グローバル化が遅れていた第一三共が新たな人事制度を導入

「エンハーツ」で環境が変わる

 第一三共がグローバルで共通した新しい人事制度を導入する。国内では「ジョブ型」にシフトし、報酬制度なども刷新。職務ごとにグローバルで共通化した等級制を採用し、報酬制度も等級に紐付いた体系にする。

「グローバル共通の人事制度導入が待ったなしの状態になっていた」と第一三共社長兼CEOの奥澤宏幸氏は語る。業績が好調な同社だが、他社に比べてグローバル化は進んでいなかった。20年度時点の海外売上高比率を見ても、武田薬品工業が約82%、アステラス製薬が約77%、大日本住友製薬(現住友ファーマ)が約63%、エーザイが約59%と先を行き、第一三共は40%台に過ぎなかった。

               奥澤宏幸・第一三共社長兼CEO

 環境を変えたのが抗がん剤「エンハーツ」だ。販売地域と適応の拡大で同社の業績を牽引。24年度の売上高約1兆8000億円のうち、海外売上高は約1兆3000億円と約7割を占めるほどになった。約230人の社員が海外に駐在しており、この1月には米ボストンに同社初となる研究開発拠点も開設。

 しかし、奥澤氏は「世界と同じ土俵で戦い、今後も革新的な技術を生み出し続けていくためには、先端技術に精通する世界中の優秀な人材の獲得が欠かせない」(同)と語る。

 第一三共では、これまでなかったキャリア人材が入社している。例えば、欧米のメガファーマや米国食品医薬品局(FDA)などからの出身者だ。足元のトランプ関税で武田などは米国投資を厚くしているが、奥澤氏は「新薬開発の拠点は日本に置く」と強調。他社とは一線を画す戦略をとる中、世界に通用する人材を惹きつけることができるかどうか。新たな人事制度がそのカギを握る。

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