サイボウズは6月17日、ノーコードで業務アプリを構築できる「kintone」のユーザーイベント「kintone hive 2025 fukuoka」をZepp福岡(福岡県 福岡市)で開催した。本稿では、kintoneを導入し年間1200枚のアンケート用紙を削減した住宅会社である大英産業の事例を紹介する。
kintone導入のカギは現場の声を反映した「ライブ感」のある改良
大英産業は福岡県内北九州市に本社を置き、分譲マンション事業、分譲戸建て事業、中古再販事業、まちづくりなどを行う総合住宅不動産会社。1968年創立で、土地の仕入れから建物の建築、販売、アフターサポートまで一気通貫で対応できる強みを持つ。従業員数は約500人。
kintone導入前に同社で使用していた基幹システムは、見た目(ユーザーインタフェース)が悪く、できることが少ない割には作業工数が多く、PCでしか閲覧できないなど、多くの課題を抱えていた。また、開発はベンダーに依存していたため、柔軟な改修も難しかったそうだ。さらに、Excelファイルへの多重入力も発生し、業務の進行が妨げられていた。
これらの課題解決に向け、同社はkintoneの導入を決断。DX(デジタルトランスフォーメーション)支援セミナーに参加した担当者が、kintoneについて知ったことがきっかけとなった。同サービスは直感的な操作が可能で、外出中でもスマートフォンからアクセスできる。
kintone導入後、情報戦略課の柚田耕太郎氏と江﨑菜那氏は、「顧客管理」「物件管理」「契約管理」の3つのアプリを作成した。ちなみに、柚田氏は経済学部、江﨑氏は文学部出身と、どちらもいわゆる文系人材だ。両者とも入社後に営業担当を経験してから、システム担当に異動した経歴を持つ。
顧客管理アプリでは顧客の基本情報や商談内容を管理し、物件管理アプリでは物件の基本情報と1部屋ごとの詳細な情報を登録する。契約管理アプリでは、どの顧客がどの部屋を契約したのかを管理する。
しかし、社内からは「前とやり方が違う」「前のシステムではできたのにkintoneではできなくなった」「これならkintoneにしない方が良かった」など、反対する意見も多かったという。柚田氏はその原因について「私たちはベンダーの主導に従ってシステムを入れ替えただけだった」と分析してみせた。
少々の業務改善よりも、kintoneの操作を新たに覚える手間の方が現場では問題視されたのだ。
柚田氏と江﨑氏は現場社員が使いやすい業務アプリを目指し、各部署と定例会を開催することに。「直感的な操作が可能で設定が簡単だというkintoneの特徴が、ここで生きた。その場でアプリの画面を見ながら、ライブ感のある改善が実現できた」と柚田氏は振り返った。
複数の部門と時間をかけて対話し、業務アプリを改善し続けることで、kintoneへの批判は次第に期待に変わったそうだ。「こういうこともできる?」「こんな風に使いたいんだけど」という声も寄せられるようになった。
来場予約・アンケートで1200枚の紙と100時間の業務を削減
当初は基幹システムの入れ替えのために導入したkintoneだったが、複数の部署で現場に浸透したことで、社内のさまざまな業務をkintoneで効率化するプロジェクトが生まれた。
その一つが来場予約および来場アンケートである。従来のフローでは、まず顧客が来所予約をすると、その情報を社員がkintoneに登録。その後、実際に来場し、紙のアンケートに記入して、その情報を社員が改めてkintoneに登録していた。商談後には、追加で聞き取った内容を再度社員がkintoneに入力していた。
この従来のフローでは予約フォームを外注していたため、外注コストが発生していたほか、フォームの修正や更新に手間がかかっていた。また、何度も社員がkintoneに顧客情報を登録する手間も発生。さらには、紙のアンケートでは未記入のままの項目も多かった。
これらの課題を解決するため、アンケートを紙ではなくトヨクモのkintone連携ツール「FormBridge(フォームブリッジ)」で作成。これにより、顧客が入力した内容が自動でkintoneに反映される仕組みを構築した。紙では実装が難しい「必須」の入力項目を設けることで、得られる情報の質も向上したという。
また、来場予約時のカレンダー表示は、同じくトヨクモのkintone連携サービスである「kViewer(ケイビューワー)」に。予約枠の増減の自動計算は「DataCollect(データコレクト)」を使用することで、一連のフローをkintoneに集約している。
これらの取り組みの結果、年間1200枚ほど使用していたアンケートなどの紙がゼロ枚に。予約フォームなど外注していたツールのコストとして発生していた年間40万円の削減にもつながった。また、情報入力に掛かっていた年間100時間の業務もゼロ時間になるなど、大きな効率化を果たした。
人事・総務関連の申請業務、契約書作成にも利用を拡大
2つ目の例は、人事・総務関連の申請業務の効率化だ。以前は各種の申請を異なるシステムや紙で行っていたため、複数のシステムのメンテナンスやコストが必要で、申請ごとにフローが分かれていた。署名や押印がアナログの場合は、申請書を探す手間や、決裁のために上司のデスクを巡る手間が発生していた。
これらの申請書を1つのkintoneアプリへと集約した結果、複数のシステムのメンテナンスが必要になり、申請書を探す手間も削減できただけでなく、電子契約にも対応できるようになった。
そのほか、以前は紙で作成していた契約書の作成をkintoneへと移行することで、書類を作成する手間を削減するだけでなく、郵送や収入印紙のコスト削減にも成功した。
kintone×生成AIで目指す次なる目標は?
kintoneを活用したこれらの取り組みの結果について、江﨑氏は「さまざまな部署で成功体験が積まれたことで、全社員のDXへの意欲が向上した。社内問い合わせ用のアプリを作成したところ、各部署からkintoneで実現できそうな要望やアイデアが集まっている」と紹介した。
定量的な成果として、売上は2020年から80億円増加し、グループ会社は2社から6社に増えた。また、グループ全体の人員数も86人増加。情報システム部門だけでも5人から9人に増え、さらなるDX推進に対応できる体制を整えた。
同社は今後について、kintoneと生成AIの活用に意欲を見せている。具体的には、JavaScriptによって画面上の見た目や動作だけでなく、kintone REST APIによるレコードの取得などが可能だというカスタマイズ機能を利用したいのだという。
しかし、文系出身の柚田氏と江﨑氏らがJavaScriptを勉強してコードを記述するのは難しい。そこで、生成AIの出番だというわけだ。生成AIに自然言語でプロンプトを入力し、得られたコードでkintoneをカスタマイズする方針だ。
「kintoneにはプログラミングやITの専門知識は必要ない。大切なのはコミュニケーションとアクション。アプリを使用する人とコミュニケーションを取り、すぐにアクションすることでDXは進められる」と江﨑氏が語り、講演を締めた。











