パナソニック 空質空調社(以下「パナソニック」)、大阪ガス、同社100%子会社のDaigasエナジーの3社は8月7日、水素および都市ガスの混焼に対応した吸収式冷温水機を開発したことを発表。これに際し3社は記者説明会を開催し、電力需要が高まるとともにクリーンエネルギーへの転換が求められる昨今における新製品の強みを説明した。
水素と都市ガスの混焼割合は自由に調整可能
パナソニックが開発・販売する吸収式冷温水機は、業務用空調設備の中でも特に大型施設向けのセントラル空調において、施設の建屋全体の空調を集中的に制御するために重要な熱源機器として利用されている。吸収式冷温水機は、エネルギー源として主に都市ガスや廃熱を利用するため電力消費量が少ないのが特徴で、また冷媒として水を用いるため、特定フロン・代替フロンを使用せず環境に配慮した空調システムとして知られる。データセンタの増加などにより電力需要が急増する中、この空調システムは使用電力のピークカットに貢献する策として期待が高まっているという。
そしてパナソニックと大阪ガスおよびDaigasエナジーは、それぞれ企業活動や社会におけるカーボンニュートラル実現に向けて取り組んでいることから、吸収式冷温水機の動力源のさらなるクリーン化を目指したとのこと。エネルギー供給安定性の観点から、現実的にはしばらくの間都市ガスの利用が続くとしながらも、将来的な方策として燃焼時にCO2を排出しない“水素”の活用も視野に入れた機器・ソリューションの準備が必要となっているとする。
こうした背景から3社は今般、水素と都市ガスというマルチ燃料の混焼に対応した吸収式冷温水機を開発。なお同製品では水素と都市ガスの混焼比について0%~100%の範囲で可能だとしており、都市ガス専焼、水素と都市ガスの混焼、水素のみの専焼のいずれにも対応するという。その実現においては、各燃料ごとに異なる燃焼特性も踏まえて流量調整を行えるよう「水素/都市ガス兼用バーナ」と「燃焼制御ユニット」を新たに開発したとのことで、燃料混合比率を設定するというシンプルな操作で、あらゆる混焼比でのマルチ燃料対応を実現したとする。
水素エネルギーの課題だったNOx発生も抑制
また、燃焼速度が速く火炎内で局所的な高温部が発生するなどの理由から、水素の燃焼において発生しやすく課題視されていたNOx(窒素酸化物)については、パナソニックとDaigasエナジー両社の技術の強みを融合させ、その発生量を40ppm未満まで抑制したとのことだ。
パナソニックが注力したのは、NOx発生量を抑えた水素燃焼技術。まずは都市ガスバーナでの燃焼反応を解析して、高温になりNOxが発生する箇所を推定し、その結果に基づいて設計を改良することで、都市ガスバーナでの低NOxを実現したという。そして従来はNOx発生量を80ppm未満に抑えることができていなかった水素燃焼バーナについても、解析を通じて高温箇所を特定。燃焼後の排ガスを再利用することであえてその箇所の燃焼速度を低下させる新方式を開発し、Nox発生を抑制したとする。
またDaigasエナジーは、同社が保有するデジタル燃焼制御システム「Dr.Flame」を活用。都市ガスと燃焼用空気を精密にコントロールし、安定燃焼と省エネに貢献している。また、燃焼特性が異なり必要な空気量も異なる水素と都市ガスの混焼を実現するため、より精密な流量調整に向けさらなる技術開発を行ったとのこと。混焼率に応じた理想的な空気量を決定するとともに、混焼率と冷暖房出力に応じた空気比制御マップを構築することで、より安定した燃焼効率を実現したという。
既設機への追加で水素利用への切り替えが可能に
そして、新たな吸収式冷温水機において重要な点として、既存設備に対して燃焼関連部品の追加・交換を行うだけで、都市ガスと水素を組み合わせた利用が可能になることも挙げられた。吸収式冷温水機は大型機械であり、基本的には長期間にわたる使用が想定されることから、エネルギー源の切り替えを理由に本体を入れ替えるには多大なコストを要することとなる。
しかし今般発表された新製品は、本体の入れ替えや大規模な改造を行うことなく、水素と都市ガスの兼用バーナや燃焼制御ユニット、制御盤などを既設機に追加することで、水素対応機へのリニューアルが可能だという。そのため現時点では都市ガスの使用を維持しつつ、将来的には水素燃料の利用へと段階的に切り替えられることから、外部環境の変化などにも対応できるとした。
なおパナソニックによれば、同社が群馬県内に構える大泉拠点における実証試験では、現行機種をベースとして燃焼関連部品を追加した実証機を用いた性能評価を行ったとのこと。そして水素専焼・都市ガス専焼含む5パターンの水素/都市ガスの混焼率すべてにおいて、NOx発生量およびCOP(省エネ性能を示す指標)の両指標で目標値を達成したとする。
説明会の中でパナソニックは、新たな吸収式冷温水機の主な技術検証は完了したことから、今後は顧客ニーズの調査を深めつつ、さらなる改良を加えたうえで商品化に向けた検証を進めると説明。そして3社は、クリーンエネルギーである水素の活用をはじめ、今後もそれぞれの強みを掛け合わせて、カーボンニュートラル社会へ貢献するソリューション開発に取り組むとしている。




