
トランプ米政権の関税政策を巡る対米交渉で、通貨問題を担当する加藤勝信財務相の手腕が注目されている。
焦点である通貨問題に関し、ベッセント米財務長官は4月23日、「特定の通貨目標はない」と明言。トランプ米大統領がドル高是正を強硬に要求するリスクは幾分和らいだものの、トランプ氏の関税政策は二転三転しており、市場の混乱への警戒は当面続くとみられる。加藤氏は持前の政策通を発揮し、主導力を示すことができるか。
加藤氏は米国時間24日、米ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席後、記者団に対し「会議では私から米国の関税措置と一部の国の対抗措置が実態経済に悪影響を及ぼしていると指摘した」と言及。G20閉幕後のベッセント氏との会談についても「市場の過度な変動や無秩序な動きは経済金融の安定に対し悪影響を与える。これは米国との間でも共有している」と述べ、ベッセント氏との信頼関係構築に自信を示した。
米国の関税措置を受けた対米交渉については、先に訪米した赤沢亮正経済再生担当相がトランプ氏と会談し、加藤氏より目立った形だが、通貨問題はベッセント――加藤ラインの議論に区別されたことで加藤氏の出番が回ってきた恰好だ。
親日家で日米財界にパイプを持つベッセント氏に対し、財務省など政府は今回の日米財務相会合を踏まえ、複数の人脈を活用してアプローチするなど地ならしもぬかりない。
財務省幹部は「通貨問題は最難関だ。これを軟着陸させたら大臣の大きな実績になる」と期待を寄せている。