【農林水産省】コメ輸出量8倍に拡大へ コスト低減には課題山積

2024年の農林水産物・食品の輸出額は1兆5073億円(前年比3.7%増)と、12年連続のプラスとなった。日本食ブームが続き、円安も追い風となっている。それでも「25年に2兆円、30年に5兆円」の目標には遠く、政府は牛肉やホタテなど、重点29品目を中心として輸出拡大に取り組んでいる。

 コメもその一つだ。香港、アメリカ、シンガポール、台湾を中心に輸出が増え、パックご飯なども含めた24年の輸出量は4.6万トン(原料米換算)だった。政府はこのほど、30年までに35.3万トンと、8倍近くに増やす目標を定めた。

 おにぎり店や日本食レストランの海外進出が目立ち、手軽に食べられるパックご飯も海外で人気を集めつつある。さらなる需要開拓を図るが、強気の目標設定に問題はないのか。

 3月14日の閣議後の記者会見で、江藤拓農水相は「率直に申し上げて(輸出拡大は)簡単ではない」と認めた。江藤氏によると、海外で取引されるコメの総量は約5千万トンだが、このうち日本産米などの短粒種は1千万トンという。「いかに日本のコメがおいしいとはいえ、そこに価格競争力も加わらなければ実現は難しい」(江藤氏)。

 農林水産省によると、生産コストで見た輸出米の採算ラインは60キログラムあたり約9500円だが、現在の国内農家のコメの生産コストは平均で約1万6千円に上る。生産性を高めるため、農地の集積や大区画化、スマート農業技術の普及といった課題をクリアする必要がある。

 輸出向けの生産を拡大することで、国内の需給が逼迫した際には国内消費に充てるといった対応ができるようにする狙いもある。主食用米の国内需要が毎年8万~10万トンずつ減少する中、政府は輸出用にも補助金を出して作付け転換を促してきた。

 ただ、米価の高騰が続く現状では輸出用米の生産を渋る農家も多いとされる。後手に回る対応が続く農政だが、これ以上の停滞は許されない。

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