社製品を開発・販売することで「ASKA3D」の普及拡大を目指している。「これまで、私たちはASKA3Dプレートを販売することを目標にしており、その先の活用については顧客任せの部分もあった。今後は日常的に使っていただける製品・サービスを作り、空中ディスプレイ事業の価値を高めていく。世界的な戦略パートナーとの提携も視野にビジネスを拡大していきたい」(村上氏)
AI連動やリアルタイムコミュニケーションが可能な「浮空ライブステージ 匠」
発表会の会場に用意された「浮空ライブステージ 匠」は、高さ2メートルほどのディスプレイ筐体で、デモンストレーションでは遠隔にいる別の社員が映し出され、プレゼンテーションをする小口氏とリアルタイムなコミュニケーションを実演していた。
小口氏によると、この「浮空ライブステージ 匠」では有人によるリモート接客もできるほか、キャラクターなどのCG映像を映し出してAIによってコミュニケーションすることも、またメニュー画面などを表示してタッチ操作で案内を行うことも可能だという。また商業施設などでは、接客スタッフに代わって「浮空ライブステージ 匠」を導入することで、人件費の削減やリモート接客による効率化、AIを活用した接客の多言語対応なども実現できるとしている。
「『浮空ライブステージ 匠』は、キャラクターなどのIPとのコミュニケーションにも向いているほか、AIと組み合わせることで新たなコミュニケーション体験を創出することが期待できる。一般的なAIキャラクターは液晶ディスプレイ(2D)でのアウトプットだが、空中ディスプレイによる体験がAIに新たな価値を吹き込み、大きな差別化になるのではないか」(小口氏)
小口氏は、今回発表した「浮空ライブステージ 匠」を通じて、“SFの世界”を現実にすることが期待できるとも語っていた。つまり、SF映画のワンシーンに出てくるような、空間に浮き上がった映像にタッチ操作をしてさまざまなアクションを行う、そのような世界観を思い描いているのだ。
「これまでASKA3Dを採用してくださった企業との会話の中で、SF映画の世界観をリアルの世界で実現できるのではないかという期待を非常に実感した。そうした期待にどのように応えられるかを模索するなかで生まれたのが、『浮空ライブステージ』シリーズ」(小口氏)
ちなみに小口氏によると、「浮空ライブステージ 匠」は受注生産で、価格は500万円ほどから。まずは年間で10件ほどの導入を目指しているという。
空中ディスプレイで“画面越しのコミュニケーション”を打破したい
では、具体的に「浮空ライブステージ 匠」にはどのようにAIを連携させることができるのか。
発表会後に小口氏に聞いてみたところ、基本的には導入する施設に合わせてオーダーメイドでAIを開発することを想定しているという。また今後は、導入施設に応じて最適化されたAIパッケージを構築して、導入を効率化することも視野に入れている。
「私たちはさまざまなAI開発パートナーと連携しているため、導入する施設に応じて独自のAIを開発することができる。例えば、自治体への導入であれば、自治体向けAIを開発している企業と連携して、来庁者向けの受付システムのワークフローや市民への案内シナリオなどをAIに学習させて、ソフトウェアを開発してもらう。そして、そのソフトウェアの映像アウトプットに『浮空ライブステージ 匠』を使用するイメージ。商業施設でも同様に、商業施設向けAIに強みがあるパートナーと組んで開発していく」(小口氏)
空中に浮き上がった映像を通じてAIとインタラクティブなコミュニケーションができるという未来的な体験を目指しているアスカネットにとって、XR(クロスリアリティ)とAIの組み合わせにはどのような価値があると考えているのか。小口氏は、「2Dで行われてきた“画面越しのコミュニケーション”を打破できるイノベーションがあるのではないか」との見方を示した。
「一般的なディスプレイでは、コミュニケーションの相手は“画面越しの相手”と認識される。しかし、空中ディスプレイで投影された立体的な空中映像は、コミュニケーションの相手がこの場に存在しているかのような演出をすることができる。これこそが、空中ディスプレイとAIを組み合わせた最大の付加価値なのではないか」(小口氏)
このような付加価値を最大限活用できる場面が、キャラクターなどのIPとコラボレーションしたプロモーションや販売促進だという。昨今、ブランドや商業施設では、アニメやゲームで人気のキャラクターIPとのコラボレーションが当たり前になってきた。東京都心の商業エリアなどに足を向けると、どこを見てもキャラクターがあふれており、むしろキャラクターIPとのコラボレーションそのものがコモディティ化してしまい斬新さが失われつつあるとも言える。しかし、そこに空中ディスプレイという新しいアウトプットを導入することで、他のコラボレーションとの差別化が図れるのだ。
「IPを使ったコラボレーションは、すでにいろいろな場所で見られるが、そこに空中ディスプレイという要素が加わるだけで、まったく違う体験を生み出すことができる。そこに今までにはない価値があると自負している。空中ディスプレイとIPを組み合わせることによって、より面白い顧客体験を創出できるのでは。『浮空ライブステージ 匠』の普及拡大を通じて、空中ディスプレイが世の中にどんどん入り込み、もっと楽しい世の中を生みだすことを目指していきたい」(小口氏)




