
金融庁は公的資金で資本注入した信用金庫・信用組合への経営監視を抜本的に強化する。2012年1月に東日本大震災に伴う震災特例で175億円の公的資金注入を受けた福島県のいわき信組が迂回融資など不正を長年続けた上、反社会的勢力に多額の資金を供与していたことが新たに発覚したからだ。
いわき信組の不正融資の実態解明を進めていた特別調査委員会は、2025年10月末に報告書を公表。調査委によると、不正融資の総額は約280億円に上り、使途不明とされていた約10億円は不正融資の口止め料などの名目で反社勢力に供与されていた。
さらに、反社やその関係先に40億円超の融資も行われていた。不正融資の大半は回収不能と見られ、不良債権として償却する必要がある。その原資として注入された公的資金も使われるが、世論の批判が高まるのは必至の状況。
金融庁・東北財務局はいわき信組に対して25年5月に次ぐ2度目の業務改善命令を発動。新規顧客への融資1カ月間停止を求めるなど一部業務停止命令にも踏み込んだ。不正を隠蔽するため、金融庁の検査に対して虚偽の報告をしたことを理由に元役員らを刑事告発する方針。
厳しい姿勢を打ち出した格好だが、今回浮き彫りになった協同組織金融機関のガバナンスの脆弱さは、いわき信組だけの問題とは言えない。銀行と異なり非上場の信金・信組は株主のチェックの目にさらされず、理事長らトップに権限が集中しやすい経営構造を元々抱えている。
また、地域に根差した金融機関であることから経営陣、監査役、職員の人的つながりが深く、組織内で異議の申し立てや内部告発をしづらいカルチャーが醸成されやすいといった指摘もある。
金融庁は地方経済を支える「地域金融力」の強化を目指し、公的資金制度を定めた金融機能強化法の恒久化も視野に26年の通常国会に改正案を提出する方針だ。だが、緩い規律のままでは、いわき信組の二の舞も危ぶまれ、国民の納得が得られないだろう。そこで、公的資金注入時や注入後の信金・信組の経営監視の抜本強化に乗り出した。
地域金融システムの安定化や信頼確保に向けて、当局には更なる取り組みも求められそうだ。