GitHub Japanは11月26日、都内で日本における開発者や組織のソフトウェア構築方法をAIとAIエージェントで再定義する取り組み、また日本におけるGitHubの開発者増加を牽引する要因、そしてNTTドコモの導入事例などを中心に説明会を行った。

日本市場で拡大するGitHubとAI活用の現状

まず、登壇したのはGitHub Japan 日本・韓国エンタープライズ担当 シニアディレクターの角田賢治氏だ。2020年の日本における利用者数は120万人だったが、2021年6月にAIコーディングアシスタントの「GitHub Copilot」をリリースし、それ以降はペアプログラミングの立ち位置から同サービスをコーディングエージェントに進化させている。現在はグローバルで1億8000万人が利用し、GitHub Copilotの利用者数は2600万人になっており、ZOZOやソニー、NTTドコモなどが導入している。

  • GitHub Japan 日本・韓国エンタープライズ担当 シニアディレクターの角田賢治氏

    GitHub Japan 日本・韓国エンタープライズ担当 シニアディレクターの角田賢治氏

角田氏は日本市場におけるGitHubの拡大が継続していることを前提に「現在は450万人にの利用者は拡大し、直近1~2カ月で100万人以上の開発者が利用を始めた。この勢いはこれまでで最も速い。開発者コミュニティは世界で6番目に大きく、AIへの貢献ランキングは4位であり、日本の開発者がグローバルにおけるAIエコシステムの形成に寄与している」と述べた。

こうした勢いを加速するため同社では、開発者と企業が制限なくソフトウェアを利用・開発できるようにDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するほか、そのために開発者が必要なツール、ガバナンス、セキュリティに柔軟にアクセスできるように支援する。また、規制の厳しい業界でクラウドを導入し、世界の同業他社と同等のペースでモダナイゼーションを推進できる環境をこうちくできるように支援するという。

続いて、登壇したGitHub アジア太平洋地域担当 バイスプレジデント シャリーン・ネイピア(Sharryn Napier)氏は「GitHubのミッションは“開発者から開発の制約を取り除く”であり、シンプルなものだ。プルリクエストやGitHub Copilotに至るまで当社のイノベーションの狙いは開発者の可能性の拡大を目指すことにある。近年ではAIでソフトウェア開発手法が大きく変わる中、開発には複雑さや混乱に対処することが求められている」との見解を示した。

  • GitHub アジア太平洋地域担当 バイスプレジデント シャリーン・ネイピア(Sharryn Napier)氏

    GitHub アジア太平洋地域担当 バイスプレジデント シャリーン・ネイピア(Sharryn Napier)氏

同氏によると、現在のAIは環境はGitHubが誕生する前の環境と多くの点で類似しているという。AIエージェントで開発者は驚くべき計算能力を手に入れたが、多くの開発ツールが連携されておらず孤立した状態であり、統一的に管理、または活用するなどアウトプットをワークフローに統合する方法がなく、分断が至る箇所で発生しているとのことだ。

同氏は「現在、大きな転換点を迎えており、日本の開発者コミュニティはかつてない速さで拡大し、AIを積極的に取り入れようとしています。実際に、GitHubコミュニティへ参加した開発者の約80%がGitHub Copilotを1週目に使い始めており、AIは開発者にとって必須なものとなっている。また、イノベーションを推進していくために必要な信頼性やガバナンス、セキュリティを備えたAIの力も活用しよう試みている」と話す。

AI時代の開発課題とGitHubの戦略

こうした状況に対して、同社では10月末に「Agent HQ」を発表。これはAnthropicやOpenAI、Google、xAIなどが提供しているAIコーディングエージェントを統合するものとなり、ネイピア氏は「開発者の選択の自由を担保しつつ、AI時代に秩序、可視性、ガバナンスを提供する」と説明する。

他社ベンダーのAIコーディングエージェントを直接統合することに加え、複数のAIエージェントの作業を単一画面で可視化・制御・承認できる「Control Plane」のほか、CopilotやSlack、Visual Studio Code、Jiraなどとも連携が可能。

また、エージェントやモデル全体にわたるAIポリシーの管理や監査記録、アクセスコントロールを可能とする「Copilot Metrics Dashboard」、AIによるコード品質をレビューする「GitHub Code Quality」は開発者とリアルタイム連携し、コードが最初から信頼性と保守性を担保できるようにしているという。

  • 「Agent HQ」の概要

    「Agent HQ」の概要

一方、日本におけるAIを活用した開発とソフトウェア提供を加速するために、企業向けの大規模開発を支援するクラウドベースのソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub Enterprise Cloud」で、データレジデンシー機能の提供を2026年1月から開始する。

ネイピア氏は「AIとクラウドが併用された場合の効果は大きく、クラウド導入はモダナイゼーションの鍵であり、AI活用と効率化を加速する。多くの日本における組織はクラウドの導入意欲は高いが、複雑な規制や老朽化したレガシーシステムが足かせになり、遅々として進んでいない」との見立てだ。

こうしたことから、データレジデンシー機能を提供することで、クラウドの拡張性とコードやリポジトリデータの保管を制御するといった柔軟性を両立することができるという。業界を問わず、日本企業のモダナイゼーションの加速を支援していく考えを同氏は示していた。

  • 来年1月から「GitHub Enterprise Cloud」でデータレジデンシー機能を提供するという

    来年1月から「GitHub Enterprise Cloud」でデータレジデンシー機能を提供するという

NTTドコモにおけるGitHubとGitHub Copilotの導入事例

終盤には、NTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部 クラウドソリューション担当 担当部長 博士(学術)の森谷優貴氏がGitHubおよびGitHub Copilotの導入事例を紹介した。

  • NTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部 クラウドソリューション担当 担当部長 博士(学術)の森谷優貴氏

    NTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部 クラウドソリューション担当 担当部長 博士(学術)の森谷優貴氏

同氏は、NTTドコモにおいてCCoE(Centre of Excellence)を率いており、さまざまなパブリッククラウドを扱っているほか、各種SaaS(Software as a Service)やツールなどが含まれる「共通基盤」を持つ。自らクラウドの管理や利用を一元的に行いながら、社内でクラウド利用を推進するためのアーキテクチャやセキュリティ、コスト削減なども含めて管理している。

  • NTTドコモにおけるCCoEの業務

    NTTドコモにおけるCCoEの業務

同社グループのGitHubの管理・運用方針は、GitHub Enterprise Cloudを利用して可能な限り、共用Organizationにまとめることだ。サイロ化を解消しつつ、協創を最大化させてガバナンスに一貫性を持たせている。

  • NTTドコモにおけるGitHubの管理・運用方針

    NTTドコモにおけるGitHubの管理・運用方針

そのメリットについて、森谷氏は「Organizationの中にあるリポジトリやソースコードを互いに確認できることから、内部のリポジトリは組織で使うことが可能なため、例えば利用者は他の人のコードやリソースを把握することで車輪の再発明を防止できる。加えて、組織・プロジェクトを超えたコラボレーションや知見が共有できる。管理者はセキュリティポリシーを統一して一貫したガバナンスを実現し、管理・運用の一元化、自動化により運用コストの削減が図れる」と説明した。

現時点におけるGitHubの管理・運用状況としては、特別な理由がない限り共用Organizationを利用し、リポジトリは基本的にインターナルを推奨、機密情報を扱う場合はプライベートも利用可能としとえり、パブリックリポジトリは利用を禁止している。また、特殊な要件対応で個別Organizationも小規模に利用し、共有Organizationには適用できない特別な制限、もしくは解放していない機能の利用、特別GitHub Appsの利用に限っている。

同社は2021年1月からGitHub Enterprise Cloudを利用しており、11月17日時点の利用者数は6334人、63.4%がドコモグループ社員・協働者となっている。共用Organizationの利用者数は5221人でリポジトリ数が5275、個別Organizationは6つ、リポジトリ数は532となる。

  • NTTドコモにおけるGitHubの利用状況

    NTTドコモにおけるGitHubの利用状況

GitHub Copilotに関しては2023年3月からGitHub Copilot Businessを利用し、利用者数は11月17日時点で3674人、利用開始当初から子会社でも利用を可能としている。

  • NTTドコモにおけるGitHub Copilotの利用状況

    NTTドコモにおけるGitHub Copilotの利用状況

森谷氏は「休日以外では毎日1000人ほどのユーザーがアクティブに使っている。AskモードとAgentモードを利用し、特にAgentモードが最近では利用が拡大しており、直近1カ月で1日あたり3万件程度のコード提案のうち25%を採用している状況だ。利用モデルは全体ではAnthropicの『Cloude Sonnet 4』が多いが、Askモードでは『GPT-4.1』の利用が多い」と現状を説く。

  • コードの提案のうち25%程度を採用しているという

    コードの提案のうち25%程度を採用しているという

GitHubの利用最適化に向けて、いくつかの施策にも取り組んでいる。1つはライセンスの無駄をなくすため一定期間利用がないユーザーを削除している。毎月休眠ユーザー一覧を取得し、APIでGitHub Copilotのアクティブ履歴を取得し、Copilotのみの利用者を削除対象から除外するとともに、過去3カ月間で両サービスの利用がないユーザーを削除対象としてリスト化し、月単位で自動削除を行っている。

  • GitHubの利用最適化に向けたユーザー管理

    GitHubの利用最適化に向けたユーザー管理

また、全員の利用状況をダッシュボードで公開し、ユーザーや管理職は随時確認することが可能になっていることに加え、問い合わせをZendeskに集約してSlackも併用しながらグループ内にチケットを公開。

さらに、繰り返し実施する処理はAPなどを積極的に活用して可能な限り自動化し、最新技術の利用とガバナンス・セキュリティの両立としてプレビュー機能は原則的に解放せずにMCP(Model Context Protocol)の利用を制限している。加えて、利用者間の情報共有やコミュニティ活性化、GitHubへの機能改善要望などを随時実施しているという。

森谷氏は「当社としてはGitHub、GitHub Copilotいずれも継続的に利用が増加している状況であり、今後も活用していく。特にCopilotはAgent HQも活用しており、今後も機能が拡充されていくことを期待している」と述べ、説明を結んだ。