Salesforceは今年10月に米国サンフランシスコで開催した年次イベント「Dreamforce 2025」で、AIエージェントプラットフォームの最新版「Agentforce 360」を発表した。そのほか、OpenAI、Anthropic、Google Cloudとそれぞれ提携拡大を発表し、AIエコシステムの戦略も前進させた。
会場で、Agentforceのプロダクトリーダーを務めるNancy Xu氏(AIとAgentforce担当バイスプレジデント)に話を聞いた。
Agentforce 360:1年を経てプラットフォームへ
Salesforceが「Agentforce」を発表したのはわずか1年前のDreamforceでのことだ。あれから1年1カ月、今年のDreamforceでは5回目のリリースとして「Agentforce 360」を発表した。バージョン番号でいうと、2024年10月にリリースされた初回のAgentforce、同年12月のバージョン2、2025年3月の2dx、同年6月の3に続くもので、バージョン番号として4がついてもおかしくない。
なぜ「360」という名称をつけたのか。Xu氏はその理由を次のように説明する。
「Agentforceは、Salesforceの全製品の基盤として顧客を支えるプラットフォームになった。“360”を冠したのは、もはや単なるSalesforce内の垂直ソリューションではなく基盤プラットフォームとなったことを示すためと言える」
そのAgentforce 360では、 Agentforce Voiceとして音声エージェントを構築できるようになった。例えば、顧客サービスでは、顧客からの問い合わせに対しテキストに加えて音声での対応も自動化できる。また、非構造化データからビジネスのコンテキスト(文脈)を理解する「Intelligent Context」なども加わった。
オープンエコシステム戦略:OpenAI、Google Cloud、Anthropicとの提携
会期中、OpenAI、Anthropic、Google Cloudなどとの提携が発表された。OpenAIとは、OpenAIのChatGPT内でAgentforce 360プラットフォームへのアクセスが可能となる。これにより、ChatGPTから営業記録を照会したり、Tableauを使って可視化したりといったことが可能になる。OpenAIのチェックアウト機能「Instant Checkout」と「Agentforce Commerce」(旧「Salesforce Commerce Cloud」)との連携も実現していく。
Anthropicとは、金融やヘルスケアといった規制が厳しい業界に対し、インターネットを経由することなくAgentforceで生成AI「Claude」を利用できるようにするといったことで提携、Google CloudとはAgentforceの推論エンジン「Atlas」にGeminiを活用できるようにする。
Xu氏はAgentforceにおける提携について、「主要なモデルプロバイダとモデルレイヤーで提携し、Agentforce内で使用できるようにする」と述べ、ビジネスモデルについては次のように説明した。
「最終的にSalesforceにとって重要なことは、どのモデルを持ち込むかではなく、顧客が成功すること。エージェントを通じて(提携するベンダーの)モデルが呼び出されるときに、(Salesforceは)消費を通じて収益を得ることになる。そのため、独自のモデルを持ち込みたい場合でも、ファインチューニングされたSalesforceのモデルを使用したい場合でも、顧客が用途に最適なモデルを使用し、それがわれわれのエージェントを通じて行われることを確実にしたい」
このような「オープンエコシステム」を構築するにあたって、Xu氏のチームでは各モデルに対して内部評価とベンチマークを実施し、顧客のユースケースに最適なモデルをアドバイスしているという。
ユーザーインタフェースにも影響するOpenAIとの提携については、「Agentforceエージェントをさまざまなものと接続し、さまざまなインタフェースからアクセスできることを可能にする」との狙いがあるという。「人々がSlackや(Salesforceの)CRMで作業していない場合でも、他のすべての接続をサポートしたい」とXu氏。
これは、顧客にとってエージェントを使用できる場所が増えることを意味する。すでにWhatsApp、SMS、音声、Slackなどをサポートしており、「Salesforceエージェントを1回構築すれば、これらのチャネルからアクセスができる」とXu氏。
そして、「オーケストレーションのMuleSoft Fabricはエージェント間通信プロトコルのA2A(Agent2Agent)もサポートしている。そのため、Agentforceを使ってエージェントを構築するとさまざまなものと通信したり、モニタリングしたりも可能。特定のエージェントが別のエージェントを呼び出す場合、どのぐらい消費しているのかが分かる」と、Xu氏は付け加えた。
AIエージェントは今後、ワークフローから目的関数へ
今後のエージェントの進化について、Xu氏は「目的関数を定義することでエージェントが構築される世界」を展望する。
つまり、「このエージェントの目標は、6カ月以内に顧客満足度スコアを5%向上させること」と目的を伝えると、エージェントが人々の行動をシミュレーションしながら目的に到達するには何をどう改善すべきかを自己学習して構築されるという。
これは、現在のワークフローベースからの根本的な変化となり、「今後12カ月もすれば、研究が出てくるだろう。実現すればパワフルになる」と、Xu氏は語っていた。
