東日本電信電話(以下、NTT東日本)と新潟大学は5月27日、医師不足および医師の偏在といった課題の解決に向け、新潟大学および同大学医歯学総合病院で、2025年5月26日から2026年3月31日の間、NTT版LLM「tsuzumi」を活用した医療文書作成支援AIモデルによる業務効率化および医療サービスの質向上を目的とした実証事業を実施することを発表した。

取り組みの背景と目的

現在、日本の医療業界は医師不足と地域間での医師の偏在という課題に直面している。特に地方や過疎地域では医師不足が顕著で、患者への十分な医療サービスが提供できない状況が続いているという。

これにより、都市部に集中する医師の負担が増加し、医療サービスの質の低下や医師の過重労働が問題となっている。厚生労働省の「都道府県別の医師偏在指標」によると、新潟県は全国で3番目に医師数が不足している地域であり、地域医療の強化と医師の負担軽減が喫緊の課題とされる。

そうした中、医師が日常業務の中で事務作業に費やす時間は多く、特に診断書、診療記録、処方箋、主治医意見書などの医療文書の作成が負担となり、医師の労働時間を圧迫している。2024年には医師の働き方改革の新制度が施行され、勤務時間の上限規制や休暇の取得促進、勤務環境の改善が強化された。

この改革は医師の長時間労働を抑制し働きやすい環境を整備するための重要な制度とされるが、その実現のためには医師の業務効率化が不可欠となる。

今回の実証事業ではこうした背景を受けて、NTTの研究成果をもとに開発された、CPUで軽量に動作しながら日本語処理性能を発揮するLLM「tsuzumi」を活用。医師が現場で用いるような専門性の高い医療用語に対しても適切な文脈で出力できる医療文書作成支援AIモデルの構築を目指す。

実証の概要

実証では、tsuzumiを活用した医療文書作成支援AIモデルの構築と効果測定を実施する。具体的には、診察現場での各種データをもとにtsuzumiを通じて必要な情報を抽出し、各種医療文書のドラフトとして出力する予定。

なお、データの取得および活用に際しては、事前に患者からインフォームド・コンセントを取得する。