ソフトバンクは、NVIDIA製のGPUを活用して無線信号処理を完全にソフトウェアで実行する「AI-RAN」を構築。これを活用し、Massive MIMOに必要な無線信号処理を実現することで、ダウンリンクでの16レイヤー MU-MIMOの屋外実証に成功と10月29日に発表した。

  • ソフトバンクが無線信号処理をGPUで実現するにあたり、米国で行った屋外実証の様子

    ソフトバンクが無線信号処理をGPUで実現するにあたり、米国で行った屋外実証の様子

米カリフォルニア州サンタクララにあるNVIDIA本社で展開している、AI-RANのプロダクト「AITRAS」(アイトラス)において実現したもの。ソフトバンクは柔軟かつ持続可能な次世代ネットワークの実現に向け、AITRASの実用化に向けた取り組みを加速しており、2026年以降にソフトバンクの商用ネットワークへ導入することをめざしている。

従来の無線信号処理は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)といった専用ハードウェアで実行されることが一般的だった。今回の屋外実証では、CUDAを使って高速化したNVIDIA GPUの大規模並列演算を活用し、すべての処理をソフトウェアで実行。実際の通信環境下で高い性能を示すことを確認した。

これにより、AI処理と統合可能な次世代vRAN(virtualized Radio Access Network、仮想無線アクセスネットワーク)アーキテクチャーの有用性が実証されたとしている。

AITRASのシステム構成と特長

AITRASにおいて、DU(Distributed Unit)とO-RAN 対応無線装置(O-RU)の間のインタフェースはO-RAN Split Option 7.2xに準拠。

Massive MIMOの実装では、アップリンクの無線信号のチャネル推定処理と等化処理のすべてまたはその一部を、DUからO-RU側に移管して実装する構成もあるが、AITRASではGPUを活用することにで、すべてをDU内のソフトウェアのみで処理する方式を採用している。これにより、O-RUに新たな機能を追加することなく、汎用的なO-RUをそのまま活用したMassive MIMOのエコシステムを実現した。

また、複数のO-RUのアップリンク無線信号が、AI処理ユニットを統合した同一のDU内に集約されるため、無線品質に対するAI協調制御が複数のO-RU間にも適用可能になる。これにより、アップリンクチャネル補間(通信の高速化・安定化を実現する技術のひとつ。通信リソースの一部にのみ割り当てられる復調用参照信号から、データの伝送路の状態を推定・補間する信号処理技術)による無線品質の改善や、ビームフォーミングによる通信容量の向上などが期待されるとのこと。

この構成は、3GPPおよびO-RANの標準仕様に準拠しながら、AIでRANの能力を最大化する完全ソフトウェアベースの先進的なRANアーキテクチャーだという。

  • AITRASと、AITRAS以外の概要比較表

    AITRASと、AITRAS以外の概要比較表

屋外実証の概要

今回の屋外実証では、AITRASに搭載したGPUの高効率な並列処理性能を活用して、Massive MIMOに必要な大規模行列演算および物理層(PHY層)の無線信号処理を実施。具体的には、DU(Distributed Unit)内のGPU上において、無線信号処理をソフトウェアで実行し、屋外環境においてダウンリンク(DL)で16レイヤーのMU-MIMOの動作を確認した。

この実証では、従来の4レイヤー構成に比べてスペクトル効率とスループットが共に約3倍に向上したほか、トラフィック集中時においても、1ユーザー当たりのスループットが良好な通信品質で安定。基地局全体の通信容量拡大につながることを確認できたという。

これは、GPUによるPHY層の処理を完全にソフトウェアで実行し、Massive MIMOの処理をRANの規定処理時間内で安定的に動作させた大規模な検証であり、AI-RANの商用化に向けた重要なステップとなる。