北極で冬季に観測された海氷の年間最大面積が衛星観測史上最小の1379万平方キロになった、と国立極地研究所(極地研)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が18日発表した。北極海周辺の気温が平年より高いことが要因とみられ、今後の気象や海洋環境への影響が懸念されるという。
極地研とJAXAは現在、「北極域研究加速プロジェクト(ArCSII)」の一環として、水循環変動観測衛星「しずく」などのマイクロ波放射計の観測データから北極の海氷面積を観測している。海氷面積は毎年10月から翌年3月にかけて拡大し、4~9月に縮小する季節変動を繰り返している。
極地研などによると、3月20日に観測した1379万平方キロは、これまで最小だった2017年3月5日の1392万平方キロを13万平方キロ下回り、1979年から続けている衛星観測史上最小を記録した。また昨年12月から今年2月にかけての月平均海氷面積もいずれの月でも観測史上最小だったという。
また、3月20日の海氷縁を2010年代平均と比較すると、グリーンランド東側以外の多くの海域で海氷域が小さい傾向があった。特に、海氷分布の南限に近いオホーツク海では今年2月の海氷の平均面積が過去2番目の小ささだったことが判明した。
こうした観測結果について極地研とJAXAは、昨年12月から今年2月にかけて、北極海周辺気温が平年より高く、海氷域が広がりにくい状態が続いたことが冬季の海氷面積の記録的減少につながった一因とみている。
南極は巨大な氷床が形づくっているが、北極点は薄く変化しやすい海氷上にある。いくつかの研究データによると、北極は地球平均の3倍以上の速さで温暖化が進んでいるとされる。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、世界が温室効果ガスの削減対策をしないシナリオでは最悪2050年に北極海の海氷がなくなると予測している。
また多くの気象学の専門家は、近年北半球で頻発している熱波や豪雨、干ばつといった「極端気象」も北極の温暖化がもたらす偏西風の蛇行が大きく影響していると指摘している。
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