IoTやAIなどのデジタル技術を活用し、工場内の情報をリアルタイムで収集・分析・活用する「スマートファクトリー」が注目を集めている。

生産プロセス全体を自動化・最適化し、生産性向上やコスト削減、品質安定、省人化などを実現する次世代型の工場の実現に向け、製造業の変革の一手として注力している企業も増加しているようだ。

本稿では、そんな「スマートファクトリー」の一例として、NECプラットフォームズの掛川事業所を紹介する。

  • NECプラットフォームズの掛川事業所 工場内の様子

    NECプラットフォームズの掛川事業所 工場内の様子

NECグループの「ものづくり」の中核企業

NECプラットフォームズは、ルータや無線LAN、5G基地局、IoT機器、車載電子機器、放送機器、宇宙機器など、幅広い分野のハードウェア製品を手がける、NECグループの「ものづくり」の中核企業だ。

生産拠点は、今回取材した静岡県の掛川事業所の他、国内では山梨県甲府市の甲府事業所、大月市の大月事業所、福島県福島市の福島事業所、栃木県那須塩原市の那須事業所、山形県米沢市の米沢事業所、海外では中国の江蘇省蘇州市と香港に構えている。「NECとの連携ソリューション」と「NECプラットフォームズのソリューション」の2軸で事業を展開している。

1つ目の軸である「NECとの連携ソリューション」としては、「パブリック事業」、「テレコムサービス事業」、「エアロスペース・ナショナルセキュリティ事業」、「ITプラットフォーム事業」の4事業を展開している。

  • 「NECとの連携ソリューション」のイメージ

    「NECとの連携ソリューション」のイメージ

もう一方の「NECプラットフォームズのソリューション」では、顧客の課題を解決する製品やソリューション・サービスを商品企画・開発・製造・販売・SI・保守までワンストップで提供している。

事業としては、「組込エッジ事業」「アクセスソリューション事業」「ユニファイドコミュニケーション事業」の3事業を展開している。

  • 「NECプラットフォームズのソリューション」

    「NECプラットフォームズのソリューション」

掛川工場ってどんなところ?

今回、筆者が訪れた掛川事業所では、ホームネットワーク製品、ビジネスネットワーク製品、組込製品、車載電子機器などの開発・生産を行っている。

掛川事業所は、NECの量産製造工場の地方分散と旧新日本電気の白黒テレビの生産能力確保を目的として1970年に旧A棟を建設されたことに端を発する。その後、1970年~2000年代にかけ、ポケットベル、FAX、携帯電話、ターミナルアダプタを製造する工場として活躍した。現在はアンテナ、無線、自働化技術をベースに、モバイルルータや車載機器の製造を担っている。

そんな掛川工場では、「工場ネットワークセキュリティ」「工場内搬送自働化」「人作業効率化」という3つの取り組みに注力している。

工場ネットワークセキュリティの取り組み

掛川工場では、「不正な侵入を許さない」「被害を拡大させない」「異常の検知を逃さない」の3つの視点で、ネットワークとセキュリティの強化を進めている。

「不正な侵入を許さない」の視点では、「UTMによる境界防御」と「MACアドレス認証」によって、サイバー攻撃の脅威を低減したり、管理外の端末などの接続を排除して情報漏えいやウイルス感染を防止したりしている。

  • 工場ネットワークセキュリティの取り組み

    工場ネットワークセキュリティの取り組み

また「被害を拡大させない」の視点においては、「マイクロセグメンテーション」に取り組んでいる。

「マイクロセグメンテーション」とは、ネットワークを細かな単位(サーバ、アプリケーション、ワークロード単位など)に分割し、セグメントごとに厳格なセキュリティポリシー(アクセス制御ルール)を適用するサイバーセキュリティ技術のこと。インテリジェンススイッチを活用したセグメント分離をすることで感染端末からの横方向移動を防ぎ、二次災害を防止しているという。

最後の「異常の検知を逃さない」においては、SOCサービスを活用した運用管理をすることで、24時間365日リモート監視の体制を敷いている。

これにより、異常発生時には外部機関による迅速かつ専門的な対処が可能であることに加え、異常が検知された場所を迅速に特定することが可能となる。

工場内搬送自働化への取り組み

工場内物流のボトルネックであったエレベーターの運用をデザインしたことで、運用状況を観察し、改善すべきポイントを明確化した。それにより走行距離を10倍に延ばし、トラブルは極小化したという。

生産量から供給サイクルを計算し、エレベーター能力を勘案。定時定ルートをデザインすることで、AGVの運行状況をリアルタイムで把握することを可能にした。

また、AGVにNEC製のホームWi-Fiを搭載することで、トラブルが多いエリア、原因を特定したという。このようにして把握した課題の解決にあたったところ、もともと25%だった脱線率が0%になるなど、さまざまな課題解決が進んでいる。

  • 工場内搬送自働化への取り組み

    工場内搬送自働化への取り組み

人作業効率化への取り組み

「NEC AI画像分析を活用した動作分析による作業効率化」と「作業分配最適化システム(NEC製造技術開発)」という両方のアプローチで、人手による作業を効率化している。

「NEC AI画像分析を活用した動作分析による作業効率化」は、現場映像データを収集し、映像AIで分析することで、人の作業量、作業内容、動線を可視化する取り組み。現在、工場内で実証実験中で、今後認識できる動きを増やしていきたいとのこと。

  • 現場映像データを収集し、映像AIで分析している様子

    現場映像データを収集し、映像AIで分析している様子

「作業分配最適化システム」は、生産計画、作業の制約条件を加えて、作業者配置、作業順序を自動スケジューリングするプログラムとして作成されたもの。これにより、倉庫内の省人化30%を実現するなど、さまざまな効果を発揮しているという。

  • 人作業効率化への取り組み

    人作業効率化への取り組み

そして、2023年3月には新A棟が竣工した。新A棟はサプライチェーン網の強靭化や経済安全保障の観点から国内生産体制を強化することと、これまで培った「現場力」と「NECの先進技術」を融合した新工場として建設された。

新A棟の特徴としては、「先端技術の活用」、「セキュリティ」「クリーン」の3点がある。

「最先端技術の活用」の文脈では、「ローカル5G無線技術+AMR自律制御による搬送の自働化」「量子アニーリング技術活用による生産計画を最適化」といった取り組みが行われており、工場内で自働搬送システムが稼働している様子を至る所で見ることができる。

  • 自働搬送の様子

    自働搬送の様子

  • 工場内に設置されているローカル5Gアンテナ

    工場内に設置されているローカル5Gアンテナ

セキュリティに関しては、顔認証システムやカメラによるフロア全域の監視を行っている他、サイバーセキュリティとBCPの考え方を取り入れたセキュア生産を採用している。また、エアシャワーなどを導入することで、空気中のホコリや異物が入り込むのを防ぎ、高い水準の清浄レベルに管理されたクリーン度で運用している。