将来宇宙輸送システム(ISC)は、2025年1月にLetaraとの間で包括連携協定を締結し、ハイブリッドエンジンを用いたロケットシステムの共同開発を開始することを発表した。

  • ISCの畑田康二郎CEOとLetaraのケンプス・ランドンCo-CEO

    ISCの畑田康二郎CEO(左)とLetaraのケンプス・ランドンCo-CEO(右)(出所:ISC)

2022年5月に創業したISCは、“2028年を目標に、人工衛星の軌道投入を目指す”というチャレンジングな目標の実現を目指し、国内外のパートナー企業との協業を進め、アジャイル型の開発を進めている。その中でも特に、ロケット開発において重要性および技術的難易度が高いエンジンの開発にあたっては、幅広い方法を検討しているという。

ロケットエンジンには、液体燃料エンジンと固体燃料エンジン、そして両方を組み合わせるハイブリッドエンジンの3種類が主に用いられる。これまでISCでは、早期の離着陸実現に向け、液体燃料を中心として開発を進めてきたととのこと。自社での開発を進めるのはもちろんのこと、2024年4月にはロケットエンジン開発企業である米・Ursa Major Technologiesとのパートナーシップを締結した。また昨夏には荏原製作所とも包括連携協定を締結し、同社が開発する電動ポンプを活用したロケットエンジンの開発を目指すことを発表している。

そして今般ISCは、北海道を拠点とする宇宙スタートアップのLetaraとの包括連携協定の締結を決定。早期に飛行実証が見込まれる選択肢を速やかに追加することで開発の確度を高めるため、ハイブリッドエンジンを用いたロケットシステムの検討を開始する。

Letaraは、北海道大学大学院 工学研究院 機械宇宙工学部門 宇宙システム工学分野の永田晴紀研究室で開発されたハイブリッドロケット技術の社会実装を目指して2020年に設立され、小型ハイブリッドエンジンを用いた人工衛星用推進システムの開発を進めてきたとのこと。そして今回の包括連携提携を通じて、ロケットシステム用エンジンの開発にも本格的に着手するとしている。

同社によると、ハイブリッドエンジンを用いた推進システムは、液体燃料エンジンに比べて構造がシンプルで取り扱いが容易なため、安全性の高さや優れたコスト効率に加え、短期間での開発・製造が可能という特徴も有するという。そうした特徴はISCが目指す“持続可能で柔軟な運用が可能なロケットシステム”との親和性が高く、開発リスクを最小限に抑えながら迅速に実機レベルのシステム構築を進めることを可能にするとのこと。また酸化剤供給タンク・ターボポンプ・配管・バルブなどが液体ロケットエンジンと共通しており、これまで液体燃料エンジンのために検討してきたISC成果を最大限活用しつつ、技術成熟度の高い固体燃料エンジン技術を活用して早期の実証を目指すことが考えられるとした。

ISCの畑田康二郎CEOは今回の発表に際し、「Letaraは数あるスタートアップの中でも並外れた情熱に溢れる企業だと感じている。これから両社の連携により生まれる新たな可能性にワクワクしている」とコメント。一方でLetara創業者のケンプス・ランドンCo-CEOは「2028年の初飛行に向けた実用化を通じて、日本発の競争力あるロケットの実現に貢献する」とし、システム設計・検討や燃焼試験を実施していくとしている。