富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)は、国内初の紙さばきロボットシステム「Revoria Kamisa PH12」を7月1日に発売する。価格はオープンプライス。印刷会社の印刷製造工程で不可欠な紙さばき作業を自動化し、現場のスマートファクトリー化に寄与するという。

  • Revoria Kamisa PH12
    出所:富士フイルムビジネスイノベーション

書籍などの印刷製造工程では、印刷後の用紙断裁に入る前の準備として「紙さばき」という作業工程が必要だ。これは、「刷本」(すりほん)と呼ばれる製本前の印刷物の束を複数回に分けて持ち上げ、用紙の両端をひねりながら紙の間に空気を送り込む“風入れ”を行い、紙揃え機へ運んで紙揃えを行う作業で、現在は人手を使って行われている。

この作業は、静電気や印刷表面のインク・トナーが原因で用紙同士が貼り付かないよう、人為的に用紙間に風入れを行うことで断裁工程における品質不良を防ぎ、印刷物の品質保持と効率的な生産のために行われるもの。オペレーターによる熟練の技術が求められるうえ、刷本の束は重いため身体的な負荷が高い作業でもあるという。

富士フイルムBIが発売する「Revoria Kamisa PH12」は、こうした紙さばきに必要な複雑な動きを自律制御する「ロボットアーム12」と、紙種やサイズに応じてつかむ⼒を調整する「ロボットハンドPH」、「ロボットコントローラ1000」で構成するロボットシステム。

昇降機に載った刷本をロボットハンドでつかみ、さばきながら直接紙揃え機へ運ぶことで、断裁前の紙揃えまでの一連の用紙ハンドリング作業を自動化する。対応する用紙サイズはB2判から菊全判(636×939mm)まで。

  • Revoria Kamisa PH12と周辺機器を組み合わせ、紙さばき工程を自動化したイメージ
    出所:富士フイルムビジネスイノベーション

システムには、ロボットハンドを備えた6軸垂直多関節型のロボットアームを2本装備。ロボットコントローラでアームとハンドの動作を制御でき、双腕が協調動作することで、たわむ大判用紙もしっかりつかんでしなやかに持ち上げ、次工程に渡せるとする。プログラミングによって、微細な角度の曲げ伸ばしや回転、ひねりといった自在な動きも可能にした。

ロボットハンドに備えた3Dセンサーで用紙表面の凹凸や波形を読み取り、確実に用紙をつかむ。停止位置や加減速、トルクを高精度に制御するサーボモーターでつかむ力をコントロールし、多様な紙種・サイズに適した力を生み出し、「熟練した人の手と同じように巧みに力加減を調整しながらハンドリングできる」としている。

ハンドの先には除電器(イオナイザー)を搭載しており、用紙をひねりながらイオナイザーの8つのエアノズルからのイオンを含んだ風を用紙間に放出することで、静電気を除去する。

なお、昇降機や紙揃え機などの周辺機器と組み合わせるには、システムインテグレーションを別途行う必要があり、システムインテグレーションに必要な搬入料金や設置調整料金、移動料金も別途かかる。また、アームとハンド、コントローラの接続には、別途ケーブルセットを購入する必要がある。

富士フイルムBIでは同システムの提供を通じて、生産ラインの省人化と属人的なスキル依存解消による印刷品質の安定化を追求。印刷会社の生産性向上に寄与するとしている。今後、欧米やアジアパシフィック地域での発売も予定する。