日本ヒューレット・パッカード(HPE)は12月15日、2026年度の事業方針に関する説明会を開催した。説明会では、同社 代表執行役員社長の望月弘一氏らが出席した。

グローバルの業績と日本法人の重点領域

まず、望月氏はグローバルにおける業績について触れた。同社は2025年度の売上高が前年同期比14%増の343億ドルと主要3事業セグメント全体で堅調な業績を達成したという。同社では「Leading edge to cloud company」を以前から掲げており、望月氏は「お客さまの環境を見ると複数のベンダー、クラウドを利用することが当たり前になっている。こうした中で当社はベンダー、クラウドニュートラルを軸に、お客さまのIT環境の最適化を支援している」と述べた。

  • 日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏

    日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏

  • 業績の概要

    業績の概要

日本法人における注力領域は、Juniper Networks(ジュニパー)との統合を活かした「ネットワーク市場における活動の本格展開」、買収したOpsRampやZertoなどの技術を用いた「HPE GreenLakeでソフトウェア、サービスの成長」、最新サーバ「ProLiant Gen12」などによる「プラットフォーム市場でのシェア獲得」、ソブリン、エンタープライズ市場における「AIインフラの成長にフォーカス」の4点。

  • 日本法人における注力領域

    日本法人における注力領域

重点領域としては「ネットワーキング」「クラウド」「AI」を据えている。2028年までのグローバルの市場規模は、ネットワーキングが2025年比1.3倍、クラウドが同1.1倍、AIは同1.9倍への成長が見込まれており、望月氏は「日本でも同様のトレンド」と位置付けている。

ネットワーキング戦略、AI for NetworkとNetwork for AI

ネットワーキングでは、環境のモダナイゼーションの出発点かつ中核と位置付け「AI for Network」と「Network for AI」の2つのテーマで事業に取り組む。

AI for Networkでは、有線や無線、データセンター、セキュリティ、クラウド接続をはじめ、複雑化するネットワーク環境の運用をAIを活用して簡素化・最適化し、将来的には自律化を目指す。Network for AIでは、AIのモデル学習や推論で増大するトラフィックに従来のネットワークでは対応が難しいことから、AIワークロードに最適化されたネットワークの提供を図る。

  • ジュニパーの買収完了で包括的なネットワークのポートフォリオを備えている

    ジュニパーの買収完了で包括的なネットワークのポートフォリオを備えている

また、買収が完了したジュニパーとの統合について同氏は「ジュニパーが持つAIネイティなネットワーク技術と、HPEが有するArubaの技術を融合し、オンプレミスからクラウドまで、すべてのワークロードに対応する幅広いネットワークの提供が可能になった。統合によりHPEのネットワーク事業は規模が2倍になり、全社売り上げの約3分の1を占める中核事業になる」と説明した。

日本のネットワーク市場は2028年までに2025年比1.2倍の成長が見込まれており、AIワークロードの増加でデータセンター内、データセンター間のネットワーク帯域が重要になる。

望月氏は「今後、5年間で帯域要件は約6倍になると予測されており、当社ではHPC(スーパーコンピュータ)からAIデータセンターの実績にジュニパーの技術を融合することで、ネットワークも含めた提案の幅が広がる」と自信を口にした。

クラウド戦略とHPE GreenLakeの進化

クラウドについては、Barclaysの「CIO Survey」によるとプライベートクラウドへの回帰を計画しているCIOは2020年の43%から2024年には83%に大幅に増加。この背景には機密性の高いデータに対する懸念、データセキュリティ、ガバナンスへの対策、コスト最適化があるため、ハイブリッドクラウドが進行していくとの見立てだ。

HPEでは、2019年に「すべてをas a Serviceで提供する」と宣言して以来、計画的にZertoやOpsRaFmp、Morpheusなどのソフトウェア企業の買収を行っており、これらのソフトウェア群を「HPE CloudOps Software suite」として提供を開始。同氏は「マルチベンダー、マルチクラウドを対象にしたクラウドサービスを提供する」と話す。

同製品は1つのパッケージ製品として、IT・アプリケーションのプロビジョニング機能を提供するオーケストレーションを可能とし、OpsRmpのAIを活用した高度な可観測性で障害を検知して自動的に対策を行い、Zertoの継続的なバックアップと自動リカバリ機能を提供するというものだ。

  • 「HPE CloudOps Software suite」の概要

    「HPE CloudOps Software suite」の概要

また、AIエージェントを活用したIT運用のフレームワークとして「HPE GreenLake Intelligence」は、ネットワーキング、ストレージ、サーバ、アプリケーション、セキュリティなど各領域で独立したAIエージェントが動作し、相互に通信して運用の質を高めることができる。AIエージェントが運用における質の向上や生産性の向上についてインサイトを提示し、レコメンドも行う。

  • 「HPE GreenLake Intelligence」の概要

    「HPE GreenLake Intelligence」の概要

AI市場への取り組みとNVIDIAとの協業

AIに関しては、日本の2028年におけるAI市場は2025年比で2倍の成長が予測されており、機密性の高いデータを使うことが多くなり、オンプレミス回帰やプライベート環境でのAI利用ニーズが高まっているという。

HPEでは、HPC(スーパーコンピュータ)分野で培ったノウハウを強みに世界ランキングのトップ3を同社が独占しており、直近では米エネルギー省オークリッジ国立研究所に次世代エクサスケールHPC「Discover」と、AIクラスタ「Lux」のシステムを構築。

  • オークリッジ国立研究所に次世代エクサスケールHPC「Discover」と、AIクラスタ「Lux」のシステムを構築

    オークリッジ国立研究所に次世代エクサスケールHPC「Discover」と、AIクラスタ「Lux」のシステムを構築

また、NVIDIAとの戦略的協業では単なるリファレンスアーキテクチャ作成のみならず、両社のハードウェアやソフトウェアを統合した共同検証などを実施。望月氏は「手軽かつ簡単に提供できるAIプラットフォームを、事前検証済みの短期導入型ソリューションを顧客に届けることを目的にしている」と説明する。

エンタープライズAI向け製品は「HPE Private Cloud AI」を訴求。NVIDIAとの協業スキーム「NVIDIA AI Computing by HPE」ポートフォリオの一部として、一昨年6月に米ラスベガスで開催した年次イベント「HPE Discover 2024」で発表。NVIDIAのAIコンピューティング、ネットワーキング、ソフトウェアと、HPEのAIストレージ、コンピュート、HPE GreenLakeクラウドを統合したオファリングで構成している。

さらに、AI時代のストレージ基盤として「HPE Alletra Storage MP(マルチプロトコル)」を紹介。AIは複数の拠点にまたがる構造化データ・非構造化データなど、多様なデータを統合して分析する必要があるが、同製品は複数拠点にまたがる多様なデータを単一のデータコントロールプレーンから管理する「データファブリック」を提供するのに最適なストレージと位置付けている。

  • 「HPE Alletra Storage MP(マルチプロトコル)」の概要

    「HPE Alletra Storage MP(マルチプロトコル)」の概要

統合5カ月間での成果とは

続けて、日本ヒューレット・パッカード 執行役員 HPE Networking事業統括本部長の本田昌和氏がHPE Networkingの戦略と取り組みについて説明した。本田氏は「ジュニパーとArubaそれぞれの事業、人員規模がほぼ同じであり、HPEのネットワーク事業組織としては倍増した。11月からジュニパーを含めて1つの組織として動いており、来年1月からは営業組織をまとめる」と力を込めた。

  • 日本ヒューレット・パッカード 執行役員 HPE Networking事業統括本部長の本田昌和氏

    日本ヒューレット・パッカード 執行役員 HPE Networking事業統括本部長の本田昌和氏

新たな組織として舵を切ったHPE Networkingが掲げるビジョンと価値提供については「Self Driving Network(自律型ネットワーク運用)」の実現にあるという。同氏は「これまでも自動化の取り組みはあったが、昨今ではエージェントAIの適用で自律型の実現が飛躍的に加速している。自律型ネットワークは、単なる管理ツールの高度化ではなく、運用プロセス全体をAIが継続的に学習し、トラブルの検知や原因特定、対処までを自動化する」と説く。

  • HPEでは「Self Driving Network」の実現を目指す

    HPEでは「Self Driving Network」の実現を目指す

また、本田氏は「自律型ネットワーク運用の話をすると将来の話といった疑問を受けるが、すでに日々のネットワーク運用で自動化や自動修復を実装している。つまり、将来の構想ではなく、すでに一部のお客さま環境で動いている技術」と話す。

そして、同氏は望月氏も言及したAI for Networkと、Network for AIに関して取り組みの具体例を挙げた。AI for Networkではジュニパーが2019年に買収したMist SystemsのAIエンジン「Marvis」を搭載した、AI・機械学習活用のクラウド管理型Wi-Fiソリューション「Juniper Marvis」と、ネットワーク機器をクラウドから一元管理できるサービス「Aruba Central」の機能移植をそれぞれ進めている。

同氏は「今後、どちらが主流になるのかといったロードマップに対する懸念もあるが、当社のアプローチはどちらか一方をなくすことではない。Mistで提供している機能をAruba Centralに移植し、その逆も行うという双方向の機能を相互移植している」と意図を説明した。

可搬性の高いアプリケーション基盤で開発しているこtから、相互移植を短期難で実現できる点が技術的な強みとのことだ。この一環として、Wi-Fi 7アクセスポイントがデュアルプラットフォームに対応し、Juniper MistもしくはAruba Centralからソフトウェアを選択できるようにするという。

Network for AIでは、1Uサイズのデータセンター向けエッジルータ「MX 301」、水冷対応のスイッチ「QFX5250」に加え、NVIDIA AIファクトリーのネットワークに活用されているとのこと。

本田氏は「従来は1つのデータセンターにAIサーバを置く形が一般的だったが、今後は複数のデータセンター間で相互にやり取りしながらAIの学習や推論を行う世界にシフトする。マルチデータセンター環境で中核となるネットワークを当社が担う」と述べている。そのほか、AMDのAIデータセンター向けラックスケールAIプラットフォーム「Helios」のインターコネクトスイッチにジュニパーの技術が実装されていることも紹介した。

  • ジュニパーとの統合5カ月間での成果

    ジュニパーとの統合5カ月間での成果

国内におけるGo to Market戦略

最後に、同氏は国内におけるHPE NetworkingのGTM(Go to Market)戦略について解説。AI時代において従来型のネットワークでは最適なパフォーマンスが得られず、企業におけるDXの足かせになりかねないと指摘。

ネットワークはDX推進における重要なポジションであり、性能・柔軟性・自動化レベルが企業競争力に直結するとのこと。このような認識のもと、同社はネットワークの取り組みを強化し、AI対応尾含めた次世代ネットワークの構築を支援することを戦略の中心に据えている。

GTM戦略としては顧客を大きく「サービスプロバイダー」「エンタープライズ」「公共」「商用」の4つに分けて、セグメントごとにネットワーク専任の営業組織を設け、来年1月から活動をスタートする。

  • 国内におけるGTM戦略の概要

    国内におけるGTM戦略の概要

本田氏は「各セグメントに存在する需要に合わせたソリューションとパートナーシップを通じて、日本市場での成長と顧客支援を拡大していく。当社全体に共通する方針として、パートナーセントリックなアプローチを継続し、直販のみならずパートナーとの連携を通じて価値を提供していくモデルを重視する。また、ハイタッチ営業とパートナーと組み合わせることで、市場開拓と顧客支援を加速していく」と強調していた。