富士通は5月7日、勘定系ソリューション「Fujitsu Core Banking xBank(クロスバンク)」を採用したソニー銀行の新勘定系システム(次世代デジタルバンキングシステム)が稼働を開始したことを発表した。同システムはソニー銀行のさまざまな商品・サービス、取引機能をマイクロサービス化して実装しており、新商品・サービスの迅速な提供や既存機能の柔軟な改良などビジネスアジリティの強化を実現するという。

  • 次世代デジタルバンキングシステムの全体像

    次世代デジタルバンキングシステムの全体像

ソリューション導入の背景

近年の金融業界ではデジタル化の加速による顧客ニーズの多様化と競争激化が顕著となっている。特にデジタル型の金融サービスでは利便性やスピード感が顧客満足度を左右し、競争優位性を確保するためには経営戦略とIT戦略の一体化が重要とされる。そうした中、銀行システムの中核を担う勘定系システムは、経営戦略やビジネス要件の多様な変化に柔軟かつ俊敏に対応可能なシステムアーキテクチャであることが求められる。

ソニー銀行はビジネスアジリティの最大化を目指し、開発生産性の向上や業務効率化の推進、データ基盤の整備を実現するため、勘定系システムを従来のシステムから完全に刷新した。これにより、アライアンス推進を柔軟にし、顧客利便性の向上や、より安価かつタイムリーな商品・サービスの提供を可能としている。今回の移行により、先行してクラウド化を進めてきた周辺システムと合わせ勘定系を含めたほぼすべてのシステムのクラウド化を実現したとのことだ。

次世代デジタルバンキングシステムの特長

ソニー銀行の次世代デジタルバンキングシステムは、「Fujitsu Core Banking xBank」をはじめとする富士通の技術と、AWS(Amazon Web Services)の240を超えるサービス群を活用してAWS上に構築した、クラウドネイティブなシステム。

同システムはクラウド上で動くことを前提に設計しており、スケーラビリティ、マイクロサービス、BFF(Backend for Frontend)などクラウド技術の特性を活用している。これにより常にビジネス環境の変化に合わせたシステムリソースを活用でき、ビジネスアジリティの向上に寄与するという。

マイクロサービスは通常、非同期処理を基本とする一方で、勘定系システムでは連続性を必要とするサービスが多いことからACID特性(Atomicity:原子性、Consistency:一貫性、Isolation:独立性、Durability:持続性の頭文字を取ったもの)の適用が不可欠なため、実装方法に課題があった。

そこで次世代デジタルバンキングシステムでは、例えば普通預金から定期預金への振替における資金移動のようにデータの一貫性保証が必要な処理を見極め、必要な箇所で同期性を担保する独自の実装方法を適用している。

これにより、勘定系システムにおけるマイクロサービスアーキテクチャ適用のデメリットを克服しながら、勘定系業務アプリケーションのプログラム資産規模を従来の40%に削減。プログラム資産規模の縮小により保守や追加開発の効率化が期待できる。

また、ビジネス戦略や成長に合わせた柔軟な拡張性を実現するため、BFFや外部API(Application Programming Interface)を活用した構成を採用。これにより、フロントチャネルの追加や外部接続先の追加を容易にしている。