エビデント・インスペクション・テクノロジーズ・ジャパンは11月5日、ハイエンド工業用ビデオスコープ「IPLEX One」ならびに非破壊検査機器としてフェーズドアレイ探傷器「OmniScan X4 128:128PR」、溶接部検査用スキャナー「HSMT-Flex」の3製品を発表した。
オリンパスの科学事業を継承
エビデント・インスペクション・テクノロジーズ・ジャパンは2025年7月1日付で設立された検査機器メーカー。もともとの出自はオリンパスの科学機器事業部であったが、オリンパスが2022年4月に科学事業を完全子会社となるエビデントとして分社。その後、エビデントはベインキャピタルに買収され、2025年に非破壊検査・内視鏡検査・分析機器ソリューションを手掛ける検査技術部門について鉄道貨物輸送技術会社であるWabtecが買収し、当該部門がエビデント・インスペクション・テクノロジーズ・ジャパンとして独立したという経緯がある。
今回の3製品は、エビデント・インスペクション・テクノロジーズ・ジャパンとなってから初めての製品という位置づけとなる。
9年ぶりのフラッグシップモデルとなる「IPLEX One」
新製品の1つ目となるIPLEX Oneは同社の工業用ビデオスコープ(内視鏡)のフラッグシップモデルという位置づけ。これまでのフラッグシップモデルは「IPLEX NX」の後継に位置づけされるが、ハイエンドだけでなくミドルレンジまで対象範囲に含むモデルとなっている。
Oneという名称を付けた背景として、同社グローバルプロダクトマネジメント RVIプロダクトリーダーの藤巻晋也氏は、「パソコンなどの第3の端末を用いなくても1台で計画からデータ管理、レポート作成まで対応できること、補助照明などなくても1台で検査を完結できること、顧客にもっとも支持されてもらいたいという思いも込めたため」と説明。ターゲット市場については、「航空/宇宙/防衛」、「自動車/重工業/製造市場」、「発電/石油化学/検査市場」としており、それぞれで求められる高水準の検査能力、高頻度検査に耐えうる耐久性、過酷な環境でも利用可能な対環境性などを盛り込んだとする。
作業者の手間を可能な限り省く工夫を搭載
IPLEX Oneの最大の特徴は、作業者が現場で観察、計測、診断を行う際の手間を減らす工夫をふんだんに盛り込んだ点。例えば、スコープの先端に姿勢センサを搭載することで、観察している重力方向をモニタ上に表示し、スコープ先端の位置がどのようになっているのかを視覚的に把握しやすくしたとする。
また、従来製品では、検査の目的や用途に応じてレンズの交換が必要であったが、その際には一度、観察ポイントから手元までスコープを引き抜いて、交換作業を行い、再び観察ポイントに戻すという手間が生じ、観察ポイントを見失うといった問題も生じていた。IPLEX Oneでは、こうした課題を解決するべく、直径4mmのレンズの内側に超小型アクチュエーターを搭載することで、観察視野の切り替えが可能な独自技術「Swoptixマルチビュー」を採用。例えば「前方/側方観察用レンズ」では、単一のレンズで前方と側方の観察を切り替えて行うことが可能としたほか、「近点/遠点観察用レンズ」では、観察距離を切り替えて、細かな状況から広いエリアでの観察まで柔軟に対応することを可能とした。さらに、3D計測にも対応するレンズも用意されており、広角の観察と高精度計測の両用も可能としたとする。
このほか、IPLEXシリーズのマルチフォームを踏襲しつつ、各ユニット間の高画質無線伝送を実現。通信プロトコルおよび制御使用の最適設計を図ることで、データの転送を有線接続と同等の遅延で行うことを可能としたとする。
フェーズドアレイを活用した新たな検査手法の探索に向けた探傷器
2つ目の超音波フェーズドアレイ超音波探傷器「OmniScan X4 128:128PR」は、従来のハイエンドフェーズドアレイ探傷器「OmniScan X4 64:128PR」の最大パルシング同時励振素子数(パルサー)が64chであったものを128chに増やした最上位モデルという位置づけ。これにより、ラボレベルのフォーカスの利いた鮮明な傷の描写を現場で行うことを可能としたとする。
製品コンセプトは「革新」(業界をリードする革新的な機能・性能)、「信頼」(現場で頼りになるタフさ、使用感)、「自在」(さまざまなニーズ、変化するニーズに対応する柔軟性)で、これらの3つのコンセプトが相乗効果を生み出すことで、顧客のニーズを満たしていくことを目指して開発が進められてきたという。
革新の部分は128chのパルサーへの対応となるが、信頼という面では、従来モデルと同じ重さ、大きさ、耐久性(重量5.9kg、IP65準拠)を維持しつつ、スキャナプリセットライブラリとして新モデル2機種を追加したほか、検査を効率化する周辺機器(スキャナー)の使用による高度な検査も簡単に短時間でセットアップすることを可能としたとする。また、自在という点では、オープンフォーマットに対応し、顧客側で決めた分析方法以外の手法でも解析できるようになったとする。同社のジャパンセールス NDTセールスディレクター NDT分野統括の窪内研之氏は「顧客は豊富なデータを保有しているが、課題解決のソリューションを開発するのは装置メーカーで、アライアンスや有償の解析ソフト、SDKなどを購入する必要があったが、この取り組みでそういった手間を解消することができるようになる」と説明する。
ちなみにターゲット市場としては、研究機関や製造業の研究開発部門、検査会社の用途開発部門としている。これは、まだ128chのパルサーを活用した検査が現場で存在していないためで、まずは用途の探索を進めてもらう段階であるためとしている。
なお、OmniScan X4 64:128PRを保有しているユーザーに対してはアップグレードパスが用意されており、差額分を支払うことでOmniScan X4 128:128PRへと更新することが可能だという(預かり対応)。
検査員1人でデータ取得を可能とするスキャナー
3つ目の溶接部検査用スキャナー「第三世代 HSMT-FLEXスキャナー」は、1回のスキャンで確実に高品質なデータ取得を検査員1名で可能にすることを目的に開発されたスキャナー。
経験の浅い検査員でも確実に自信をもってデータを取得できる仕組みを採用したとのことで、例えばレーザーポインターを内蔵することで、正確なスキャンのガイドを可能としたとするほか、センサーの水を介した密着を青色LEDで知らせたり、適切なスキャン速度を緑色のLEDで知らせたりする(超過時は赤色に変化)という。また、オプションのスマートフォン(スマホ)ホルダーとリモコンを活用することで、スマホに検査画像をミラーリングで表示することも可能であり、これにより手元で必要な情報をすべて確認できるようになるため、視線を行き来する必要がなくなり、従来2-3名が必要であった作業を1人で行うことを可能としたとする。
さらに、さまざまな周方向溶接部検査に柔軟に対応することを目的に、最大8つのプローブ(センサー)を用いて、1度のスキャンで必要なデータを取得することをできるようにしたほか、取り付けおよび調整もすべて工具不要で可能なスキャン中のがたつきを抑える新設計のプローブホルダーなども用意。加えて、現場の検査ニーズに対応することを目的に、最大350℃の表面温度の溶接部の連続検査も可能としたともする。
主なターゲット市場としては原子力発電プラントの圧力容器や配管、風力発電、LNGを中心とした造船分野としており、中でも原子力発電関連は、短時間で確実に検査を終わらせる必要があるため、特に需要が期待できるとしている。











