富士通は11月12日、「AI倫理かるた」を使用した高校生向けのワークショップをFujitsu Uvance Kawasaki Towerで実施した。ワークショップには清泉女学院の高校1~2年の有志生徒13人が参加した。

  • ワークショップに参加した清泉女学院の生徒

    ワークショップに参加した清泉女学院の生徒

富士通の「AI倫理かるた」で遊んでみよう

AIの高度化が進み社会実装が現実的になる中、AIによる差別的な表現やハルシネーション(幻覚)など、倫理的な問題も顕在化しつつある。人権を侵害するような悪意のあるAI利用に対して、規制の強化を求める動きも出始めている。

EUで「EU AI Act」(EU AI規制法)が施行されたほか、日本国内でも「AI推進法」(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が施行されるなど、AIガバナンスやリスクの対策といったAI倫理の観点を踏まえた活用が求められている。

こうした状況の中で、富士通のAI倫理室は誰もが楽しみながらAI倫理を学べるコンテンツとして、「AI倫理かるた」を作成した。「AI倫理かるた」は内閣府が発行した「人間中心のAI社会原則」の「基本原則」や、総務省および経済産業省が発行したAIガバナンス指針「AI事業者ガイドライン」の「共通の指針」に準拠する。

また、客観性のあるガイドラインを採用しただけでなく、リスクの解説ばかりでAIのネガティブなイメージを助長しないよう、対策の例やガバナンス構築のヒントとなる情報など、ポジティブな取り組みを支援する情報も記載している。

  • AI倫理かるた

    AI倫理かるた

「AI倫理かるた」は読み札と絵札がそれぞれ46枚のセットで構成される。絵札の裏には解説テキストが記載されており、AI倫理について学べる。

例えば「う」の読み札「うのみにすると間違いだらけ!?」では、次のような解説が記載される。

AIは便利なツールですが、必ずしも正確な回答を出すとは限りません。例えば生成AIは、事実と異なる情報をあたかも真実かのように生成する「ハルシネーション(幻覚)」を起こす可能性があります。技術的な対策が進められていますが、完全に抑制できるわけではありません。生成AIを活用する際には、ハルシネーションが起こる可能性を常に考慮する必要があります。

一般消費者の対策例
・正誤の判断が困難な「未知の情報」について、生成AIに質問しないように気を付けましょう。
・生成AIだけに頼らず他の情報媒体も用い、情報の真偽についてダブルチェックしましょう。

  • 「う」の絵札の裏

    「う」の絵札の裏

かるたの解説はAI利用企業向けと、一般消費者向けに分けられる。解説の右下にオフィスビルのマークがある札は企業向け、人間のマークがある札は消費者向けだ。どちらのマークも記載されている札もある。

  • 右下のマークで対象者がわずかに異なる

    右下のマークで対象者がわずかに異なる

清泉女学院のワークショップに密着取材

ここからは、清泉女学院の高校1~2年生が参加したワークショップの様子を紹介する。ワークショップには同学院のAI倫理会議実行委員会から、有志生徒が参加。3~4人のグループに分かれ、かるたとAI倫理に関するディスカッションに挑戦した。

  • 「AI倫理かるた」ワークショップ

    「AI倫理かるた」ワークショップ

まずはかるたのパートから。講師を務めた富士通AI倫理室の社員が読み札を読み上げ、生徒がそれに対応する絵札を取る。

  • 札を取り合う生徒たち

    札を取り合う生徒たち

札の読み上げを何度か繰り返した後に、講師がAI倫理に関する解説パートとして、事例やユースケースを紹介する。これにより、ただ単に札を取って枚数を競うだけでなく、AI倫理に関する知見を深められる。

  • 生徒が取った札の解説

    生徒が取った札の解説

  • 札の内容に関連する事例の紹介

    札の内容に関連する事例の紹介

さらに、AI倫理に関するグループディスカッションのパートも設けられる。ここでは、「社会にはどんなバイアスがあると思いますか?思いついたものをいくつか挙げてみましょう」といったように、グループ内で議論が行われる。

  • ディスカッション中の生徒

    ディスカッション中の生徒

  • ディスカッション中の生徒

ワークショップに参加した学生の感想は?

ワークショップに参加した学生は、「以前はAIに対し人を怠けさせるというネガティブなイメージを持っていたが、最近は授業の中でも論文要約やアイデア出しなどに活用している。今日のワークショップに参加して、AIには人間のバイアスや倫理観が関係していることを実感した。改めて、自分自身の倫理観や人間の文化の違いなどに気を付けようと思う機会になった。(ワークショップ会場となった)富士通のオフィスはカジュアルな雰囲気で、将来自分が企業に務めるときの働き方もイメージできた」と、話していた。

また、違う学生は「企業がどのようなアプローチでAIを開発しているのか気になっていた。AI倫理の問題をかるたとして、ゲーム感覚で気軽に学べたので有意義な時間となった。途中に解説やディスカッションの時間があったので、どのような観点でAIについて考えるべきか話せて良かった」とコメントした。

  • 白熱の戦いとなった

    白熱の戦いとなった