
全国的な人口減少・少子高齢化に伴って農村集落の経済活動や生活サービスを維持する難しさが増す中、都市と地方に生活拠点を持つ「二地域居住」を推進することで、外部人材を農村集落へ安定的に参入させる、とのアイデアが国土交通省内で浮上している。
農林水産省出身の天野正治大臣官房審議官(国土政策局担当)が「たたき台」をまとめた。一次産業に関わるスタートアップ経営者ら向けの講演などで紹介し、省内外でじわりと注目される。
食料の安定供給を担うだけでなく、土砂崩れや洪水の防止、生物多様性の確保など、多面的な機能を有しているのが農村集落だ。ただ、従来通りの農業では十分な収益を確保するのが難しく、暮らしに必要な生活サービスが衰退する一方、外部から新規参入するハードルが高いという課題もある。
天野氏は「農村集落に人を入れることで、お金と人の循環を増やして、地域をエコシステムとして創生できないか」と説く。まずは、耕作放棄地の開墾といった役割を果たせば格安で滞在できるといった条件で人を呼び込む。新たな人材の参画により、特産品の生産拡大やビジネスとしての付加価値創出を目指す。
また、余暇の時間には住民送迎や空き店舗の運営などを手伝えば、二地域居住者は稼ぎと信頼を同時に得られ、地域の生活サービス維持にも貢献できるという流れだ。
さらに、二地域居住者と農村集落の橋渡しを担う支援法人に対し、大企業からの環境関連投資や企業版ふるさと納税といったスモールファイナンスを引き合わせることまでセットで構想。「流域治水」の概念を援用する形で、天野氏は「川上の農村集落が元気になれば、川下にある企業も恩恵を受けるはず」と分析し、広がりに期待している。