デル・テクノロジーズは8月26日、NVIDIAとともにIDCへ委託したAPAC(アジア太平洋地域)のAI導入動向に関する包括的な調査結果について発表した。調査結果は2025年1月に発表されたIDCの調査資料『Creating Your AI Implementation Blueprint(自社のAI導入ブループリントを作成)』に掲載されている。
AI、生成AI、機械学習はAPAC地域のさまざまな業界を変革しているが、多くの組織が人材不足や統合に伴う複雑さ、AI戦略とビジネス目標の一致などに苦慮している。『Creating Your AI Implementation Blueprint』では、テクノロジー パートナーとの連携がこれらのギャップを埋めることに役立ち、AI導入のプロセスを円滑に進めながら、効率性、イノベーション、競合優位性を最大化できることが示されている。
『Creating Your AI Implementation Blueprint』からの重要なインサイト
APAC全域でAIの導入が加速する中、企業はより戦略的な統合アプローチを取っている。業務効率や生産性の向上、パーソナライズした顧客体験の提供につながる生成AIのユースケースを生み出すことに注力しているという。
しかし多くの企業は、AIを導入するうえで高いスキルを有する人材の確保を課題としている。特に専門知識を有する人材をめぐる競争がコスト増加につながっている先進国の市場で、これらの課題は顕著となっている。
さらに、AI導入の取り組みが成功するかどうかは、データの可用性、品質、ガバナンスに大きく左右される。AIの可能性を最大限に引き出す上で、社内への投資と社外のコラボレーションを組み合わせてこれらの要因に対応することが成功の鍵となる。
AIおよび生成AIがビジネスのイノベーションを促進
APAC地域におけるAI導入は右肩上がりで推移しており、AIに特化したサーバの市場は2025年までに239億米ドルに達する見込み。APAC地域では生成AIへの支出も勢いを増しており、今年生成AIイニシアチブに100万~200万米ドルを支出するとしている企業は84%だった。
生成AIへの支出が予算に占める割合はグローバル全体で約33%であるのに対して、APAC地域では38%が割り当てられていた。予測AI(Predictive AI)と解釈可能なAI(Interpretative AI)への支出は合計61%だった。
企業はこれらのテクノロジーには生産性と顧客エンゲージメントを高める大きな可能性があることを認識しているものの、多くの企業がAIイニシアチブと戦略的目標を一致させることや既存のワークフローにAIを統合する上での課題に直面していることも明らかになった。
AI導入戦略の進化
APAC地域におけるAIおよび生成AIの導入戦略は進化しており、2024年に最も多かった導入オプションはマルチクラウドを含むパブリッククラウドだった。ただし、セキュリティやコスト効率、データ共有とコラボレーションの向上、業界固有の要件といった要因を背景に、プライベートAIに対する需要も高まっている。
また、企業の汎用AIモデルから特化型AIへの移行が進んでおり、各社のCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)はデータセキュリティ、システムの整合性、そしてパブリック、マルチクラウド、ハイブリッド、プライベート クラウド環境のすべてにわたって最適化されたインフラを優先している。
AIおよび生成AI導入規模の拡大における主な課題と考慮点
APAC地域ではAI/MLプロジェクトの5回に1回(約20%)が失敗しており、AIガバナンス不備(19.3%)、人材不足(18.4%)、過剰なインフラコスト(16.9%)が主なその要因である。また、生成AIの導入規模を拡大する際、企業はエネルギー効率を考慮しながら、ITコストの上昇、規制やコンプライアンスに伴うリスク、といった課題にも対処する必要がある。
スキルギャップはDX(デジタルトランスフォーメーション)や製品開発を遅らせ、最終的な品質に影響を与える可能性がある。これについて、APAC地域の72%以上の企業が、AIスキルを有する人材不足のギャップを埋めるために、新たに人材を採用する際にデータとAIの知識を有することを必須としていると強調した。
セキュリティとプライバシーは依然として重要な課題とされている。ITチームが生成AI導入への準備態勢を強化する必要がある一方、企業は社外のサービス プロバイダにAIシステムのセキュリティやプライバシー、信頼性の確立、インフラのモダナイズ、カスタムAIモデルの開発を期待している。こうした課題はあるものの、企業は生成AIが業務効率を促進し、顧客満足を高めて新たなビジネスモデルを創出する力になると捉えており、取り組む価値があると考えている。
AI導入を成功に導く基盤づくり
APAC地域の企業はAIの導入に対して構造化された段階的なアプローチを採っており、リスクをコントロールしながら目に見える形でメリットをもたらす、インパクトの大きなユースケースを優先している。
強固なAI基盤を確立するためには、人材、プロセス、テクノロジーの融合が不可欠だ。ここで重点分野とされるのが、AI対応インフラへの投資、AIを中心にしたチームの育成、AI戦略とビジネス目標の一致、そして意思決定およびAI導入による長期的な成功を促進するための確固としたデータガバナンスの導入だ。
さまざまな課題克服における社外のAIの専門知識への高い依存
現在APAC地域の企業は、AI導入の成功における主な障壁として人材不足、データ プライバシーに関する懸念、統合の複雑さを挙げている。APAC地域では約60%の企業がAIアプリケーションの開発を社外の開発者に依存している。社内でAIを開発している企業はわずか30%で、市販のAIソリューションを利用している企業は約10%。
AIの導入を成功させている企業は、AIのロードマップや堅牢で拡張性の高いインフラ、専門家による実装の支援、従業員のトレーニングなどにテクノロジー パートナーを活用して社内のスキルギャップを埋め、AIの展開を加速させているとのことだ。
銀業界別の調査結果
APAC地域では幅広い業界企業がAI、生成AI、機械学習によって変革を遂げつつあり、AI主導の戦略を採用して業務効率を高め、顧客体験を強化し、イノベーションを推進している。生成AIのユースケースは急速に増えており、2024年に10件以上の生成AIのユースケースを展開しているAPAC地域の企業は87.4%だ。
また、25.6%が2025年には生成AIのユースケースが100件を超えると回答しており、これらのユースケースはIT運用、マーケティング、サプライチェーン マネジメント(SCM)、人事管理(HR)など多くの業務分野にわたる。
