データは増え続ける

データ量の爆発的な増加については、かれこれ40年前から指摘されています。この傾向は現在まで緩むことなく続いており、最近の調査では、2025年の1年間で生成されるデータは181ゼタバイトに達するという報告もあります(*1)。

(*1 :Amount of Data Created Daily (2025)

1ゼタバイトとは、10億テラバイトです。これは「生成される」データの量ですから、同じだけの量が2026年にも生成されるとすると、この2年だけで保管されるデータ量は362ゼタバイトいうことになります。これが今後も続くことを考えると……。

かつて「データ量が増える」とは、パソコンの普及に伴ってテキストデータがデジタル化されることに始まり、その後のインターネット通信の発達によって音声や映像、その他のアナログ媒体の記録をデジタル化し、容量の大きなファイルが増えるということを意味していたと思います。

ところが最近ではアナログ世界のセンシングデータに加え、デジタルの世界でもあらゆることをデータとして保存し、分析に使用するようになりました。ファイルの量だけでなく精細度も高まり、大容量化を後押ししています。

例えばMicrosoftの2024年末の報告によると、世界で日々6億回のサイバー攻撃が発生している(*2)そうです。単純に1度の攻撃が1メガバイトのデータを生み出すとしたら、6億回の攻撃は600テラバイトに相当します。これが毎日発生するのです。こうしたデータは削除されることなく、AIを用いた分析のために永続的に保存されます。

(*2 :Microsoft Digital Defense Report 2024

以前は古いデータは削除するのが普通でした。しかし、AIの誕生と、個々の企業がAIハルシネーションをなくして正確性を担保するためにSLM(小規模言語モデル)やRAG(検索拡張生成)を活用するようになったことで、すべてのデータを消さずにとっておくという傾向が進んでおり、企業が保管するデータの量は莫大なものとなっています。

人間の手に負えない。であればどうするのか?

そのような状況では、日々増え続けるデータを人間が手動で集めたり分類したり分析したりするのは、もはや不可能です。そこで「自律的自動化」が必要です。自律的自動化の最大の目的は、人間の作業の間違いや揺れを排除することです。

管理や制御の工程を自動化することで、より多くのデータやIT機能を簡単に手間をかけることなく制御できます。自律的自動化をITシステムに任せられれば、人間が監視することなく、正確な作業を寸分の狂いもなく昼夜を通して行わせられます。

これがもたらすメリットは、手間が省けることもそうですが、安心できるというのがもっと重要だと思います。これまで、処理工程のプリセット化や機械学習による自動化が行われてきましたが、今や、それはAIに任せる作業になっています。

ソフトウェア的な世界で起きているこの変化は、筆者が属するストレージの世界でも同様の変化が起きています。データ量の爆発的な増大を受け、ストレージに期待される役割は変わってきています。

ストレージ管理は簡素化できます

一般の方にとって、エンタープライズストレージは、作成したり受け取ったりしたデータを保存しておく箱のような存在だと思います。しかし、ストレージならびにITインフラストラクチャの管理担当者にとっては、それほど単純な装置ではありません。

要件定義から設定、スムーズな運用を実現するまでの準備に、大変な手間と時間がかかります。現在のエンタープライズストレージは、サイバー攻撃時や自然災害時など、予期せぬ障害の発生に対するセーフティネットのような役割も果たしています。常時稼働や高可用性に加え、攻撃や障害の予知・検知、瞬時の復旧が求められています。

エンタープライズストレージを使い始めるまでには、さまざまな工程が存在します。まず要件定義。どういうデータをどのくらいの容量で保存するのか。ファイルシステム、I/Oプロトコル、仮想マシン、コンテナ環境、接続方式、冗長構成、耐障害性など、さまざまなことを考えなければいけません。

そして物理的な設置場所についても、ラックマウント、電源・配線、冷却などを考える必要があります。論理ボリュームの設定、ホストとの接続設定、冗長経路の設定、バックアップの取得仕様も決めねばなりません。これらを決めた上で、テストを行い、本番となりますが、運用開始以降も必要容量の増大や、トラフィックやワークロードの変動への対処、障害時対応など、気の休まる暇がありません。

これらを自動化すると何が起きるでしょうか。

自律自動化の第一のメリット

効率的な自律的自動化のためにまずやっておきたい、重要なポイントがあります。それは集約化です。多くの企業では、図らずしも、各部署や組織の要請によって導入するストレージシステムがばらばらになりがちです。これを集約化することにはさまざまなメリットがあります。複数あったUIや管理システムの一元化、装置の台数・ラック数削減、設置面積削減、消費電力削減、人的リソースの削減、それらに伴うOPEX/CAPEXの削減などです。

その上で、自動化を行います。特にAIを用いた自動化によって、設定・構成ならびに運用上の性能調整やキャッシュの最適化といった手作業を伴うさまざまな調整が自動化され、さらに設定ミスも起きなくなるため、管理の人的リソースを削減できます。

セキュリティ面でも、サイバーアタックの検知と、それをトリガーとしたネットワークの遮断や良いバックアップデータへの切り替えなどが自動化されれば、インシデントに手動で対応する場合と比べて著しい高速化と正確化が実現できます。またAIOpsで、トラブルの予測や運用の効率化が図れるようにもなりました。

自動化の将来的なメリットとベンダーの責任

ここまでの話をまとめると、AIを活用した自律的自動化によって、エンタープライズストレージは構成と運用に手間暇のかかる装置ではなくなります。セットアップそのものが省力化され、一度運用を開始すればその存在を忘れてしまえるほどです。

これが意味するのは、機材関係のコストだけでなく、管理にかかる人的リソースとコストも大幅に削減・軽減できることに加え、必ずしも高度な専門知識を持たないスタッフでも対応が可能となる、ということです。なわち、ITスキル不足という悩ましい課題への解決策になる可能性もあるのです。

米国での調査ではありますが、77%の企業がITスキルギャップの影響を受けているとする調査(*3)もあり、ITスキルギャップは将来的な企業の存続にも影響する大きな課題です。

(*3 :Revature’s 2025 State of IT Skills Survey Report

エンタープライズストレージをお使いの皆様には、まず自社のストレージを棚卸していただいて、ハードウェアとソフトウェアのアップデートの必要性を検討いただきたいです。複数ベンダーの製品を使っている場合には、その集約についても検討いただいた上で、どのベンダーの自律的自動化が自社の使い方に合っているのかを比較検討いただければと思います。

筆者らのようなITベンダーは、AI活用や自動化の高度化を図っていくことはもちろんですが、これからもっと重要になるのはサポートのクオリティだと思っています。上記の通り、自動化の進展は、それを操作する人のスキルを不問にしますが、万が一自動化では対処できない障害が発生した場合には、「伝家の宝刀」である経験と技が必要となります。

ストレージを一から手動で対処できる体制を用意しておくこと。そしてお客様の安心につながるサービスを提供すること、これが現在の、そしてこれからのベンダーには求められているのです。

Infinidat Japan カントリーマネージャ 山田秀樹(やまだ ひでき)
日本・データゼネラル、サン・マイクロシステムズ、マイクロソフト、日本ネットワーク・アプライアンス、データドメイン、EMC ジャパン、RSA Securityにて、営業、パートナー開拓ならびに新規市場展開に従事。
2013年以降はPure Storage Inc.、Rubrik Inc.などグローバル企業の日本法人代表取締役を歴任し、データ管理、データ保護市場への事業拡大を統括し推進。2022年5月にINFINIDAT Japan合同会社の代表執行役社長に就任。経営に関わりつつ、日本市場でデータストレージの業績拡大に取り組む。