パナソニックグループでネットワーク機器およびソリューションの提供を担うパナソニックEWネットワークスは、スマートビルディングの運用効率化に貢献するべく、独立した設備システムの統合および一元管理を行うための新たなネットワークサービス「SGNIS」を5月20日に開始した。
近年のトレンドであるスマートビルディングでは、多機能化・高付加価値化が進行する一方で、運用面ではさまざまな課題が表出している。さまざまなソリューションの運用や保守を一元化し、作業の効率化に貢献することを目指すSGNIS。その詳細について、同サービスの推進責任者である同社 ネットワークソリューション部の飯島良基部長に話を伺った。
さまざまな管理システムの統合を可能にする「SGNIS」
昨今、社会は急速な変化を続けている。中でも2030年に向けた喫緊の課題として、カーボンニュートラル実現への要求、そして労働人口の減少による省人化ニーズが高まっている。そうした背景から近年ではオフィスビルを中心に、データや最新技術の活用などによってエネルギーや管理コストなどの効率化を目指す“スマートビルディング化”が進められており、ひいてはビル稼働率や賃料の向上にも貢献すると期待される。
こうしたスマート化の流れは新築ビル・既存ビル問わず押し寄せており、入退室や照明、空調の管理システムなど、さまざまなスマート制御システムの導入が広がっている。しかしこれまでは、各システムが独立した形で構築されるのが一般的で、それぞれに対しメンテナンスが必要とされることから、運用効率が低下していたとのこと。また、制御システムでは今やクラウド接続が不可欠となっているため、独立して運用される各システムすべてに対して個々にセキュリティ対策が求められ、コストの増大や人員の不足が顕在化しつつあるとする。
今回パナソニックEWネットワークスが発表したSGNISは、そうした課題を解決するために開発された、“設備統合ネットワーク”構築および“ビルSOCサービス”提供からなる複合型スマートビルディングサービス。1989年の創業以来、長年にわたって展開してきたネットワーク事業のノウハウを活用し、次世代スマートビル構築の基盤を提供するとしている。
同サービスでは、ビル内外で用いられるOTソリューションなど各種システムのネットワークを1つに集約。収集された多様なデータを一元管理し統合された形で管理することで、その運用にかかる労働コストを効率化するという。またクラウドとの接続も集約化されるため、サイバーセキュリティ面でのリスクも低減されるとした。
SGNISの推進責任者を務めるパナソニックEWネットワークスの飯島良基部長は、SGNISの強みとして、新設備システムの追加に柔軟に対応可能な点を挙げ、設備ベンダーとの調整を効率化し、顧客におけるソリューションの検討に要する時間を短縮できるとする。また、従来のサイロ化したシステム管理ではローカルでのデータ連携ができなかったのに対し、SGNISではデータを統合管理できるため、各データを連携させた活用も可能になる。飯島氏は、空間内の混雑度と空調データを連動させるなど、さまざまな活用の基盤として貢献するとしている。
“パナソニック品質”の常時監視サービスも提供
そして同社は、ネットワークのみならず、国内外200を超えるパナソニックグループの自社工場で実績を重ねる“パナソニック品質”のセキュリティ監視サービスも提供。国内外に監視拠点を展開する同社グループの強みを活かし、24時間・365日体制で常時監視を実施することで、一元化システムのセキュリティを担保しトラブル時の早期対応を可能にするとした。
飯島氏によると、今般発表されたSGNISは、三菱地所が推進する丸の内周辺エリアの再構築プロジェクトの中で、スマートビル基盤となるビル共用ネットワーク(ENDI)として導入された実績があるもので、すでに大規模な導入事例としてビル単位だけでなく複数ビルでの共用ネットワークとしても活用されているという。
またSGNISの対象市場はオフィスビルに限ったものではなく、工場の施設においてもスマート化に貢献できるとのこと。ネットワークを軸とした設備システムに加え、パナソニックとしての知見を活かしたSOC(Security Operation Center)サービスまでをワンストップで提供することで、さまざまな価値創出につなげていくとする。
なお飯島氏は今後について、SGNIS単体での提供に加え、実際の運用を行うビルOSサービスとの連携も検討しているとのこと。また、パナソニックEWネットワークスとして生産を行うスイッチングハブの高機能化なども並行して進めることで、スマートビルディングの実現にさまざまな角度から貢献していきたいとしている。