
経済産業省は、人口減少地域で小売りや物流など日常生活に必要な「エッセンシャルサービス」を維持するため、住民主体の非営利組織を新たな担い手に据える動きを本格化させている。過疎地でスーパーなどの撤退が相次ぐ中、住民自らが必要なサービスを運営する仕組みを構築したい考え。資金調達の円滑化に向けた法整備を視野に入れており、今年度内に方向性を打ち出す。
現在、全国1718市町村のうち、約52%に当たる885団体が過疎地域に指定されている。利益を求める企業にとって、こうした地域でビジネスを展開することは困難で、スーパーや宅配といったサービスの維持が危ぶまれている。
こうしたサービス縮小の影響は、地元住民だけにとどまらない。経産省が11月にまとめた試算によると、対策を行わずサービス供給が不足し続けた場合、2040年度の実質GDP(国内総生産)は最大76兆円程度減少するという。
試算では、事業者の撤退といった直接的な影響額として16兆円を見込んだほか、製造業など他産業に与える間接的な影響額が最大60兆円に上ると算出。省幹部は「生活環境の悪化はさらなる人材流出を招き、地域産業の消失がサプライチェーン(供給網)全体に悪影響を与える」と危機感を募らす。
経産省は10月、サービス維持の方策を議論する有識者会議を設立。そこで着目されているのが、労働者協同組合など住民主体の非営利組織だ。
こうした組織は、少人数で設立できるほか、株式会社とは異なり、出資額にかかわらず組員が平等に議決権を持つのが特徴。そのため、お互いに意見を出し合い、地域の実情に応じた事業の展開が期待されるという。
先の幹部は「住民が必要としているサービスを自分らで展開するモデルになる」と強調。経産省は、組織数の増加に向け、資金面での課題解消を図りたい考えで、関連法案の改正も視野に年度内に方向性をまとめる方針だ。