NTTは10月20日、軽量ながら高い日本語処理性能を持つNTT版LLM「tsuzumi 2」の提供開始に関する記者説明会と合わせて、今後のAI戦略についても紹介した。そのカギとなるビジョンが「AI For Quality Growth」だ。

常務取締役で研究開発マーケティング本部長を務める大西佐知子氏は、「NTTデータ、NTTドコモビジネス、NTT東日本・西日本を中心に、これまで提供してきたB to BのITソリューションにAIを組み込むことでケーパビリティを高め、お客様の事業の持続的で質の高い成長を支援する」と話していた。

  • NTT 常務取締役 研究開発マーケティング本部長 大西佐知子氏

    NTT 常務取締役 研究開発マーケティング本部長 大西佐知子氏

NTTグループの生成AI提供は堅調に拡大中

NTTの生成AI関連の国内だけの相談件数を見ると、tsuzumiを発表した2023年11月当時は約300件ほどだっだが、2025年度の第1四半期には1818件まで増加している。受注件数を見ると、国内で521件、海外で1306件と、堅調な進展を記録している。

受注件数の内訳を見ると、公共(35.1%)、保険(10.6%)、銀行(9.9%)をはじめ、さまざまな業界からの受注を獲得している。事業規模別では、1兆円以上(13.9%)から1000億円未満および非上場(36.4%)まで、多様な企業と取引をしている。

また、2024年度に436億円だった受注実績は、2025年度第1四半期で670億円まで拡大し、このままのペースで受注が拡大すれば、2025年度全体で1500億円、2027年度には年間5000億円に達する見込みとのことだ。

  • 生成AI関連の相談・受注件数の推移

    生成AI関連の相談・受注件数の推移

ビジョン「AI For Quality Growth」を実現する3つの戦略

大西氏はNTTのAI戦略ビジョン「AI For Quality Growth」を実現するための3つの強みとして、「エンドエンドのフルスタック」「豊富なAIラインナップ」「AIをサステナブルに実現するインフラ」を挙げた。

エンドエンドのフルスタック

NTTはAIの提供において、顧客の事業課題を抽出するコンサルティングから、最適なAIソリューションの設計、事業環境に応じたシステム環境の構築、運用保守、成果創出まで、各段階で専門家が伴走支援する。

AI実装においても、コンサルティングからアプリケーション、インフラまで、ワンストップで提供できる点がNTTの強みだ。特にインフラのレイヤーではクラウド、ネットワーク、データセンターの各領域に対応可能。

  • コンサルティングからインフラまでワンストップで対応可能だ

    コンサルティングからインフラまでワンストップで対応可能

フルスタックで対応した例として、医療機関のシステム更改の際にコンサルティングから参加した事例が紹介された。医療機関の業務のうち、AIによって効率化可能な17のタスクを抽出した上で、予定されていた既存システムの更改に加え、17のタスクを支援するAIエージェントの構築やインフラ整備を一貫して手掛けた結果、医師の電子カルテ入力時間を年間6000時間削減する効果が期待できる結果が得られたという。

  • 医療機関においてフルスタックで対応した事例

    医療機関においてフルスタックで対応した事例

豊富なAIラインナップ

2つ目の強みは、自社開発のAIに加えてパートナー連携を拡大したことによる、豊富なAIラインナップである。例えば、機密性が低く汎用的な業務に対しては公開されているオープンソースのモデルを提供し、機密性や専門性が高い業務に対してはオンプレミスで動作するセキュアなモデルを提供する。

汎用的なAIの領域では、大企業や中堅企業に対し、OpenAI、Google Cloud、AWS(Amazon Web Services)、Microsoft、エクサウィザーズなどとの連携により、業界特化のAIエージェントを提供する。セキュリティ運用向けにはNTTドコモビジネスの「AI Advisor」、コールセンター向けには「docomo business ANCAR」など、具体的なAIソリューションを提供する。

中小企業や自治体向けには、生成AI活用を支援する「Stella AI for Biz」や、NTT東日本および西日本がそれぞれ手掛けるクラウド型の生成AIサービスを展開する。

  • 汎用的なAIサービスの提供ラインナップ

    汎用的なAIサービスの提供ラインナップ

企業固有のノウハウを利用する業務や、機密性・専門性の高い業務向けには、オンプレミスで動作するクローズドなAIを提供するという。近年はAI活用のニーズがオープンな業務からより機密性の高い業務へとシフトしつつあり、tsuzumiに対する問い合わせでは63%がクローズドな学習を要求するものとのことだ。

同社はこうしたクローズドなニーズに対し、「tsuzumi2」をはじめオンプレミスで利用可能なAIモデルを展開する。企業内に閉じた環境で1つのGPUで動作するtsuzumi2の強みが、このような場面で生かされる。

大西氏は「企業のマニュアル類や専門的な業務内容も、tsuzumi2の進化した読解力や高いカスタマイズ性によって効率的に対応できる」と説明した。

AIをサステナブルに実現するインフラ

AIを利用するためには、AIを動作させるコンピューティングリソース、拠点とデータとAIをつなぐコネクティビティ、AIを駆動させるための安定的な電力供給が必要となる。

コンピューティングリソースにおいては、NTTグループは大規模なクラスタから1GPUまで必要なコンピューティングリソースをas a Service型で提供している。GPUクラスタはNVIDIA Blackwellアーキテクチャを採用した「NVIDIA DGX B200システム」をクラスタ構成している。また、占有型のGPUをポータルから利用できるベアメタルサービスも近日中に提供開始予定とのことだ。

コネクティビティの領域では、必要に応じてネットワークをクラウドライクに使えるNaaS(Network as a Service)「docomo business RINK」を提供する。

  • docomo business RINKは分単位でネットワークを利用できる

    docomo business RINKは分単位でネットワークを利用できる

安定した電力供給としては、GPUなどのコンピューティングリソースを国内各地に分散設置し、気候や地理的条件に応じて柔軟に使い分けるモデルによって対応する。各拠点間をIOWN APN(All-Photonics Network)によって接続し、低遅延かつ低消費電力でのAI利用に貢献する。

  • GPU分散設置のイメージ

    GPU分散設置のイメージ

「NTTグループはお客様のQuality Growthのために、今回提供を開始するtsuzumi2をはじめ、コンサルティングからインフラまでエンド・ツー・エンドでさまざまな要望にお応えしていく」(大西氏)