都心オフィス空室率は横ばいも 人手不足で今後に「不安要素」

商業施設に寂しさも

 

 足元では堅調だが、今後のオフィス市況には不安要素も――。

 オフィス仲介大手の三鬼商事の調べによると、2025年4月の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は3.73%と、前月比で0.13%の下落となった。オフィスの供給過剰の目安は5%だが、これを9カ月連続で下回った。

 ただ、オフィスは埋まっていても、足元にある商業施設や飲食店には空きが目立つという状況が、渋谷区や港区で見られる。この「肌感覚」との乖離はなぜ生まれているのか。

 オフィス市場に詳しいニッセイ基礎研究所主任研究員の佐久間誠氏は「オフィス市況全体は空室率が低く、賃料も上昇し、タイトな状況。ただ、商業が寂しいという肌感覚は私にもある。なぜ違いが起きているかというと人の流れの変化」と指摘する。

 大手企業の出社率は7~8割というデータがある。コロナ以前に比べて2割出社が減っていて、その分、オフィスに付随する商業施設に来る人の数が減少している。飲食店も、会社帰りに食事をして帰るという人が減り、埋まりづらくなっている。生活様式が変わったということ。

 都心のオフィス市場では、次の焦点は2029年。28年3月末に三菱地所が手掛ける日本一の高さのビル「トーチタワー」が竣工予定であるなど、大型物件の供給が見込まれ、これをどう吸収していくかが問われる。

 今、オフィス市場では「質への逃避」、つまり新しく、機能性の高いオフィスが企業に求められていて、人材獲得のカギともなっている。逆に言えば、そうでないオフィスは選ばれない。

 また、建築コストの上昇で「中野サンプラザ」に代表されるように計画の遅れが各所で生じている。これも今後のオフィス市場の不安材料となる。