大阪公立大学(大阪公大)と県立広島大学の両者は9月18日、食品や料理の重量を見た目だけで推定する管理栄養士に必要な「食品重量推定能力」(食品重量感覚)を学習する新たな手法として、拡張現実(AR)を用いた学習方法が有効であることを共同で発表した。

またAR学習法は、文字のみ、文字と写真、フードモデルといった他の手法と比較して、十分な学習効果が得られ、さらに検証実験後の被験者に対するアンケートでは、楽しさや役立ち度、他人への推奨度などの項目で高得点を得たことも併せて発表された。

  • ARが画面に表示した3Dフードモデル

    ARが画面に表示した3Dフードモデルと、その際の様子(出所:大阪公大プレスリリースPDF)

同成果は、大阪公大大学院 生活科学研究科の松本佳也准教授、同・情報学研究科の太田正哉教授、県立広島大学の岡田 玄也准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、栄養学と食事療法を扱う学術誌「Journal of Human Nutrition and Dietetics」に掲載された。

栄養管理士は、健康的な食生活を指導するため、日々の食事のエネルギーや栄養素の摂取量を正確に把握する必要がある。栄養管理のプロとして秤を使えない状況でも、食品の重量を正確に推測できる“食品重量推定能力”を身につけることが必須とされる。

これまでの食品重量推定能力を養う学習方法としては、実物や模型、写真、文字情報などがあった。しかし、これらは保管場所の確保やコスト、準備の手間といった課題をそれぞれ抱えている。一方、AR技術は医療や化学分野など、幅広い領域ですでに教育ツールとして活用が進む。だが、食品の重量感覚を育むためのAR学習ツールは、これまでのところあまり普及していない。そこで研究チームは今回、食品重量推定能力を習得するためのARツールを開発すると同時に、その学習効果を検証したという。

今回開発されたのは、スマートフォンやタブレットなどの端末とインターネット環境があれば、いつでも利用できる3Dフードモデルを生成するARツールだ。

  • ARで生成したとうもろこしとフードモデルのとうもろこし

    ARで生成したとうもろこし(左)と、フードモデルのとうもろこし(右)(出所:大阪公大プレスリリースPDF)

ARツールの有用性を検証するため、管理栄養士養成校の学生43人を対象に、(1)文字情報のみ、(2)文字情報+画像、(3)フードモデル、(4)ARツールの4グループに分け、10個の食品の重量を短時間で学習させ、学習前後の解答誤差の改善度合いが比較された。さらに、各ツールに対する楽しさ、役立ち度、他人への推奨度が評価されると共に、学習に関する事由記載の感想も集められた。

その結果、ARツールを使用したグループは、他のグループと比べて回答誤差の減少傾向に遜色がなく、同等の学習効果が認められた。またアンケートの結果、ARグループは楽しさ、役立ち度、他人への推奨度で高い評価を獲得。さらに、自由記載内容の感想文を解析したところ、ARグループは「楽しい」という言葉と関連性が高いことが明らかにされた。

ARツールは、従来の学習ツールと遜色なく食品重量推定能力の学習に利用できる可能性があり、楽しみながら学習できるという特徴を持つ。管理スペースや費用の問題も解消できるため、研究チームは今後、さらに多くの人を対象としたARツールの有用性を検討していく方針としている。