
高市早苗政権の目玉人事が片山さつき財務相だ。旧大蔵省出身で、高市政権下で一時は自民党税制調査会長への起用案も取り沙汰されたが、政権ナンバー2の財務相での起用となった。
財務相ポストは長年、財政規律重視の〝牙城〟とされ、安倍晋三元首相の盟友といわれた麻生太郎氏(現・自民党副総裁)でさえ、消費税増税の延期を巡って安倍氏と対立した。片山氏は積極財政を掲げる高市首相の方針を実現しながら財政への目配せも維持できるか、手腕が問われることになる。
片山 さつき・財務相
10月21日朝、片山氏の財務相就任が判明すると、財務省では「大変なことになった」「政策がわかっているから歓迎」(幹部)など、様々な声が聞かれた。省内では悲喜こもごもの状態だが、主要幹部に共通するのは「先輩・後輩として片山氏とはなんだかんだ付き合いがある」(主計局幹部)ため、財務省側は片山氏の思考や人脈を熟知し、同氏は省の政策実現に向けた手法に精通している点だ。
一方、〝アウェー〟な雰囲気が漂う幹部を抱える片山氏も難題に直面する可能性がある。
自民が連立合意文書を交わした日本維新の会は社会保険料の引き下げや飲食料品の消費税2年間ゼロの実現を求めているが、高市首相は消費税減税を封印し、社会保険料の引き上げにつながりかねない医療・介護従事者の賃上げを公約するなど、両党の立ち位置は異なる。
片山氏が2026年度税制改正や予算案編成作業の過程で、財源確保を巡り財務省と首相官邸とのはざまに立たされるおそれもある。財務省幹部は片山氏について「自分の考えで猪突猛進するこれまでのやり方は通用しない」と明言する。財務省職員一同、まずはお手並み拝見、ということか。
