本田技研工業(Honda)の米国現地法人であるアメリカン・ホンダモーターは6月17日(現地時間)、革新的な電動マイクロモビリティを用いて、都市部などでのラストマイル配送における新たなソリューションの提供を目指す新事業「Fastport」を発表した。

  • 新事業「Fastport」による未来のラストマイル配送イメージ

    Hondaはラストマイル配送の革新を目指す新事業を発表した(出所:Honda)

ラストマイル配送の課題を解決する新たな“FaaS”

消費者の手元まで荷物が届けられる物流における最終区間となるラストマイルでの配送は、都市部の交通混雑や、頻繁かつ迅速性が求められる配達環境など、物流チェーンの中でも特に複雑な領域である。

そうした配送の課題を解決するため、アメリカン・ホンダモーター内で新事業の創出を担う組織「Honda New Business Innovation Lab」から、新たな“FaaS”(Fleet as a Service、企業などが保有・運用する複数の車両について導入から管理・保守までを一括で提供するサービス形態)事業としてFastportが誕生。同事業初の製品として、配送用電動アシストマイクロモビリティ「Fastport eQuad」のプロトタイプが開発された。

  • Fastport eQuad

    Fastport eQuadのプロトタイプイメージ(出所:Honda)

この新製品は、ライダーがペダルを漕ぐ力を原動力とし、その操作を電子的に動力に伝えるペダル・バイ・ワイヤ方式と、ペダル操作を電力で補助するペダルアシスト駆動システムを組み合わせることで、力強く滑らかながら静粛性の高い“ゼロエミッション走行”を実現するという。さらに、回生ブレーキシステムの搭載でエネルギー効率を高めたほか、オートブレーキホールド機能で安全性も向上させたとのこと。加えて、走行中におけるライダーの快適性を高めるため、UVカット加工を施したキャノピーや、ライダーの前面を覆うカバーなども備えるとする。

なお同モビリティは、北米・欧州それぞれの市場ニーズに応じ、大型・小型の2種類の車両および貨物ボックスが用意されている。また車両の全長は用途に応じてカスタマイズでき、小型荷物から大型積載まで幅広いサイズ・量の配送に対応可能だ。そして電動アシストの動力源としては、Hondaの電気自動車などでも用いられる交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を採用しているため、簡単に充電済みのものと交換でき、クリーンで効率的な配送の実現に貢献するとしている。

  • 車両後方のイメージ図

    車両の全長はカスタマイズ可能で、動力として交換式バッテリーが採用されている(出所:Honda)

またHondaとしては、製品の提供だけではなく、FastportのFaaSプラットフォームと組み合わせた包括的サービスの提供を通じて、より効率的かつコストパフォーマンスの高い配送業務をサポートする。バッテリーや貨物ボックスなどの保守・メンテナンス体制を整えるほか、車両の稼働状況やバッテリー残量、走行データも把握できるため、配送業務や管理業務の効率化を強く後押し。さらにソフトウェアを自動アップデート(OTA)することで、継続的な機能向上につなげるとした。

プロトタイプ機はドイツにて初公開予定

なお、Fastport eQuadは米・オハイオ州の生産拠点であるHonda Performance Manufacturing Centerでの生産が計画されており、2026年夏には本格的な量産が開始される予定。それに先立ち北米・欧州の物流・配送企業と連携した実証試験も実施しているといい、顧客ニーズに応えるモビリティサービスの実現に向けて尽力していくとする。なおこの新モビリティのプロトタイプについては、ドイツ・フランクフルトで6月25日から29日まで開催される「Eurobike」にて初公開が行われるとしている。

  • Fastport eQuadの走行イメージ

    Fastport eQuadの走行イメージ(出所:Honda)