富士通は10月30日、2025年度第2四半期の決算を発表し記者説明会を開いた。連結合計の売上収益は前年同期比0.9%増の1兆5665億円、調整後営業利益は同83.6%増の1213億円、当期利益は富士通ゼネラルと新光電気の売却益を計上したことで、過去最高となる2620億円を記録した。
国内のDX・モダナイゼーションの需要は引き続き好調
富士通が成長ドライバーとしているサービスソリューションは、売上収益が前年同期比489億円(4.8%)増の1兆665億円、調整後営業利益は同309億円(34.8%)増の1196億円だった。国内を中心にDX(デジタルトランスフォーメーション)やモダナイゼーションの商談が伸長した。
増減の内訳は、増収効果による売上収益が188億円増加。また、開発プロセスの標準化や自動化によって、採算性を改善したことによる利益増が212億円だった。一方、Fujitsu Uvanceやセキュリティなどの投資を92億円拡大し、最終的に前年同期比11.2%増の1196億円で着地した。
サービスソリューションにおける国内の受注状況は、エンタープライズビジネス(産業・流通・小売)が前年同期比97%となった。流通業界が底堅く、製造業界が好調に推移したという。なお、前年受注した契約期間が複数年にわたる大型商談の影響を除くと、受注額は前年同期比104%とのことだ。
ファイナンスビジネス(金融・保険)は同101%。前年の第2四半期に金融機関向けの大型案件を受注しており、今期も引き続き高い水準で推移している。パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)は公共向けの更新案件を受注し、同108%。ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティ業界は公営競技向けのシステム更新案件を受注し、同108%となった。
代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏は「個々のお客様単位では経済状況変化に応じて凹凸があるものの、商談パイプラインの総量は全方位で拡大傾向が続いている。下期も着実な商談獲得を図るとともに、さらなる商談の拡大を進める」と説明した。
年間の売上計画である1兆8000億円に対し、上期実績は7952億円。下期の受注残高が6839億円であり、年間カバー率は82%。年間目標達成には新たに3208憶円の獲得が必要となる。なお、カバー率は前年の同時期と同水準であり、進捗は堅調とのことだ。磯部氏は商談パイプラインの状況から、「計画達成の確度は十分」だとしている。
Uvance・モダナイゼーションともに計画に対し順調な売上
サービスソリューションセグメントを支える大きな柱の一つであるFujitsu Uvanceは、受注高が前年同期比43%増の3186億円、売上収益は同55%増の3110億円だった。その内訳は、Vertical(社会課題を解決するクロスインダストリーの4分野)が94%増の1226億円、Horizontal(クロスインダストリーを支える3つのテクノロジー基盤)が37%増の1883億円。
サービスソリューション全体に占めるFujitsu Uvanceの売上構成比は、前年の20%から29%まで拡大。2025年度の売上計画は7000億円であり、上期の進捗率は44%ほどと半分を割り込んだが、これは年間の計画を上回っているとのことだ。
もう一つの柱であるモダナイゼーションは、受注高が同3%増の1541億円、売上収益が同38%増の1613憶円となった。前年のパブリック系の大型商談獲得の影響を受けて伸長率が低く見えるが、高い水準で推移していることを示しており、計画に対しては順調だという。
サービスソリューション全体では、前年に引き続き採算性改善の効果が見られている。デリバリーの強化に向けて注力するのは業務の自動化と標準化で、開発工程への生成AI活用なども進む。具体的には、国内のエンジニア3万人と協力会社に生成AIツールを提供したほか、社内向けに工程別にユースケースを公開した。約2万件のプロジェクトのうち約3割で生成AIが活用されている。
「生成AI活用は、実際には各プロジェクトの一部の工程にとどまっており、効果は限定的。まずは適用のすそ野を拡大し、それからより広範囲の工程でより深く活用することを目指す。年度末までに全プロジェクトの50~60%において、全工程のうち一部であっても生成AIを活用することを目指している」(磯部氏)
Windows 10サポート終了に伴いユビキタスソリューションが需要増
ハードウェアソリューションの売上収益は、前年同期比318億円(7.0%)減の4248憶円となった。他社製ソフトウェアの売上計上基準を総額から純額へと変更した影響を除けば、1.2%の減収だ。調整後営業利益は同94億円(302.1%)増の125億円。
システムプロダクトの国内の売上は前年並だったが、海外では売上基準変更の影響に加え、アジアで小規模事業や低採算事業を縮小したことで減収となった。ネットワークプロダクトにおいては売上が782億円と低水準ながら、基地局と光伝送装置がそれぞれ増収となった。
ユビキタスソリューションの売上収益は、同45億円(4.2%)増の1131億円、調整後営業利益率は同103億円(91.2%)増の217億円となった。Windows 10のサポート終了に伴う需要増が成長を後押しした。また、為替影響による部材コストの低下に加え、採算重視の販売へのシフトも効果が出た。
ブレインパッドを買収しデータ・AI事業を加速
富士通は同日、データサイエンス事業やデジタルマーケティング事業を行うブレインパッドと業務提携を含む経営統合契約を締結し、株式取得を目指した公開買付けを10月31日より開始することを発表した。
ブレインパッドは、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をパーパスとして掲げ、企業のデータ・AIの利活用促進やデータ活用に関する組織と人材の内製化を推進している。
データサイエンスやAIアルゴリズム開発を中心とした専門人材によるプロフェッショナルサービス事業の他、「Rtoaster(アールトースター)」や「Ligla(リグラ)」といったデジタルマーケティング領域を中心としたプロダクト事業、データ活用人材の育成事業の三位一体の特有のビジネスモデルを展開する。
富士通は日本国内におけるData&AI事業を強化するため、ブレインパッドを買収する。国内の製造、金融、医療、防衛などのミッションクリティカルなIT・デジタルインフラ市場において、オールインワンオペレーションプラットフォーム「Fujitsu Data Intelligence PaaS」をはじめとするオファリングとのシナジーを創出することで、Data&AI事業の展開を加速する。
公開買付けが成立した場合には、ブレインパッドは経営上の独立性とブランドや人材を維持しつつ、富士通グループのData&AI領域における中核ブランドの一つとして、事業の拡大を推進する。なお、ブレインパッドの既存顧客については、これまで通りの支援体制を継続して受けられる。








