ispaceは6月6日早朝、民間月探査計画「HAKUTO-R」ミッション2において「RESILIENCE」(レジリエンス)ランダーの月着陸に挑戦。午前4時17分に着陸予定だったが、同社は「ランダーとの通信確立ができておらず、数時間後のメディア向け発表で最新状況を共有する」と説明した。現時点では、着陸の成否は不明だ。

【更新・追記】同日9時過ぎの記者会見で、ispace CEO & Founderの袴田武史氏はSuccess 9の到達は困難と判断し、ミッション2を終了すると宣言。「結論からいえば失敗。(着陸船は)ハードランディングしたのではないか」との見方を示した。テレメトリの詳細な解析と、ランダーの現状把握対応を継続する。(6月6日 9:34)

  • ispaceの月着陸船「レジリエンス」ランダーのモックアップ

同日午前2時から都内で開催された着陸応援会には、500人を超える参加者が詰めかけ、同社社員や協賛企業の関係者らなどと共に、レジリエンスランダーの挙動を見守った。

このイベントでは、ランダーから送られてくるテレメトリデータを元に、ランダーの姿勢やエンジンの噴射状態などを可視化したCGイメージを大画面で投写。降下中は順調に見えたが、逆噴射して減速状態に入った後、着陸直前のタイミングでその表示が途絶えた。

  • ランダーからのテレメトリを可視化したCGイメージ

  • 月着陸に向け、逆噴射して減速状態に入ったランダーのCGイメージ。画面右側の青いサークルがランダーのメインエンジン、青いバーが各スラスタの出力状況を表している

着陸予定時刻付近からしばらく、状況確認に追われるミッション・コントロール・センター(MCC、管制室)のメンバーの様子が映し出されたが、その後はランダーの組み立て映像のリピートに。20分ほど経過し、前出の「数時間後のメディア向け発表で最新状況を知らせる」とのアナウンスが流れると、会場からは戸惑い落胆したような声があちこちから挙がった。同社はこのあと同日午前9時から記者会見を開催予定。本誌も追って詳細レポートをお届けする。

  • 状況確認に追われるMCCメンバーの様子。歓喜する様子はなく、淡々としているように見えた

  • 参加者が退場した後、現地に集まった報道陣に対応するispaceの社員に、多数のカメラとマイクが向けられた

レジリエンスは日本時間1月15日の打ち上げ後、地球周回フェーズを経て同2月15日に、月表面から高度約8,400kmの地点を通過し、民間企業による商業用ランダーとして史上初の「月フライバイ」に成功。深宇宙の旅に出たレジリエンスは、低エネルギー遷移軌道上を約2カ月間かけ、地球から最も離れた約110万kmという距離にまで到達した後で、月周回軌道投入を完了させた。

5月28日、東京・日本橋にあるMCCで同社のエンジニアが、運用計画にそって軌道制御マヌーバを開始。今回のミッションで最長となる、約10分間の主推進系の燃焼を実施し、円軌道への投入を完了した。その後、同軌道上での追加の軌道修正の必要がないことを確認し、着陸予定時刻を当初予定より7分早い、日本時間6月6日午前4時17分に変更していた。

  • 6月4日の時点ではマイルストーンSuccess 8まで完了

前回のミッション1同様、月面着陸完了はSuccess 9にあたり、成功すれば日本初、アジア初の民間月面着陸を成し遂げることになる。レジリエンスの安定状態がその後、確立されたことが確認されれば、Success 10もクリアとなる。

レジリエンスランダーの着陸予定地点は、地球から見える表側、月の北極付近にある「氷の海」の中央付近(北緯60.5度、西経4.6度)。同社は、上記の着陸ポイントを選んだ理由について「月面探査の科学的な側面と運用上の利点を兼ね備えた場所」と表現している。

  • 都内で開催された、Mission 2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON“ 着陸応援会の様子

  • 着陸応援会にはJAXAの山川宏理事長も駆けつけ、スペシャルゲストとしてispaceのこれまでの功績を称えた