楽天グループは11月13日、2025年度第3四半期の決算を発表しオンライン説明会を開いた。連結業績での売上収益は前年同期比10.9%増の6286億円を計上し、第3四半期として過去最高額を記録した。連結での親会社の所有者に帰属する四半期利益は、前年同期の1503億円からわずかに赤字が拡大し1512億円の損失となった。
インターネットサービスセグメントの売上収益は同11.1%増の3496億円、フィンテックセグメントは同20.3%増の2505億円、モバイルセグメントは同12.0%増の1187億円と、全セグメントで2桁の増収を達成している。
特にフィンテックセグメントとモバイルセグメントが好調だったほか、インターネットサービスセグメントは2025年10月のふるさと納税ポイント付与ルールの変更に伴う駆け込み需要の影響を受け、連結Non-GAAP営業利益は同212.8%増の386億円となった。
IFRS(International Financial Reporting Standards:国際財務報告基準)営業利益も同1379.7%増の80億円と改善。第3四半期の連結累計(1月~9月)において、IFRS営業利益が2019年第3四半期以来、6年ぶりに黒字を達成した。
楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏は6年ぶりとなる営業利益の黒字化について、「ようやっとここまで来たと思っている。携帯事業の赤字縮小と、それを起因とするさまざまなシナジーの創出に加え、ECや金融も全体的に好調だった。AIを活用したコスト削減や外部広告の効率性改善などの工夫も大きな要因の一つ」と振り返った。
インターネットサービスはふるさと納税の駆け込み需要で成長
インターネットサービスセグメントにおける売上収益は前年同期比11.1%増の3496億円、Non-GAAP営業利益は同14.5%増の242億円で増収増益。楽天市場と楽天トラベルが増収要因となったことに加え、物流事業の損失改善も増益に貢献したという。
国内EC事業は10月のふるさと納税のポイント付与ルール改定に伴う駆け込み需要があり、14.5%増と大きく成長した。このため、第4四半期は反動減を見込むという。楽天トラベルは大阪・関西万博による国内需要の増加やインバウンド需要が影響した。
国内ECだけの売上収益は同10.0%増の2655億円、Non-GAAP営業利益は33.6%増の339億円となった。今後はモバイル事業とのシナジー拡大やAIの活用による成長戦略で、流通総額の成長と利益拡大を目指す。
インターナショナル部門では、Rakuten Koboの端末やコンテンツ販売、Rakuten Viberの通信・広告売上が増収をけん引し、さらには海外広告事業の損失改善も利益拡大に寄与している。
インターナショナル部門の売上収益は同5.4%増の4億9000万米ドル、Non-GAAP営業利益は同78.8%増の420万米ドルとなった。Rakuten Rewardsなどオープンコマース事業は、小売企業の慎重な姿勢もあり売上が横ばいだった。一方で、海外広告事業におけるコスト構造最適化により損失が改善し増益につながっている。
フィンテックは楽天銀行など複数事業が過去最高益を達成
フィンテックセグメントにおける売上収益は前年同期比20.3%増の2505億円、Non-GAAP営業利益は同37.9%増の552億円で増収増益を記録した。
楽天カードのショッピング取扱高は同11.7%増の6.7兆円に。顧客基盤の拡大と客単価の上昇、ふるさと納税の需要増によりショッピング取扱高が大幅に増加した。また、リボ払いの手数料率の引き上げも実施している。
楽天銀行は口座獲得推進の施策が奏功し、口座数が同6.9%増の1732万口座に。メイン口座化も進み預金残高は同10.1%増の12.2兆円となっている。
楽天証券の総合口座数は同10.4%増の1286万口座に増加した。受入手数料と金融収益の伸長により、営業収益は同24.1%増の417億円、営業利益は同52.1%増の130億円と、四半期として過去最高額を達成した。
ペイメントは「楽天ペイ」アプリのユーザー数増加に伴い、取扱高が拡大。これと同時に低水準のコストを維持したことでNon-GAAP営業利益が同78.8%増の26億円まで増加した。通期での営業黒字を見込む。
モバイルは通期黒字に向けて順調な進捗
モバイルセグメントにおける売上収益は前年同期比12.0%増の1187億円だった。楽天モバイルの契約回線数の増加と、正味ARPU(Average Revenue Per User:ユーザー当たりの平均売上高)の増加、楽天シンフォニーの売上増が収益増に貢献した。Non-GAAP営業損失は101億円改善し386億円の損失で着地。
楽天モバイル単体での売上収益は同31.2%増の952億円、Non-GAAP営業損失は前年同期から134億円改善し372億円を計上。EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization:税引前利益に特別損益、支払利息、減価償却費を加えた利益)は175億円改善し78億円の黒字化。2025年度の通期EBITDAの黒字化に向けて順調に進捗したという。
楽天モバイルの契約回線数は9月末時点で933万回線まで増加し、前四半期から40万回線の純増を記録。11月7日には950万回線に到達したとのことだ。インフレが継続する中で楽天モバイルの相対的に安価な価格帯から、解約率が減少傾向にある。正味ARPUは前年同期比で110円上昇し2471円と、ユーザーのデータ利用量増加が後押しした。
三木谷氏は「B to Cは引き続き良いモメンタムを築いている。これをさらに加速させるとともに、B to Bに関しても積み上がってきているパイプラインを年末に向け実績化し、今年中に1000万回線を突破できるよう取り組む」とコメントした。







