ソフトバンクは、5G向けの電波として割り当てられている28GHz帯ミリ波を下り/上り信号共に単独で運用する、「ミリ波スタンドアローン」によるFWA(固定無線アクセス)通信の実証に成功。光回線に匹敵する高速通信を提供できる有効な手段であることを確認したと、10月28日に発表した。
今回の実証実験では、商用の5Gネットワークを利用し、横浜市内の施設の屋外に設置したFWA(Fixed Wireless Access)用の構内設置機器(CPE:Customer Premises Equipment)を用いて、ミリ波スタンドアローン(SA)による高速通信の実用性を検証。下り最大2.38Gbps、上り最大541Mbpsという高速かつ安定した通信を実現できたとしている。
現在提供しているミリ波通信は、4GやSub6といった周波数帯を2波以上同時に利用する方式を採用している。具体的には、LTEを基盤に、5Gミリ波を追加で利用する5G-NSA(ノンスタンドアローン)構成の「EN-DC」(E-UTRA–NR Dual Connectivity)方式や、5GのSub6帯を基盤に、ミリ波を追加で利用する5G SA(スタンドアローン)構成の「NR-DC」(NR–NR Dual Connectivity)方式がある。
ミリ波は広帯域・大容量通信が可能な一方で、直進性が高く電波が届きにくいとされる特性があることから、エリア展開が難しく、商用サービスでの利用は限られていた。
ソフトバンクは、ミリ波の超大容量・超低遅延という特長を最大限に生かすための技術開発と、5Gネットワークによる高速大容量通信の有効活用に向けた取り組みを推進しており、今回の実証実験はその「重要な第一歩」と位置づけている。
具体的なユースケースとして、同社では以下のような想定をしている。
- 自治体・公共施設での即時対応型の通信インフラ
- 防災拠点や庁舎間通信網を迅速に構築し、短期間で通信エリアを展開
- 教育現場での高速通信
- 校舎などにミリ波FWAで光回線と同等の通信を提供し、災害時には避難所の大容量通信手段として活用
- イベント会場やスタジアムでの快適な通信環境
- Wi-Fiとの連携により、混雑時でも快適な大容量オフロード環境を実現
- 産業インフラの高度化
- 工場や港湾などで映像監視や遠隔制御、IoT(Internet of Things)通信を低遅延・高信頼で実現
実証実験の概要
今回の実験は、エリクソン・ジャパンのミリ波基地局と、京セラが提供するミリ波CPEを使って実施した。
横浜市内の施設屋上に、複数のFWA用CPE(固定無線アクセス向け通信装置)を設置し、ソフトバンクが商用展開している近くの28GHz帯ミリ波(29.1〜29.5GHz帯)の基地局に接続。複数の端末が同時に通信する環境で、通信速度と安定性を検証した結果、下り最大2.38Gbps/上り最大541Mbpsという理論値に近い通信速度を確認した。複数端末による同時通信でも合計スループットの低下はなく、ミリ波スタンドアローンの構成でも安定した双方向通信を実現できたという。
特に上り通信では、CPEのビームフォーミング機能と基地局側のマルチアンテナ合成受信機能を組み合わせることで、高次変調(64QAM、一度に多くのデータを送信できる、通信速度を高める変調方式のひとつ)に加え、2×2 MIMOを安定的に維持することに成功した。
ソフトバンクでは、従来のEN-DC方式やNR-DC方式で見られる、4GやSub6側の上り通信品質の影響による変動を抑え、より安定した高速通信が実現することを確認したとしている。
なお今回の実証実験では、既存の商用基地局と通信ネットワークを利用し、特別な中継装置やCPE以外の追加設備はなかったという。ミリ波の基地局が整備されているサービスエリアであれば、CPEの設置のみで、短期間で高速かつ高品質な通信ネットワークを構築できるとのこと。
また、屋外に設置したFWA用CPEと、既存の屋内通信環境を組み合わせることで、屋内のタブレット向けに安定した通信を提供できることもあわせて確認。比較対象とした光回線と接続した屋内ネットワークと同等の通信品質が得られたという。
ソフトバンクでは、「ミリ波スタンドアローンによるFWAが、光回線に匹敵する高速通信を提供できる有効な手段であることが確認できた」と説明している。

