【トヨタのメリハリ利いた戦略】国内のEV電池工場は延期、米国のHV工場は追加投資

EVと相性の良い「知能化」

 国内の電気自動車(EV)用の電池工場の建設は延期、米国でハイブリッド車(HV)を生産する工場に追加投資─。トヨタ自動車がメリハリを利かせた対応を行っている。

 トヨタはHVの生産に関わる米国内の5工場に約1400億円を投資する。この投資は今後5年間にわたって米国内で実施予定の最大100億ドル(約1.5兆円)の追加投資の一部で、約70年前の米国進出以来、総投資額は約600億ドルに達する。

 一方、福岡県苅田町に建設を計画しているEV向けの電池工場は建設を延期。今後1年程度かけて事業計画の見直しを進める。2028年に予定していた工場の稼働開始は遅れる見込み。

「売れる地域で売れるクルマをつくる」。トヨタ幹部がこう語るように、EV購入補助金を廃止し、環境規制を撤回した米政府の方針によって米国内ではEVの販売台数が伸び悩む一方で、HVを含むガソリン車の引き合いが増えている。トヨタの動きはその変化に対応した形だ。

 トヨタのみならず、米国などの海外自動車メーカーの間でも方針転換が相次ぐ。米ゼネラル・モーターズはEV戦略の調整を行い、16億ドル(約2400億円)の損失を計上。代わりにガソリン車のSUV(スポーツ多目的車)とトラックの生産を増やす40億ドル(約6000億円)の投資計画も発表している。

 EVに注力してきたフォード・モーターも戦略を修正。北米で展開するガソリン車の全車種でHVを導入する。また、EVで主導権を握ろうとしていた独フォルクスワーゲンも戦略転換を余儀なくされ、本格的なHVを初めて開発する。

 アナリストは「当面はHVなどの内燃機関車で利益を稼ぎながら、来るべきタイミングでEVを投入していくことになる」と指摘した上で、「その際に新たな競争の主軸になるのが知能化だ」と話す。

 EVはSDV(ソフトウェア定義車両)と相性が良く、中国のIT企業などは膨大な研究費を投じて、この領域への進出を始めている。トヨタも含めHVが売れていることに手放しで喜べない状況が続く。

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