KDDIスマートドローンは5月29日、社会課題の解決に貢献するドローンの技術や事例を共有するイベント「KSD CONNECT 2025」を初開催した。本稿では同イベントから、KDDI代表取締役社長 CEO 松田浩路氏が登壇したオープニングセッションについてレポートする。

  • KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

    KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

KDDIが進めるドローン活用のあゆみ

松田氏はまず、KDDIのドローン活用の歴史を振り返った。同社が本格的なドローン活用を開始したのは2016年にさかのぼる。センサーやカメラを搭載し、通信可能な機体が飛行する様子から「空飛ぶスマートフォン」というコンセプトの下で「スマートドローンプロジェクト」が始まった。

2017年には日本全国をドローンポートでカバーし、さまざまな社会課題解決にドローンを活用する「ドローンインフラ構想」を発表。同年にはモバイル通信と3次元地図を活用したドローンの完全自立飛行を実現した。

2022年にKDDIのドローン事業をKDDIスマートドローンとして分社化すると、2023年には日本航空(JAL)からの出資を受け入れた。さらに2024年には、AIドローンの開発を手掛ける米Skydioへ出資。2025年にドローン航路を浜松市と秩父エリアで開通した。

  • KDDIのドローン活用の歴史

    KDDIのドローン活用の歴史

日本は人口減少をはじめとした社会課題の先進国とされるが、こうした課題に対してドローンの活用が期待されている。特にインフラの点検作業や建設・プラント現場の監視作業、災害への対応、物流などの分野でユースケースが広がりつつある。

ここで、松田氏は「ドローンの活用は持続可能であることが重要」と強調した。ドローンと先端技術を活用して社会課題を解決するために、事業の継続性が求められる。価値に見合った対価で利益を生み、これを地域社会やパートナーに還元。さらに次世代への投資を強化することでさらなる事業成長へとつなげる。この還元と成長のサイクルを構築することで、持続可能なドローン事業が期待できる。

ドローンがどこにでも10分で駆けつける安心安全な社会に向けて

KDDIは2024年10月、令和6年能登半島地震により大きな被害を受けた石川県と、創造的復興の実現に向けた包括連携協定を締結した。この協定では、平時と有事を区別しない「フェーズフリー」なデジタル技術の活用が進められる。その一環として、ローソンを舞台に「地域防災コンビニ」の実証実験を実施した。

同社がこれから目指すのは、通信とAIドローンを組み合わせて実現する安心安全な社会だ。平時・有事を問わずにドローンを活用し、見回りや防犯、事故対応の迅速化と効率化を図る。

松田氏は石川県での防災コンビニの実証の際、「なるべく早い段階で全国1000カ所のドローンポート実装を目指す」と語っていた。これは、ドローンが緊急時に10分以内に現場に到着できる範囲を試算すると、およそ1000カ所のポートが必要になるのだという。

AIドローンやその離発着の場となるドローンポート、通信を支えるStarlinkアンテナなどを、コンビニや学校、市役所などに配備を進め、構想の実現を目指す。まずは2025年下期に能登地域で実装を開始し、能登をロールモデルとして順次全国へ拡大するとのことだ。

|I@003.jpg,KDDIは全国へのドローン配備を進める,A@KDDIは全国へのドローン配備を進める|

ドローンのデータ処理に対応するKDDIのAIデータセンター構想

AIドローンは高性能化しており、カメラやセンサーで膨大なデータを取得できる。仮に1000台のドローンが稼働したことを想定すると、取得する空間センシング情報は1カ月間で200~300テラバイトにも上るそうだ。これをAIで解析することで、老朽化したインフラの危険より、土砂崩れなどの災害予知、不審者検知、見守りや捜索に役立てられる。

そこでKDDIは、全国にAI計算基盤を分散して配置するデータセンター構想を打ち立てている。全国に計算基盤を配備することで、レスポンスの向上やトラフィックの削減を実現する。さらに各現場のエッジでのデータ処理を可能とすることで、AIによる推論需要の拡大に対応する。エッジAIデータセンターには、コンビニや基地局の活用も検討するとのことだ。

  • KDDIのAIデータセンター構想

    KDDIのAIデータセンター構想

松田氏はAIドローンを全国展開するためのキードライバーとして、あらゆる環境で動作可能な常設型ドローン、日本全国で遠隔運航を可能とする通信、遠隔運航を実現するオペレーション体制、の3つを挙げた。