三井デザインテックは、家具の設計から使用後の循環までのライフサイクルに応じた資源循環を支援する取り組みとして、2026年4月より新サービス「CIRCULAR FURNITURE」を開始することを発表した。

この発表に際し同社は記者発表会を開催。村元祐介代表取締役社長らが登壇し、資源循環の実現に向けた“小さな一歩”と語る新サービスが誕生した背景や、その概要について説明を行った。

  • 三井デザインテックの村元祐介代表取締役社長

    三井デザインテックの記者発表会に登壇した村元祐介代表取締役社長

“自然資源の循環”に向けて特注家具からアプローチ

気候変動への対応や生物多様性保全など、さまざまな環境負荷削減への観点が重要とされる昨今では、循環型社会の形成に向けた取り組みへの関心が高まっている。その一環として国土交通省は2028年度より、新築建築物に対して、そのライフサイクル全体を通じて発生するCO2などの環境負荷を定量的に把握・評価することを義務付ける「建築物LCA制度」の導入も検討。単なるトレンドではなく、制度面での変革も進められている。

そうした中で三井不動産グループは2025年4月、街づくりにおける環境との共生宣言として「&EARTH for Nature」を策定し、未来の世代につなぐ街づくりを推進する姿勢を改めて発表。同社グループで、オフィスやホテルなどを対象としたスペースデザイン事業と、住まいに関わるさまざまなライフスタイル事業を展開する三井デザインテックも、同様の方針の下で取り組みを進めており、「緑を守り育む」「水の魅力を生かす」「生態系を豊かにする」「地域の想いをつなぐ」「自然資源を循環させる」の5つの重点課題にアプローチしている。

また同社はこれまで、サーキュラーエコノミー実現に向けた取り組みを開始し、その第一段階として、ホテルなどに設置される特注家具を対象に、重点課題のうち「自然資源を循環させる」というテーマを体現する事業モデルの確立に向けた動きを進めてきたとのこと。そして村元社長は今般、「循環型家具の新たなサービスパッケージとして、『CIRCULAR FURNITURE』を先行スタートすることとなりました」と明かした。

  • 「CIRCULAR FURNITURE」で目指す家具づくりの形

    三井デザインが「CIRCULAR FURNITURE」で目指す家具づくりの形(出所:三井デザインテック)

資源サイクル全体を他社とも連携しながら後押し

現在では前述のように、環境負荷低減に向けた施策は“取り組まなければならない”ものとなっている。ただ一方で、各企業での環境意識の高まりとは裏腹に、さまざまな企業との連携の必要性や小さくないコストなど課題は山積。プロセスの各工程での循環支援サービスは存在していたものの、ライフサイクル全体を統合した形での連携は進んでおらず、“取り組みたいけど、できない”状況が続いていたとする。

こうした課題の解決を目指して立ち上がる今回の新サービスは、家具の設計から再資源化に至るまでの一連のプロセスを、複数の専門パートナーと連携して包括的に提供するもの。環境負荷を抑制する「低炭素循環促進」に加え、環境負荷を可視化する「カーボンフットプリント(CFP)算出」、製品情報をデジタル管理し資源価値を保証する「デジタルパスポート(DPP)実装」、そして資源循環を追跡する「トレーサビリティ」までの、資源循環全体をワンストップで支えるサービスだという。

  • 「CIRCULAR FURNITURE」サービス概要

    「CIRCULAR FURNITURE」サービス概要(出所:三井デザインテック)

では、具体的にはどう取り組むのか。特注家具を対象とするCIRCULAR FURNITUREではまず、三井デザインテックが、資源循環を見据え再利用や分解をしやすい形での家具の設計・製造を行う。その家具のCFPは、同社がゼロックに委託開発を行ったサービスによって算出。各部材の情報や回収先、メンテナンス方法などの製品情報と共にDPPの形で管理され、digglueが提供する環境価値訴求ツール「CiReta!」に統合されることで、QRコードなど手軽な形で顧客がいつでも確認できるようになるとする。そして使用を終えた家具の回収から資源のマッチングまでのプロセスは、資源循環プラットフォームサービス「StateEco」とナカダイの協力により実現されたといい、部材としての再利用が難しい場合には、ナカダイによる再資源化やサーマルリサイクルなどを経て、家具の資源循環の輪が形成されるとした。

今回は「小さな一歩」 - 2027年度には拡大も構想

2026年4月の本格提供開始が予定されるCIRCULAR FURNITUREは、家具の資源循環を包括的にワンストップで推進する新サービス。ただし三井デザインテック クリエイティブデザインセンター クリエイティブデザイン推進室の堀内健人室長は、「必ずしも全段階を通じたサービス活用でなくても良い」と話す。「当然我々としてはCIRCULAR FURNITUREをとてもいい取り組みだと思って展開したいとは考えているものの、各企業にとってすべてを一気に進めるのはハードルが高い部分もあると思います」とした上で、循環型設計の採用とCFP算出までの採用、またはDPPまでの採用、あるいは自社で回収資源を有する企業であればトレーサビリティのみの採用からスタートするなど、「資源循環を促進するためには、一部から取り組みを開始していくという選択肢もあるんじゃないか」と語った。

  • 記者発表会に登壇した堀内健人氏

    記者発表会に登壇した堀内健人氏

また今後のロードマップとして、2026年に特注家具を対象としたCIRCULAR FURNITUREを開始するのを皮切りとして、翌2027年度からは資源循環の対象を内装・インテリア全般まで広げ、「CIRCULAR INTERIOR」としてのサービス開始を構想。また2028年度に予定される建築物LCA制度に開始に先駆けて、2027年度内には内装・家具を対象とした“自社設計LCA”についても取り組んでいくと明かした。

  • 三井デザインテックが掲げるロードマップ

    三井デザインテックが掲げる資源循環サービスのロードマップ(出所:三井デザインテック)

ただ三井デザインテックとしては一貫して、「我々だけで陣管型社会は実現できない」「まだこの取り組みは小さな一歩に過ぎない」との姿勢を強調する。村元社長は「コストの問題もあって、誰しもがすぐに始められる取り組みではないと思う」としつつ、「欧州をはじめ世界的にはすでに取り組みが進んでいますし、いつか日本も本気になって取り組む必要に迫られるはず。その時に準備ができていられるように、我々としては先行して取り組んでいくだけです」と話す。

また同社の檜木田敦代表取締役会長は、「まずは一歩を踏み出さないことには、何も始まらない。最初は小さな取り組みかもしれませんが、早く一歩進まないと、その先には何も広がりません。そうではなく、まずはトライアルのような形で取り組みを始めて、その先も試行錯誤を繰り返し続けていきながら、徐々に社会に根付いていくのではないでしょうか」と見通しを語った。

実際、今回始動する新サービスについては、三井不動産グループ企業に限らず、外部企業との間でも利用の検討が進んでいるとのこと。特にインバウンドが大きなターゲットである国内ホテル業界に対しては、すでに環境配慮への意識が高まっている欧州の人々に対して資源循環への取り組みをメッセージとして伝えることが、今後の経営に大きな影響を及ぼし得ることから、さらなる利用の拡大が期待される。

  • 資源循環しやすい設計のベンチソファ

    「CIRCULAR FURNITURE」のコンセプトのもと設計されたベンチソファ

市場や制度が醸成しきっていない資源循環の領域では、まだ必要とされるコストも小さくなく、誰しもが気軽に取り組めるものとはなっていない。しかしだからと言って見ないふりをし続けていれば、遠くない未来に厳しい環境に置かれることは明白だ。「デザインを通じて空間と素材の新たな循環を創出し、持続可能な社会の実現を目指す」とする三井デザインテックが描く輪は、今後どれだけ広がっていくことができるだろうか。

  • 資源循環しやすい設計のナイトテーブル

    「CIRCULAR FURNITURE」のコンセプトのもと設計されたナイトテーブル。座面のQRコードからはCFPなどのデータが確認できる

  • 使用後の資源分解イメージ

    使用後は資源それぞれに分解され、それぞれ最適なリサイクル先へと転用される