ソフトバンクは、積水化学工業と共同で、5Gミリ波の通信エリア拡大や補完を電源なしで実現する“透明フィルム”の効果を検証。新たな電波制御技術としての有効性を確認したことを11月12日に発表した。オフィスや駅構内、イベント会場などで活用を見込んでいる。
現行の5Gや、将来のBeyond 5G/6G(第6世代移動通信システム)に向けた高速・大容量通信のニーズが高まっているが、ミリ波は遮へい物の影響を受けやすく、都市部や屋内では圏外や弱電エリアが発生しやすい。また、オフィスビルなどでは、景観への配慮や設備スペースの制約から、追加の分配アンテナや中継器の設置は難しい。
こうした課題に対し、ソフトバンクは積水化学が開発した「メタサーフェス反射フィルム」を活用して、5Gミリ波の電波改善の効果検証を行った。
このフィルムは電源を必要としないパッシブ構造で、特殊な人工周期構造(メタマテリアル)によって電波の反射位相を制御し、反射方向を自在に変えられるという特徴がある。
従来の金属板などの反射体は「入射角=反射角」という正反射の法則に従う。一方、メタサーフェス反射フィルムは微細なパターン設計により、電波を任意の方向へ曲げられるため、電波の死角となるエリアにも効率的に電波を届けられるという。
透明で軽量・薄型かつ折り曲げられる構造も特徴で、壁面やガラス、柱などにも設置しやすく、通信品質の向上と景観への配慮を両立できるとしている。
“透明フィルム”でオフィスの圏外・弱電エリア改善を確認
メタサーフェス反射フィルムを使った今回の効果検証は、ソフトバンクの本社で実施。正反射するフィルムと、偏反射するフィルムを、オフィス内の壁面にあるポスターフレームに張り付けて設置することで、フィルムの有無による5Gミリ波(28GHz帯)の受信電力と通信速度の変化を検証した。
その結果、圏外や弱電となっていたエリアにおいて電波強度が向上し、通信品質が向上することを確認。さらに、基地局からの電波を効率的に反射させるため、正反射フィルムと偏反射フィルムを組み合わせて廊下の壁面に設置したところ、多段反射によって電波を効率的に誘導できることも確認した。従来はミリ波の電波が届きにくかった、廊下の奥にあるリフレッシュルーム内に同様の構成を適用したところ、空間全体をエリア化できることも分かった。
これらの結果から、正反射フィルムと偏反射フィルムを適切に組み合わせることで、景観を損なわずに柔軟に電波反射経路を設計でき、オフィスなどの屋内環境におけるミリ波の通信エリアの拡大に有効であることを実証した。
この検証結果を踏まえ、ソフトバンクではオフィス環境に加えて、駅構内やイベント会場、スマートファクトリー、物流倉庫など、さまざまな環境でメタサーフェス反射フィルムを活用することも視野に入れ、快適な通信品質と景観への配慮を両立する通信ネットワークの実現をめざすとしている。



