QPS研究所は、小型SAR衛星11号機「ヤマツミ-I」が撮影した初画像(ファーストライト)を7月2日に発表。公開したのは、神奈川・川崎市のタワーマンションが立ち並ぶ武蔵小杉エリアや、長崎・長崎市全体を詳細にとらえた試験観測画像6点だ。
QPS-SARプロジェクトでは、日本神話に登場する神々の名前からとった愛称を衛星につけており、12の軌道に3つずつ衛星を投入。合計36機による衛星コンステレーション構築をめざしている。
11号機は新たな傾斜軌道に投入されることもあり、新しく「ヤマツミ」(YAMATSUMI)と命名。この軌道の1機目となる11号機は「ヤマツミ-I」と呼称している。ヤマツミは、日本の国土のおよそ3/4を占める山地の守護神の名前であり、マークには日本を代表する山である「富士山」をモチーフに、人々の営みと共に山野を見守るという想いを込めたとのこと。
また、打ち上げを担当した米ロケット・ラボのミッションネームは、衛星の愛称にちなんで“The Mountain God Guards”と名付けられており、ミッションロゴには、富士山を背景に飛翔するロケットと、それを見下ろす人工衛星が描かれている。
ヤマツミ-IはElectronロケットによって、日本時間6月12日0時31分に打上げられ、約50分後に衛星分離、続いてその約35分後には初交信にいずれも成功。同日夜に収納型アンテナを展開し、以後は衛星機器の調整を続けてきた。
QPSのSAR(合成開口レーダー)衛星は、分解能1.8mの通常モード(ストリップマップモード)と、分解能46cmの高精細モード(スポットライトモード)で観測可能。ヤマツミ-Iは7月1日から高精細モードで初観測を始め、アルウェットテクノロジーによる画像処理協力を経て、前出のファーストライト画像を公開した。分解能は、アジマス(衛星の進行方向)分解能が46cm、レンジ(衛星の進行と直交する、衛星のマイクロ波を照射する方向)分解能が45cm。
神奈川県 川崎市 武蔵小杉エリア(日本時間7月2日9時54分 / 観測時の天候:曇り)
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武蔵小杉駅を中心に、タワーマンションが立ち並ぶダイナミックな高層ビル群を鮮明に捉えたSAR画像。「都市の躍動を感じさせる街並みのすぐそばには、多摩川の穏やかな流れと広々とした河川敷、そして緑豊かな等々力緑地が広がり、都市と自然が見事に調和した武蔵小杉の魅力を感じられる1枚」としている
長崎県 長崎市(日本時間7月1日11時31分 / 観測時の天候:晴れ)
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山々に囲まれ、大きな天然港を中心とした長崎市全体の画像。西に稲佐山、中央に長崎県営野球場や平和公園、長崎駅が写っており、山の稜線や斜面に立ち並ぶ建物、港を行き交う船なども細かく確認できる。世界遺産に登録されている長崎造船所には、複数の巨大なクレーンが見えている
QPS研究所 大西俊輔社長 CEOのコメント
この度、11号機「ヤマツミ-I」の初期運用が大変スムーズに進み、無事にファーストライトを発表できたことを心から嬉しく思います。今年3月の9号機「スサノオ-I」を皮切りに、わずか数カ月の間に3機の打上げを実現し、さらにその初期運用を並行して進めるという、私たちにとって大きな挑戦の期間でした。そのひとつひとつを着実に乗り越え、確実に成果を積み上げてきた初期運用エンジニアチームを心から誇りに思っています。
複数衛星の同時運用は、私たちがめざす衛星コンステレーションの実現に向けて、避けては通れない重要なステップです。今回の経験を通じて、私たちはしっかりと次へつながる知見を得ることができました。これからも社員一丸となって、一歩ずつ、確実に歩みを進めてまいります。引き続き、皆さまのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。