ソフトバンクは、成層圏通信プラットフォーム(HAPS)の電波伝搬に関する2件の国際標準化を達成したと11月18日に発表。この成果を活用して、5Gなどのネットワーク設計の最適化や通信品質の向上を図り、HAPSや衛星通信などの非地上系ネットワークの実用化に向けた取り組みを進めるとしている。
5月から6月にかけて開催された、国際電気通信連合の無線通信部門(ITU-R)の会議を経て達成したもの。
ソフトバンクなどがITU-Rに提供した電波透過特性の測定手法と測定データにより、窓ガラスをはじめとする建物の材質が電波に与える影響をまとめた新たな報告書として、ITU-R報告P.2554-0が6月に発行された。
また、HAPSによる通信ネットワークの設計に必要な「システムデザイン用電波伝搬推定法」について、HAPSなどで想定される高仰角のマルチパス環境における移動局側の電波伝搬特性を新たに解明し、既存の勧告の追加・改訂版として、ITU-R勧告P.1409-4が9月に発行された。
ITUは情報通信技術のための専門機関で、その部門のひとつである無線通信部門(ITU-R)は、無線通信に関する標準化や勧告を行う機関にあたる。
建物の材質ごとの電波透過特性を解明(ITU-R報告P.2554-0)
5Gなどのネットワーク設計を効率化するためには、高精度な「電波伝搬推定法」が必要となる。ソフトバンクはこれまで、地上の基地局やHAPS(High Altitude Platform Station)などの屋外から放射された電波が、スマートフォンなど屋内の移動局に到達するまでの電波伝搬特性に着目した研究を行ってきた。この研究により、近代的な建物に使用される高性能な断熱効果を持つ複層ガラスなどの窓ガラスによる電波の透過損失の影響が大きいことを解明した。
ソフトバンクは今回、さまざまな種類の窓ガラスにおける電波透過特性の測定手法と、その測定データをITU-Rに提供。屋内侵入による電波伝搬損失を高精度に推定するための報告書を発行することを提案した。この提案と、その他複数の国による測定結果を基に、建物の材質が電波に与える影響を示す測定データをまとめたITU-R報告P.2554-0が新たに発行された。
同報告書では、窓ガラスをはじめ、木材や石こうボードなどの材質におけるさまざまな測定データを収録している。ソフトバンクでは「屋外と屋内間の電波伝搬損失の推定精度が向上し、都市環境におけるネットワーク設計の効率化や、屋内外をまたぐ通信サービスの品質向上に大きく貢献する」としている。
高仰角のマルチパス環境における移動局側の電波伝搬特性を解明(ITU-R勧告P.1409-4)
HAPSを活用した通信サービスを提供するには、さまざまな環境を想定し、成層圏から地上に放射する電波が届く範囲などを正確に推定する必要がある。
その推定に必要な手法が、HAPS向けの「電波伝搬推定法」だ。この推定法は主に、隣国同士や異なる無線通信システム間の電波干渉を調整するために必要な「干渉検討用電波伝搬推定法」と、HAPSによる通信ネットワークの設計でHAPSの機体数や配置、アンテナ設計などを詳細に検討するために必要な「システムデザイン用電波伝搬推定法」で構成されている。
これまでにソフトバンクは、前者の国際標準化を2021年に達成。また後者に関連して、HAPSから移動局に届く電波の方向と強度などを推定するモデルの国際標準化を2023年に達成している。
HAPSと移動局間の通信において、都市や郊外の環境では、HAPSから放射された電波は建物によって反射・回折・散乱するため、経路長の異なるさまざまなルートを通って移動局へ到達する(マルチパス環境)。
ソフトバンクは今回新たに電波伝搬測定を実施し、HAPSなどで想定される高仰角のマルチパス環境において、移動局に到達する電波の経路長の差による強度の特性を解明。ITU-Rへ提案を行った。この提案が既存の「システムデザイン用電波伝搬推定法」に追加・改訂され、ITU-R勧告P.1409-4として発行された。
ソフトバンクでは「HAPSから移動局へ届く電波の電波伝搬特性をすべて解明し、標準化を達成したことになる」と説明。このモデルは、今後HAPSで5Gなどの通信を行うときに、効率的なネットワーク設計とアンテナ設計に活用されるほか、システムデザイン用電波伝搬推定法の一部である「人体遮へい損失モデル」で考慮される、都市・郊外におけるマルチパス環境の推定も可能になるとしている。


