物価上昇が続く中、「安い、早い、うまい」うどんを提供してくれる、庶民の味方・丸亀製麺。そんな丸亀製麺でもAIの活用が進んでいるという。

日本オラクルが7月23日に開催した、Oracle NetSuiteの年次イベント「SuiteConnect Tokyo 2025」において、丸亀製麺を運営するトリドールホールディングス 執行役員 CIO/CTO 磯村康典氏が同社におけるERPやAIの活用について講演を行った。

  • トリドールホールディングス 執行役員 CIO/CTO 磯村康典氏

同社は、ERPやAIの活用によって、どのような課題を解決し、どのようなメリットを享受しているのだろうか。

グローバル、変化に対応するためNetSuiteを導入

トリドールホールディングスといえば、丸亀製麺が真っ先に浮かぶが、売上の内訳は丸亀製麺の国内事業が5割、海外事業が4割、残り1割が他の事業となっており、第3の柱を伸ばすことを狙っている。

磯村氏は、「グローバル企業は成長性と収益性を持っているが、外食産業は利益率が上がりづらいので、収益力を上げることが課題となっている」と語った。

また、出店やメニュー作成など、同社のビジネスはスピードが速く、事務処理を行う本部が足枷になっていたという。「いかに早くビジネスの変化に対応できるかが求められている」と磯村氏。

そして、同社の会計システムは日本の会計基準にしか対応しておらず、IFRSを使っていたため各国の会計基準に対応する必要があった。また、オンプレミスのシステムでは各国の制度改正のたびに、バージョンアップが必要であることから、「クラウドネイティブでグローバルに対応している会計システムはNetSuiteしかなかった」(磯村氏)ことから、同社はNetSuiteを導入した。

12月の終わりからNetsuiteの検討を開始し、翌年の4月に稼働して仕分けの入力を始め、前年度の決算が終わった時点で移行したという。「トータルでは6カ月かかったが、3カ月で稼働をスタートできた。気軽に導入できると思っている」と磯村氏は語った。

顧客に感動を与える仕事はAIに任せられない

AIの話を聞かない日がないほど、AI活用が当たり前になりつつある中、同社でも当然、AIの導入を進めている。

磯村氏は、「AIはどこに適用するかが重要」と述べた。同社がDX(デジタルトランスフォーメーション)に着手する際、何をデジタルで合理化するのか、引き続き人が担当するのか、すみ分けが重要であることを学んだという。

このセオリーをAIに適用すると、どうなるのか。「当社の強みはお客様に感動体験を与えていること。これを担っているのは人だから、ここは置き換えられない」と磯村氏は述べた。

「店舗で調理と接客は人が行い、それ以外は徹底的に合理化する。AIを適用する範囲は合理化の部分となる。すべての業務をAIでやるのではなく、人がやる部分は守る」(磯村氏)

マネジメント業務をAIで徹底的に合理化

では、丸亀製麺の店舗において、AIはどのように働いているのだろうか。店長は、売り上げ計画を立て、それに基づき、スタッフや食材をどれだけ用意するかを決め手配する。磯村氏はこれらマネジメント業務について、「かなり負荷が高い仕事ではあるが、お客様には価値を与えていない。なら、ここを自動化しようと考えた」と話した。

具体的には、AIにより需要予測を行い、スタッフのシフトや食材の発注もAIに任せている。AIはデータが増えてくると予測の精度が上がるので、導入当初に比べて、かなり精度が高まってきたそうだ。

また、勤怠システムの顔認証をAIで行うことで、打刻が1秒で済むという。4万人の従業員がこのシステムを使っているので、全社で考えるとその時短効果は大きい。磯村氏は「現場ではいろいろなAIを組み合わせて使っている」と語っていた。

なお、生成AIの導入については試行錯誤しているとのこと。「複数のAIプラットフォームを使っているが、統一すべきか悩んでいる」と磯村氏。

「生成AIが生産性を上げるのはホワイトカラーの業務だが、当社は現場の業務を効率化するほうが生産性が上がる」と磯村氏は述べた。財務会計について最も正確に答えられるのはNetsuiteと感じており、他の生成AIを使わずにNetsuiteを利用することも検討しているようだ。

先日、米アマゾンのCEOであるアンディ・ジャシー氏が、「AIよって管理部門の従業員が減少する」と同社の従業員に当てた書簡で発言したことが話題になったが、米マイクロソフトも9000人の従業員を解雇した。マイクロソフトのCEOであるサティア・ナデラ氏は、解雇について「AI時代への挑戦」と語っている。

ただし、丸亀製麺のように、すべての仕事をAIに置き換えることは不可能だろう。AIと自身のポテンシャルを踏まえて、キャリアを形成していくことが不可欠な時代になってきた。