河野映彦・アップガレージグループ社長の 「人生の転機」【創業社長・石田誠氏との縁】

当社は車やバイクなど中古モビリティ用品の買取・販売会社として1999年に創業。「アップガレージ」の店舗ビジネスによるリユース事業に加え、新品のモビリティ用品やタイヤなどの流通卸売事業、在庫管理や、卸売の受発注システムなどを提供するシステム開発事業などにも取り組んでいます。

 アップガレージは、直営とフランチャイズで現在全国に260店舗以上あり、今後も毎年10~15店舗を出店予定です。昨春にはロサンゼルスにアメリカ1号店もオープンし、日本同様の売り上げ規模を見込んでいます。

 私は明治大学を卒業した2005年に野村證券に入り、そこで業界1位とはどういうことか、同じものを売るにも目標から他社の倍というこだわりを叩き込まれました。一方、配属先の渋谷支店ではIT系企業がお客様でしたが、同世代が経営する会社がどんどん大きくなっていくのを目の当たりにして、自分が置いていかれているようなもどかしさも覚え、外に出てITの仕事がしたいと考えるように。自ら企業オーナーに売り込み、複数の会社から声をかけられました。

 こうしたなかで当社を選ぶきっかけになったのが、創業者の石田誠社長(現会長)でした。実は、石田は妻の父で、野村證券をやめる話をしたところ「うちでやったらどうか」と言ってくれたのです。マーケットは大きい車業界ですが、ITが遅れていて人材も足りないと聞き、自分に合っているのではと思いました。

 結婚前からよく一緒に食事にも行き、ビジネスマンとして石田はすごいと思っていました。いつも明るく、経営が厳しくてもその状況を楽しむという姿勢。私が会った多くの経営者の中でも、頭のよさ、発想はピカイチです。12年に入社した時に言われたのは、「会社をつぶさない失敗ならしていいから、思い切ってやってほしい」でした。実際、当初は勢い、スピード重視のあまり、独りよがりの経営で現場を混乱させたこともありました。ただ、仲間意識が強く、皆で新しい価値をつくっていく当社の文化、そこに根付く石田の「楽しむこと」の精神から、人が協力しあうことで生まれる力を信じるようにもなりました。

 23年に社長に就任し、「Good Mobility,Happy Life」をスローガンにしました。モビリティの分野でいいものを提供し、お客さま、一緒に働く仲間たちの幸せを実現しようというものです。石田は大きな絵を描いて、新しい発想で進めるのが得意、私は日々のオペレーションを誰よりもコツコツとやるタイプ。お互いにないものを補い合う、失礼ながらいいパートナーとして事業を進めていきたいです。

石田会長(左)が監督のレーシングチームが今年6月、SUPER GT第3戦で優勝し、そのお祝いをする河野社長