6月11日、Datadogは米ニューヨーク州・マンハッタンの「Javits Center」で年次イベント「DASH」を開催した。会場には世界各地から5000人が来場し、展示ブースに加え、各種のセッションが行われた。本稿は、初日の基調講演を紹介する。
Datadogの使命は「技術で成功を導く」
はじめに登壇した、Datadog CEO and Co-founderのOlivier Pomel氏は「上場企業のCEOとして、私の最も重要な仕事のひとつは、研究開発(R&D)への継続的な投資を確保することです。今、世界は日々再構築されています。そして、AIの登場で変化のスピードは従来以上に加速しています。これは全員にとって素晴らしいチャンスである一方で、同時に複雑性の爆発と新たなリスクの出現をもたらしています」と指摘。
そのうえで、同氏は「だからこそDatadogの使命は複雑さを制御し、リスクを取り除き、技術により顧客が成功を進めるようにすることです。そのために、われわれは皆さんと『Co-create』(ともに築く)することに全力を注いでいます」と力を込める。
そして、Pomel氏は「アプリケーションの可観測性を高め、セキュアに構築・運用し、さらには自動でアクションを実行できるようにするための、さまざまな新機能を紹介します。手を動かさずとも、システムが自律的に動く未来を目指して」と宣言した。
「AIは常に進化している」 - CTOのLe-Quoc氏
続いて、Datadog CTO and Co-founderのAlexis Le-Quoc氏が登壇。同氏は「生成AIが世界に登場してから、もうすぐ3年が経ちます。最先端の技術導入の真っ只中にいるため、長く感じられるかもしれませんがエージェントを活用したり、推論をアプリケーションに組み込んだり、大量のGPUを使ってインフラを構築したりと、日々進化を続けています」と述べた。
そして、時間が長く感じられるもう一つの理由として「非常に速い技術進化」を挙げている。現在、業界全体では「より優れた推論能力」や「汎用的な知能」の構築に注目が集まっているが、汎用モデルがどれほど優れていても業界特化型の専門モデルにはまだまだ大きな可能性があるという。
Le-Quoc氏は「例えばコーディングモデルはその好例です。日常的に使っているコーディングエージェントの基盤となっている一方で、補助的なモデルやセキュリティモデルなど、あまり注目されていない分野にも可能性があります」と話す。
DatadogのAIラボは最近、時系列データに特化した基盤モデル「Toto」を発表。オープンウェイトの時系列予測モデルで、特に可観測性データ(Observability Metrics)に最適化されている。
また、同社が公開した世界最大級の可観測性特化型ベンチマークデータセットで、350万件以上の観測データ、2807の実世界の時系列を収録したベンチマーク「Boom」(ブーム、Benchmark of Observability Metrics)も同時に公開。これらモデルとベンチマークの特徴は、可観測性に特化して設計されており、無料でHugging Face上にオープンウェイトとして公開している。